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10.思わぬ事態

2日後フローラの店から荷物が届いた。箱を開ける度にメリーが興奮している。

「雑誌に載っていたのとそっくり、エレン様どれも最新流行のドレスですよ」

私が開けた箱には下着と色っぽいネグリジェまで入っていて、慌ててメリーに見つかる前に隠す。

とても素直には喜べない。共犯者と言われたから口止め料なのだろうか。でも、私が騒いだところで影響はない。アンドリュー様の考えていることはどうせ私には分からない、とりあえずドレスを着て表門を使えば満足してもらえるのだろう。



伯爵の旅行予定の3週間が過ぎる前に事態は動いた。

伯爵の護衛についていた従僕が、ボロボロになって屋敷にたどり着いたのだ。


隣国の大きな川を渡る時、頑丈なレンガ造りの橋が有料だったので伯爵は遠回りして無料の木の橋を渡らせた。渡る途中で大雨で増水した川の水が橋を越え、伯爵と愛人は馬車ごと流されていった。

なんとか岸に泳ぎ着いた従僕たちは何日も下流を探したが、伯爵も馬車も見つからずアンドリューに報告する為に戻ってきたのだった。


「風呂と食事の用意を、ゆっくり休ませてやれ」

アンドリューは使用人に指示すると、レイモンドと私を呼んで執務室に向かった。

「なんというか、らしい最後ですかね」

「楽観はできないな、生きている可能性も考えて処理にあたろう」

二人は冷静だった。

もうすぐ伯爵位はアンドリューに戻り、私は元伯爵の未亡人って、ここにいる権利がないのでは。

「えーと、私は家に帰った方がいいですか?」

「だめだ!…あ、大きな声を出してすまない。これから余計忙しくなるからエレンには色々頼みたいことがある。それに当面俺がエレンの後見人ということになる」

「後見人ですか」

まだ伯爵家に籍がある私は、相変わらず面倒な存在のようだ。


アンドリューはすぐに愛人宅に行き、ジェームズの雇ったゴロツキを追い出し、書類を確保し、伯爵邸から持ち出された高価な食器や絵画などと一緒に使用人も連れ戻した。新しく警備の者も雇われた。

伯爵邸は急に賑やかになり、調度も整えられ、食事は豪華になった。執事補佐のパトリックは向こうの情報を掴む役をしていたらしい。

家政婦のミセス・リンデはメイドが辞めないよう、宥めていてくれたという。彼女が戻れば私はお役ご免と思っていたが、ミセス・リンデは私を女主人として扱い指示をあおいでくる。

アンドリューは私の事をどう説明しているの??


夕食後アンドリューの部屋に呼ばれたので、部屋のドアを開けたまま入室した。

「エレン、俺の注意を覚えていて偉いけど大事な話だからドアを閉めるよ」

話が違いませんか?

「訴えは認められ、俺はバーフォード伯爵となった」

「おめでとうございます、本当によかったです」

「ありがとう、それで君の婚姻書類も見つかったが」

「はい」

「書類は君と君の父上の署名だけあって、役所には提出されてなかった」

「…どういう事ですか?」

「相続等が面倒になるので届けを出さなかったのだろう。君は書類上はジェームズと結婚していない、テッドベル家の令嬢のままという事になる。あんな男と縁が繋がってなくて良かったな」


えと…騙されて後妻に入ったけれど元伯爵のジェームズは元々婚姻する気はなくて、一夜の相手だけさせるつもりだったのか。良かった…のかも知れないがバーフォード伯爵邸に来てから自分の立場がくるくる変わりすぎて、思考が追いつかない。それではここにいる権利もないのに、居座っていたことになる。

「エレンには感謝している、なるべく希望を叶えたいと思うから今後どうしたいか教えてくれ」

「…ひと晩考えさせてください」

部屋まで戻るとベッドに倒れ込んだ、疲れた…。

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