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1.残念な結婚

どうしても足りない…秋の終わりの納税期、我がテッドベル子爵家は家の歴史の中で最大のピンチに陥っていた。


夏の日照り続きで小麦が今までにない凶作となった。暮らしに困る領民をみかねた父は今年の税をいつもの7割に減らした。しかし領主が王宮に収める領地税の額は変わらないので、減らした分は我が家の負担となる。

いつもは金貸しから借りて何とかしのいできたのだが、今回に限ってあちこちから断られてしまった。親戚も同じように不作の被害を受けているので頼れない。


仕方なく家族総出で換金できそうな物を探している。

「書斎のフィメーラの絵は売れるだろう」

「あれは2年前の洪水の時に売って橋の補修に当てたわ」

「お祖母様のエメラルドの首飾りはどこかしら」

「お母様、5年前の冷害の年に売って炊き出しに使いました」

こんなことを繰り返して来たので、子爵家とはいえ金目の物は残っていない。

「あと少しだというのに」父が悔しそうに呟いた。


その呟きが聞こえたように、バーフォード伯爵家の使いがやってきた。持参金はいらない、支度金を渡すから後妻に入れという、求婚の手紙とは思えない、そっけない内容だった。


「エレン、貴方を犠牲にできないわ」

「お母様もうこれしかないのです。妾ではなく後妻というなら、酷いことはされないでしょう」

「お姉さまじゃなくて、私が…」

「泣かないでリディ、貴方は幸せな結婚してほしいの。負担をかけるけど、いい人が養子に入ってくれますように」

「伯爵は愛人に贅沢三昧させて、他の払いはすごくケチだという噂だぞ」


社交に疎い我が家、父は情報通の商人からバーフォード伯爵の噂を聞き出したらしい。伯爵は父より4つ上、先妻は10年前に死去、22歳の未婚の息子が一人、愛人が一人、後はそれくらいの事しか分からない。

だいたい我が家は今までバーフォード伯爵家と関わった事がない。後妻とはいえ田舎の貧乏子爵の娘の私に話が来ることが変だ。家族には言えないが、何か裏があると思った方がいいだろう。


私もまだ17歳、もちろん結婚に夢はあったが、税が払えず領地没収となれば、子爵家だけでなく領民が路頭に迷う。それだけは絶対に防がないといけない。

違う嫁ぎ先を探すにもとにかく時間が足りないのだから。

愛人がいて形だけ貴族の妻がほしいなら、放置しておいてくれるかもしれない。都合のいい理由を想像して、望みをかける。

一人で行くつもりだったが家族とメイドのメリーに大反対され、メリーが付き添ってくれる事になり、だいぶ気持ちが楽になった。メリーありがとう。


結婚式も披露宴もなく、使者が持って来た書類にサインだけしてガタガタの馬車に何日も揺られ王都の伯爵家のタウンハウスに連れて来られた。後妻の扱いって雑なのね。

伯爵様と顔を合わすと使用人への挨拶もそこそこに、腕を掴んで2階の寝室に連れ込まれる。放置希望は叶わないようだ。ドアが閉まる前に見えた半泣きのメリーの顔が辛い。大丈夫メリー、ほら『犬に噛まれたと思って』ということわざがあるじゃない。夫を犬に例えないといけないのは、かなり残念ながら気がするけれど。


初投稿、これから色々勉強していきます。

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