公爵令嬢は愛する人のために命を断った~すまないと彼は謝った~
思い付きで書いたため、少々ご都合主義のところがあるかもしれません。
ご都合主義が苦手な方はプラウザバックをどうぞ。
その日三大公爵家のひとつであるエルアジーナ公爵家の令嬢
アルメリアは、部屋のなかで自害しようとしていた。
脳裏によみがえるのはアルメリアの愛してやまない、いとおしい人。
彼は、彼女に言った。
「僕のためを思うのなら、……どうか死んでほしい。」
と。最初はショックだった。内々に決まっていたアルメリアと
婚約を結びたくないと。つまりは結婚したくないと拒絶されたのかと思った。
しかし……。
「僕はここに居てはいけない、君のお陰で生き長らえることができた。
でもーーーーーーなんだ。ーーーーーー。だから。」
アルメリアは思わずうなずいた。彼に頼られることははじめてで。
だけど、最初で最後の願い事で。
「わか……りました。あなたがそう願うのなら。」
……でも、せめて。
今までは、彼への思いは一方通行だった。
「……抱き締めて……もらえませんか。」
思わず口にした一言で何をいっているのかと。そう思った。
彼は最初の初恋の相手で失恋の相手。最期になるのだから。
と希望をいってしまった。彼はそのような損得で動く人間
が嫌いだというのに。
ぽふっと音がした。アルメリアは目の前の光景が信じられなくて
何回もまばたきを繰り返した。
「……すまない」
耳のもとでそっとささやかれた声。
彼から抱き締めてもらえたのは嘘じゃないのだと現実なのだと、知って
呆然とする。
……嬉しい。
彼から死んでほしいとそう願われてそれを了承した会話だとしても
抱き締めてもらえたのはこれ以上ない幸福だ。
つうっと目から溢れる涙を拭き取ることもせずに、夜空を見上げた。
……最期くらいは声に出してもいいでしょう。
「お慕い申しあげています。レナード様」
◯
「……阿呆だな」
アルメリアに向けられた不憫な目はしばらくじっ見ていたが、
しばらくすると視線をはずしため息と落とした。
「なぜ、恋人のためにそこまでできるのかは言わないが……阿呆だな」
自らを神といった彼はなにかを迷うように視線をさまよわせた。
「神様。 なにかおっしゃりたいことがあれば、はっきりとおっしゃってくださいませんか」
ずけずけと神にものを言うアルメリアは十分不敬だが、自分の望む最期で生を終えられたのだ。
別になにも恐れるようなことなない。
神は気まずそうに口を開いた
◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯
……どうしてだ
その一言につきる。レナードはアルメリアにただ、今の想いを告げただけだ。
なのにその翌日に死体で発見される。
意味が分からなかった。
「何がいけなかったのだろうか……」
何が原因で彼女は命を絶ってしまったのだろうか。
しかし意外なことに原因はすぐにわかった。
「申し訳ない、殿下。」
真っ青な顔でレナードに謝罪をしたのがアルメリアの父である現エルアジーナ公爵だった。
6年前、この国と海を挟んだモスレア国の間に戦争があった。
レナードはこの国が仕掛けた戦争による敗戦国の王子だ。
敗戦国でありながらこのように生き永らえているのは
自国の技術の高さがが買われて、敗戦国でありながら友好国として同盟を結んだ。
異例の対応があったからだ。
もちろんそれだけが理由ではない。エルアジーナ公爵の娘であるアルメリアは
自国を助ける働きをしてくれた。
『陛下、彼の国であるモスレア国の技術の高さは無視できません。
今回彼の国が敗北したのも内輪もめで外国への警戒心が薄まったからです。
モスレア国から得られるものは大きく属国にするのもよい案に思えますが、
かの国から学べるものは技術だけです。土地を増やしすぎる
がゆえに滅びる可能性があるのですよ!』
論理的に大人を納得させてしまうほどの話術の高さ、頭の回転の良さに最初は圧倒されていた。
しかし、本当にあの言葉が彼女の本心だとしても、彼女の凛々しい姿に惚れてしまったのを
覚えている。
「なにがあったのでしょう? 公爵。話を聞かせてもらえますか」
場所を変えるよう、暗に告げる。 公爵が謝った場所はこの国の王城のなかであり
周囲の目があるからだ。
「あ、ああ。」
挙動がぎくしゃくしている。何を話したいのだろうか。
「本当にすまない。」
場所を移ってからも公爵は謝罪をするばかりだ。
「……本題に移ってもらえませんか」
「……実は」
煩わしくなって、話を遮ると公爵は意を決したようで話始めた。
「実は、アルメリアには殿下がモスレアの王子殿下でいらっしゃることを
伝えていなかったんです。」
とんだ爆弾発言をした公爵にさすがのレナードも顔を微妙にひきつらせた。
なぜなら、レナードがモスレア国出身であることを前提として、告白をしたからである。
海を挟んだモスレア国とこの国では、長らく貿易をしなかった
ためか告白の仕方が異なっている。
この国では率直に愛を述べる。
特に貴族間では、本音を言うことで建前ではなく
本当にあなたのことを愛しているのだという意味合いが強いため
神父をつれて証人とする人もいるぐらいだ。
それと対照的にモスレア国は死んでほしいと言う。
モスレア国は魂に関することを非常に神聖視しており、生きているなかで
一度穢れを落とし新たな人生を自分と共に送ってほしいという願いを込めていうものだ。
もちろん願いを込めていっているものであり、実際に死ぬわけではない。
「……」
レナードは無言で黙ったまま冷ややかな表情を浮かべた。
笑った顔をしているのにどこか黒い笑み、眼だけが絶対零度の眼差し。
公爵は怒こらせてはならない方を本気で切れさせたことを悟った。
……あのとき、なにか違和感を感じたはずなのに。
気に止めないでやっと告白することができたという事実ばかりに目を向けていた。
抱き締めてほしいといった時点で、なにかすれ違いをおきていることを悟るべきだった
と後悔してもしきれないレナードは自身を責めた。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「……」
アルメリアは言葉もなくただ、呆然と涙を流していた。
憐れな娘だと神が人知れずため息をつくと、立ち直れていないアルメリアを見た。
「……戻れないのでしょうか。」
ポツリと呟いた。神が不審な顔をする。
「戻れ……ないのでしょうか。神なら全治全能でおわす神様ならば
……時をもどせないのですか。」
願望、というより、切望、だった。
込み上げてくる想いに、真実に胸が張り消そうになる。
「無理だな。そのような救済措置は、そなたに当てはまらない。」
一言に切り捨てた神を、のろのろと首を動かし見る。
「……ですか」
「ん?」
「どうしてっ! ですか!」
醜いことをしているとわかっていても追いすがらずにはいられない。
「どうして! どうして! 戻してくれないの! 私は! どうして
気づけなかったの!」
許しを求めるように、乞うように思い付くがまま
あらんかぎり叫ぶ。
「……」
不憫な目をした神はアルメリアが落ち着くのを見計らい声をかける。
「そなたには二択の選択肢がある。ひとつはこのまま輪廻転生の流れのまま
百年後転生するかもうひとつは、天昇し、天使となるか」
天使。
予想外の言葉を言われたアルメリアは目を瞬かせた。
「それは……どういう……」
「そなたは、先の戦争の際の犠牲者を最小限に納めたのだ。」
「え?」
何を言われたか分からなかった。徐々に理解すると苦虫を噛み潰したような
顔でいう。
「あれは、ただの私情で。自らのためにやったことでございます。」
「そこだ」
キョトンとした顔をすると、神があきれた様子で説明をした。
「誉められている場で自分の欠点を述べて本心で謙虚でいることなのだ
……本当は人にそうなるよう、設定したのに」
最期はボソッと言っていてあまり聞こえなかったが誉められていると理解ができた。
「あ~あ~。ちなみにだが? 天使になると~。現世の様子がみられるぞ~。」
しきりに目で訴えながら、あからさまにいっている様子を見て、思わずアルメリアは
吹き出した。そして、感謝をしながら言うのだった。
「ありがとうございます。天昇をしたいと思います」
「……なんのことかはわからないが、わかった」
なにか事情があるのかあくまでもなにもいっていないという体でいく神様
を見ながら満面の笑みでお礼をいうのだった。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ ◯
レナードは今すぐにでもアルメリアのあとを追いたかった。
しかし、自国に残された民のためにすぐに死ぬ訳にはいかなかった。
まだアルメリアの死から三ヶ月しかたってもいないのにレナードは常に睡眠不足で
やつれていっていた。
「……アルメリア」
「はい……」
帰ってくるはずのない問いに何回も聞きたいと思っていた声が聞こえた。
後ろを振り替えるとアルメリアが白く輝いている羽を黒く染めながら、微笑んでいるのだった。
「アル……メリア?」
「はい……」
レナードは思わずアルメリアを抱き締め、
「すまない」
と謝った。
三ヶ月の時を経てまたレナードとアルメリアの物語が動き出したのだった。
実は、薔薇を挟みたかったのですが環境依然文字だということで使えませんでした。
薔薇は本数で花言葉が変わるということを使い、いたずら心で間が空いている
ところに、メッセージを込めたかったのですが……。
代わりに◯を薔薇に見立てて使いました。
一個目の◯ 薔薇1本 「あなたしかいない」
二個 9本 「いつもあなたのことを思っています」
三個 11本 「最愛」
四個 999本 「何度生まれ変わってもあなたを愛する」
さすがに最後は999も◯をかけないので 1行に入るだけ入れさせていただきました。
お読みいただき本当にありがとうございます。
もしよろしければ感想等を頂けると嬉しいです