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岡っ引きの日常はこんな感じ
睦月の寒い朝、下っ引きの正吉が血相を変えて元八の家に飛び込んできた。
「親分、親分、てーへんです。辻斬り、辻斬りです。
」息の上がった状態で途切れ、途切れだが、急いで告げた。
「どこで。誰が殺られたのかわかってるのか。」
「深川の柳橋のたもとでさあ。女以外はまだ。」
「そうか。じゃあ行って仏の顔でも見てみるか。」
「あ、そうそう。もう般若の親分がうろちょろしてましたぜ。」
「まあ仏の顔見て、中村様の所に顔出すか。」
それから正吉と元八は現場に急いだ。
現場に到着すると、般若に挨拶し、女の様子とじっくり見た。
冬の朝というのにまだ辺り一面に血の臭が漂っていた。
女は肩から袈裟斬りの一太刀だった。
一瞬で絶命したのは見るかに明らかだった。
元八はじっくりと見たが、正吉はすぐに顔を背けた。
正吉は血が嫌いで、魚の血も見たくないほどだ。
般若は元八に背中越しに話しかけた。
「おー、元八早かったな。ひでえこったな。一太刀だぜ。血の臭がな。」
元八はただ頷いた。
「女は夜鷹でこの辺りで商売していたみたいだな。
まだ誰が面倒見ていたかはわかってない。」
元八はまた頷くだけだった。