表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人造肉  作者: みむめも
1/6

受賞会場


 その会場の雰囲気は異様で一種の興奮状態であった。


 老若男女、人種、顔つき、おそらくは宗教を超えて集まった彼らに共通のものを見つけることはできない。しかし、彼らが向ける目、その雰囲気だけは共通であった。


 興奮と一言で書き示したが、それは有名なロックバンドのコンサート会場や怒れる暴徒が荒しまわるそれと全く違うもので、例えるならば、そうクリスマスに会えるもっとも有名な人からのプレゼントを待つ子供のそれとよく似た、感激につながる期待を心待ちにする様子であった。


 時は少し遡る。


 毎年、10月の頃に発表される世界的に有名で最も権威ある賞を今年はとある天才科学者が受賞するということになった。


 彼の功績を知らない人間は世界に一人もいない。誰もが、それを知っていた。


 母親は子供にそれを一番に教え、父親はそれを誇りのように語る。祖父母はその光景をほほえましく眺め、子供はそれを次世代に伝える。


 彼は世界を救った。彼は未来を守った。彼は全ての命を救済した。


 彼が作ったものは、多くの問題を解決した。


 エネルギー問題、環境問題、土地問題、宗教問題、人種問題、貧富問題、人類だけではない。

 絶滅の淵に立つ生き物、消え去っていく種を彼は結果的に多く救った。

 失われれば二度とよみがえることはない貴重な歴史的な遺物も彼の行動で全て救われた。


 だから、世界の人は彼がその賞を受賞することを当然だと思った。彼の発明、彼の行動、彼の決断にはそれだけの価値があると世界の人は感じた。


 誰一人、彼が受賞することに違和感を覚えなかった。いや、覚えた人はいたが、それを口に出すことはできなかった。


 彼がどこかでそれを知ったとき、自分がどうなってしまうのか世界の人々は知っていたから……、


 彼の発明したモノは”人造肉” と呼ばれている。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ