勇者パーティーを追放された男は諦めない
勇者という存在がいる
何度倒れようとも時間を巻き戻し立ち上がる不滅の存在
魔王の出現と共に現れ、魔王を倒す事を宿命付けられた唯一無二な世界のシステム
そんな勇者パーティーから、俺は追放された
と言っても怒る気はない
何故なら俺はまともに戦っていなかったのだから
勇者パーティーにいながら、俺は常に一歩下がって戦っていた
これでも剣と魔法は一流だと自負しているが、あえて仲間達に戦わせて目立たないように立ち回っていたのだ
それが気に食わなかったのだろう
パーティーリーダーに何度も本気を出せと叱られながらも、俺は曖昧な返事をするだけで改めなかった
我慢の限界を迎えたリーダーに解雇された時、俺は「またか」と呟いた
これで三組目だからだ
俺も本当は本気を出したい……しかし出来ない理由がある
勇者とは死しても甦る不滅の存在だ
だが無敵ではない
勇者を封じようと思うなら、それこそ拘束し監禁でもすれば封じられるのだ
現に勇者パーティーのリーダーは何度も魔王の配下に連れ去られようとしたのだから
俺はそれを恐れて力を隠した……国はそれを恐れて身分を偽造した
あのリーダーは自分の事を勇者だと思っているが違う
───本当の勇者は俺なのだから
俺の影武者として祭り上げられている事すら知らない哀れな道化
彼は国から絶対にパーティーを変更するなと言われていながらも、自身を勇者だと思い上がり、気に食わない俺を殺してでも追放しようとした
他の者達も勇者の機嫌を損ねたくなかったのだろう、誰も助けようとはしなかった
もうこのパーティーでは無理だと悟った俺は、自分からパーティーを抜けた
───また最初からやり直しだ
俺は自分の時間を操作し十代にまで若返った
レベルは戻るが覚えた剣技や魔法、それとスキルはそのままだ
さぁ新しい勇者パーティーを作ろう
回を重ねる毎に長続きして来ている、次は魔王までイケるかも知れない
魔王までたどり着けたなら影武者も不要なのだ
そこまでたどり着けたなら、何度負けようとも、何度でも時間を巻き戻し戦い続ける事ができる
そう、勝つまで何度でも永遠に……
さて、そうと決まったのなら影武者達には退場して貰うとするか
捕まって下手なことを喋られたら困るからな
俺は世界の狭間から一冊の本を取り出すと魔法で燃やし尽くした
どこかで彼らが消えたのを感じる
これで彼らの存在はこの世界から消え失せたのだ
さあ、新しい冒険の書を作ろう
次こそクリアする為に
今回のテーマは本当は怖いドラクエ