表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/68

65 邪悪な研究

 領主が管理する森の中で、俺達は怪しい建物を見つけた。

 しかもその建物からは、川を汚染する怪しい排水が出ていたのだからたまらない。

 サシャの故郷の水を汚した謎の建物を調査する為、俺達は進入を決意した。


「つっても、どうやって入ったもんかなぁ」


 建物の周りをグルリと回ってみたんだが、この建物には外から入る事の出来る入り口が一か所しかなく、その入り口にも見張りが居て侵入は困難だった。


「窓も無いな。細い穴はいくつか開いているが、人が入るには小さすぎるか」


 建物の構造を調べていたモードも、入り口以外の進入口は無いと断言する。


「どうしましょう? 門番を気絶させて中に入りますか?」


 メーネがハンマーを抱えて物騒な事を言ってくる。


「一撃で仕留めないと仲間を呼ばれるし、見張りが意識を失っている事がバレたら侵入者が居ると悟られる。見張りの交代時間の感覚によっては追手がかかるから戦う事はしたくないな」


「そ、そうですよね……」


 見張りの交代までは考えていなかったらしく、メーネが肩を落としてガッカリする。

 うーむ、なんだか悪い事した気分になるなぁ。


「面倒じゃのう。門番なぞバーンと倒して、目が覚める前に怪しい事をしておる証拠をバーッと集めてトンズラすれば良いじゃろうに」


「いやいや、それをして追手が掛かったら危ないだろ。最悪サシャの故郷の村に迷惑が掛かるかもしれないんだぞ」


「ぐっ、そ、そうなのか?」


 そういう可能性が全くないわけじゃないからな。


「……」


 そんな中、サシャだけは静かに何かを考え込んでいた。


「何か気になる事でもあるのか?」


「ええとね、あの赤いビッグアントとこの建物には何か関係があるんじゃないかと思ったのよ」


「赤いビッグアントが!?」


 そういえば俺達がここに来た理由は赤いビッグアントを追ってきたからだった。


「確かに、何か関係があってもおかしくはないかもな」


 とはいえ、あの地面を揺らす魔法をこんな場所で使ったら、見張りが何事かと思ってやってくるだろう。

 しっかしどうやって侵入したもんかなぁ。


「ふむ、ここだな」


 とその時、建物を調べていたモードが壁の一か所に手を当てた。


「嬢ちゃん、ここに手を当ててゆっくり押してみな」


「え? あ、はい」


 メーネは言われた通りに壁に手を当てると、ゆっくりグググと押していく。

 すると、鈍いゴキャッという音と共に建物の壁がへこんだんだ。


「うわっ!? 何をしたんだ!?」


「壁の脆い部分を壊したのさ。嬢ちゃん、今度はここに空いた隙間に手を突っ込んで引っ張ってくれ」


「わ、分かりました!」


 言われた通りにメーネが壁を引っ張ると、またしてもゴキャッという音が鳴って壁がドアの様に開いた。


「嬢ちゃんの力と職人の仕事がいい加減なおかげだな。これで中に入れるだろう」


 うぉぉ。マジかよ。

 あっさり壁を壊して入り口を作っちまったよ。


「ちと音が出たが、この程度の音なら川の音で相殺できるだろ」


 できるだろとは言うけど、実際にやっちまうあたりとんでもねぇな。


「ともあれ、これで中に入れる様になったな」


「はい! 護衛は任せてください!」


 侵入口が出来た俺達は、準備を整えると建物の中へと入っていく。


「へぇ、中は結構明るいんだな」


 窓のない建物だから、中は暗いと思っていたんだが、壁に掛けられたランプと、光を取り入れる為の採光穴で意外と明るい事に驚いた。

 そして俺達が入ったのは、沢山の荷物が置かれた倉庫のような場所だった。

 

「とりあえず資料室か実験室あたりを捜すとするか」


 適当な荷物で侵入してきた穴を隠した俺達は、さっそく行動を始める。


「それは良いが、建物の住人には気を付けるのじゃぞ。気配隠しの魔法はまだ有効じゃが、建物の中では木々に隠して貰えん。直接見られたら見つかってしまう故、注意するのじゃぞ」


「分かったよ」


 フリューから改めて注意を受け気を引き締める。


 ◆


「しかしあんまり人が居ないなぁ」


 建物の中を捜索していた俺達だったが、意外にも建物の中に人が居ない事に驚いていた。


「結構広い建物だから、それなりの人が働いていると思ったんだが」


「いちいち隠れる手間が減って良いがな」


 確かに、ドワーフのモードは横幅が広いから物陰に隠れるのも大変だもんな。


「逆に考えれば、あまり人を増やしたくない研究なのかもしれないわね」


 成る程、そういう考え方もあるか。

 秘密ってのは、人数が増える程洩れやすくなるからなぁ。


「じゃが契約魔法があるじゃろ?」


「契約魔法で秘密は守れるかもしれないけど、そもそも秘密の研究に相応しい研究者を捜すのって大変なのよ。冒険者ギルドに依頼を出すみたいに大々的に人材を捜せないから」


 成る程、悪の秘密研究も意外に大変みたいだ。

 というか、何でサシャがそんな裏側の事情を知っているのかの方が気になるんだが……


 ◆


「……それにしても意外とスニーキングミッションって大変なんだな」


 その後も俺達は見回りの兵士や研究者らしき人物から隠れながら建物の中を探索してきた。

 そして実際に探索をして思った事、それは……


「人数少なくても人から隠れるってめっちゃストレスたまる」


 うん、ちょうど都合よく隠れる場所なんてそうそう見つからないし、サシャとフリューの魔法の掩護が無かったら今頃間違いなく見つかっていたところだ。

 あとゲームみたいに都合よくアイテムも見つからないし。

 宝箱くらい用意しておけっての!

 いやあったらあったで怪しいと思うけどさ。


 とその時だった。

 研究員達が慌ててどこかに走っていく光景に出くわした。


「なんだ? 何かあったのかな?」


「ふむ、良く分からんが、連中が走って来た方向に向かえば何かしらの研究施設があるのではないか?」


 成る程、確かにその可能性は高い。


「けど何かの実験に失敗して逃げてたらどうするんだ? 俺達がそれに巻き込まれたら本末転倒だろ?」


「その心配はないじゃろ。連中慌ててはおったが、命の危険に慌てる様な必死さは感じなんだ」


 さすが長生きしているだけあって、その当たりの感情の機微に敏感だな。



「今ババァとか思わなんだか?」


「思ってませんよ?」


 長生きと思っただけだよ!


 ◆


 研究員がやって来た道を辿った俺達は、途中大量の薬品が仕舞われた部屋や実験室らしき部屋などを発見していた。

 その度にサシャが気になった薬品や道具を回収してモードの荷物が増えていったりもしたが。


「いいわねこの建物、貴重な薬や道具が一杯あるわ!」


 いや、それが目的じゃないんですけど。

 っていうかそれは単なる泥棒行為ではないのだろうか?


「悪事に加担させられている気がして微妙な気分なんだが……」


 荷物持ちをさせられているモードも同じ事を思ったのか、なんともいえない表情だ。


「心配ないわ。途中の部屋に収納されていた薬の中には、明らかに違法な薬が幾つもあったもの。仮に私達の目的と関係ない建物だったとしても、まっとうな事をしている場所じゃないわ」


 いや、だからって泥棒行為はどうかと思うよ?


「悪党の研究を遅らせるんだから、これは善行よ」


 凄ぇ理屈もあったもんだ。

 そんな会話を交えつつ、俺達はある部屋へとたどり着く。


「……ここは当たりだな」


 その部屋には、大量の薬品も怪しい実験施設もなかったが、その代わりに多くの机と大量の紙が置かれていた。


「ここで研究した内容を纏める資料を作っているみたいね」


「よし、皆手分けして悪事の証拠を捜そう!」


「「「「おおっ!!」」」」


 俺達はすぐに机の上に置かれた書類や棚に置かれた資料の確認をする。


「うわっ、魔物素材を使った違法薬品の研究資料だよ……ってこれ、魔物を興奮させる香の安価で大量生産する新製法!?」


 おいおい、いきなりクリティカルな情報が出て来たぞ。

 確かこの香って製造を禁止されてた筈だよな?


「ショウジさん、こっちにその香の実験について書かれた書類が出てきました!」


「マジか!?」


 メーネが書類をもってこっちにやって来る。


「なになに? 新型の魔物を興奮させる香を様々な場所及び種類の魔物に使用して効果を確かめた。香は原料となった素材の魔物と同種の魔物程強く効果を発揮する傾向にある。またその魔物を餌とする魔物も同様に興奮させる効果がある事が分かった……」


 割と真面目に研究してるんだな。


「また場所による効果の影響として、水場で暮らす魔物には香が通じにくいが、香を溶かした液体を水場に流すと香として使用する以上に魔物を興奮させる事が出来る。ただし水を汚染する欠点がある……」


 まさか……建物から流れていた排水って、この香の失敗作とか製造過程で出来た排水なんじゃあ……


「それと、ここなんですけど……」


「どれどれ……これはっ!?」


 メーネが指をさした場所には、こんな事が書かれていた。

 ダンジョンでの運用実験についての報告。

 実験場所『レンド伯爵領のダンジョン』と。


「大当たりだな」


 まさかここでレンド伯爵の領地で起こった大暴走の原因が見つかるとは。


「この資料は重要だな。良く見つけてくれたメーネ」


 俺は資料を袋に仕舞うと、メーネの頭を撫でてやる。


「えへへ、もっと凄いのを探してきますね!」


 ある意味これだけでもう十分すぎる程証拠が見つかったんだが、驚くべき証拠はこれだけではなかった。


「これは、魔物に関する研究資料じゃな」


 と、フリューが魔物の研究資料を見つけ出す。


「他の国では魔物の研究はしないのか?」


 魔物はこの世界に住む人達にとって共通の脅威だ。

 対策を練る為に研究する事はありそうだが。


「この資料は戦う為の資料というよりは、利用する為の資料じゃな。魔物が吐き出す毒などの利用法が書かれておる」


 また排水として流されそうな物の資料が出て来たよ。


「……あったわ」


 そんな中、サシャが一束の資料を手に呟いた。


「鉄喰らいに関する報告書よ」


「「「「っ!?」」」」


 この建物に侵入した本来の目的に関する資料が出て来たと聞き、皆の間に緊張が走る。


「この報告書を見る限り、この建物は魔物の卵を人口的に孵化させて従わせる研究をしているみたいね」


「魔物を従わせるだと!? そんな事が出来るのか!?」


 モードが驚いて声を上げる。


「いいえ、その為の研究はしているみたいだけど、まだ成功はしていないみたいね」


「じゃろうな。儂も長く生きておる故、似たような話は定期的に耳にするが、一度たりともそのような研究が成功したという話は聞かぬ」


 エルフとして他の種族以上に長く生きるフリューが言うのだから、魔物を従える研究と言うのは相当難しいんだろうな。


「そうみたいね。最初は子供を捕まえて調教しようと目論んでいたみたいだけど、上手くいかないから卵から育てる事にしたみたい」


「そうして生まれた魔物を従える事は出来なかったみたいだけど、魔物を飼育する事で色々と分かった事もあるみたいね。その中の一体が鉄喰らいらしいわ」


 サシャは淡々と手にした資料を読み上げる。


 かつて複数の国が協力して鉄喰らいを討伐した際、この土地を支配していた領主の先祖が鉄喰らいの卵を極秘裏に手に入れたらしい。

 鉄喰らいは恐ろしい魔物だが、上手く利用すれば軍事兵器としての効果が見込めると。


「バカバカしい、アレが人間の手に負える相手か」


 大柱を守る為の戦いで実際に鉄喰らいの脅威を目の当たりにしたモードは、呆れと怒りを込めて否定の言葉を吐き捨てる。


「現に飼育は難しかったみたいね。あの強力な蟻酸で多くの研究者が犠牲になったり、何体もの実験体が脱走したみたいよ」


「それで村に鉄喰らいが表れたのか」


「という事は、大柱を食い荒らした鉄喰らいもここから逃げ出したと考えるのが妥当だな……」


 鉄喰らいが脱走したと聞いて、モードが血管を浮き上がらせて怒りの感情を見せる。


「次にここの人間を見つけたら思いっきり殴ってやる」


 侵入した事がバレるから止めてくれ。


「脱走された担当研究員は処刑されたそうよ。この研究所に人が少ない理由はそれかもね」


 失敗した者には死を、か。

 ますます悪の秘密結社みたいなところだな。


「それと気になる研究結果があったわ」


 と、サシャがフリューに視線を向ける。


「何じゃ?」


「鉄喰らいの蟻酸を敵の武器や砦の壁を破壊する為に利用する研究で判明した事らしいんだけど、鉄喰らいの蟻酸や体液には土を汚染する成分があるらしいのよ」


「それで何故儂を見るんじゃ?」


「それがね、エルフの国で辛い食材しかできない理由は、鉄喰らいが原因かもしれないって書かれていたのよ」


「なんじゃと!?」


 エルフの国の問題が鉄喰らいにあるかもしれないと聞いて、フリューが身を乗り出す。


「かつて様々な国が協力して戦った鉄喰らいとの戦いなのだけれど、その部隊になったのはドワーフの国と言われているのは皆知っているわね?」


 いえ、知りませんでした。


「うむ、鉄喰らいは鉱石を喰らうからな。鉱山の多い土地はドワーフが多く暮す土地。必然的に俺達の生活すり領域で戦った話が多くなるのは当然だ」


 成る程、そう考えると納得だ。


「でもね。鉄喰らいはアリの魔物。そしてアリと言う生物は女王が全ての子供を生む生き物だとこの報告書に書かれているわ」


 確かに蟻の生態はそうだな。

 さすがにこの世界に蟻の研究家は居ないらしく皆報告書の内容を聞いて驚いている。


「過去に残された資料には明確にどこで女王アリを倒したという情報は無いそうなの。実際他の資料には鉄喰らいの作った巣穴を何日も何週間も進み続けて、その最奥でようやく鉄喰らいの女王に遭遇した。そこで鉄喰らいの卵を入手したとしか書かれていないわ。多分当時の領主関係者が鉄喰らいの卵を独占する為に、意図的に情報を消したんじゃないかと思うわ。そしてその最終決戦の舞台になった場所が……」


「儂等エルフの国の地下じゃったと言う事か」


「この報告書では、汚染された土の性質とエルフの国の土の性質が酷似していると書かれているの。だから本当にエルフの国の地下に鉄喰らいの女王が暮らしていたのなら、エルフの国の土が他の国と違って辛い食材しか作れないのは本当に鉄喰らいが原因なのかもしれないわね」


「おのれ、この様な研究をしていたのなら儂等に教えれば良かったものを! そうすれば儂等も地下を調査して土を癒す研究が出来たと言うのに! 植物を研究して辛くない食材を作ろうとしていた儂が馬鹿みたいではないか!」


 これまで研究してきた問題を解決する為の有益が情報が秘匿されていた事に、フリューが怒りの声を上げる。


 まぁ悪党の実験室で判明した情報だしなぁ。

 素顔に外部に放出する訳ないよな。


「ともあれ、これは有益な資料だな。ここで行われている悪事の証拠であると同時に、エルフの国の問題を解決する事が出来るかもしれない貴重な情報だ」


「ええ、これを外部に公表すれば、あの男も領主の任を解かれるのは間違いないわ」


 サシャがニヤリと笑みを浮かべる。


「魔物を使って他国に侵略する計画なんて、周辺国が一致団結して滅ぼす為の口実にされかねないしな。無駄な争いを起こさせない為にも、この研究は潰さないといけない」


 俺の言葉に皆が頷く。


「この建物のどこかに、魔物の卵を保管する場所があるそうよ。証拠の品としてそこにある魔物の卵を奪うべきだわ」


 成る程、鉄喰らいの卵なんか見つかった日にゃあ、もう言い訳のしようもないもんな。


「よし、次は魔物卵を捜すぞ!」


「「「「おおっ!!」」」」


 俺達は発見した証拠を袋にしまい込むと、部屋から出た。

 出たのだったが……


「本当に魔物を従える研究は進んでいるのだろうな?」


「は、はい! そちらは順調に進んでおります。とりあえず今回は鉄喰らいの蟻酸を使った有益な毒の精製法についての報告書が用意しておりますので……ん?」


 なんという事だろう。

 部屋を出た俺達は戻って来た研究者達と鉢合わせしてしまったのだ。

 うん、ちょっと長居し過ぎたね。


 しかも何故か、あの領主まで居る。


「なんだお前達は!? 領主である私の道を塞ぐとは躾の生ってないヤツめ!」


 と、領主がおかしない理由で起こりだした。

 あれ? もしかして俺達が侵入者だと気づいていない?


「も、申し訳ありません領主様!」


 俺は即座に頭を下げると、傍にいたメーネの手を引いて壁際に下がる。

 同時にサシャ達も俺の意図を読んで壁際に下がる。


「フンッ、全くこれだから平民は。研究の役に立たなければ今すぐ魔物の餌にしてやるところだぞ」


 不機嫌そうに足音を鳴らしながら領主が通り過ぎようとする。

 よしよし、気付いていない。


「って、違います領主様! コイツ等はウチの職員じゃありません! 侵入者です!!」


 慌てて兵士達が領主の前に出て俺達に武器を向けて来る。

 ちっ、ここの連中は騙せなかったか。


「な、なんだと!? ええい侵入者に入られるとは何事か! 役立たずの門番は処刑しろ! お前達何をボケッとしている! 早くこの者達を処分せんか!」


 領主の命令を受け、兵士達だけでなく領主の護衛らしき騎士達も武器を構えて襲ってくる。


「皆作戦変更だ! 領主を捕まえるぞ!」


「え? 良いんですか!?」


 領主を捕まえると聞いて、メーネが驚きの声を上げる。


「悪事の証拠は山ほど見つかったんだ。捕まえて国に突き出してやればいい!」


「わ、分かりました!」


 メーネ達が襲ってきた兵士達と接触する。


「てぇーい!」


「ぬんっ!」


「うわぁぁぁっ!? 俺の剣が!?」


「馬鹿なっ!? 俺の盾が一撃で破壊されただと!?」


 兵士達はメーネ達の武器と撃ちあって、あっさり武器を破壊されてしまう。

 まぁ重量級のハンマーと戦斧だからな。

 しかも二人共人並み以上の筋力を誇るのだからこうなるのは目に見えていた結果だ。


「これが私の新しい武器のちからです!」


「ふん、ナマクラだな。戦斧も受け止めれん盾なぞ鍋の蓋以下だ」


 いやー、盾を作った職人に罪は無いと思うぞ。

 相手が悪かっただけで。


「眠りの妖精よ、かの者達に癒しとやすらぎを! スリーピング!」


 フリューの魔法を喰らった研究者達がバタバタと倒れていく。

 心なしか気持ちよさそうに寝息を立てた居るのがなんかムカツクが。


「アイスウェイブ!」


 サシャの魔法が領主の護衛の騎士達の下半身を凍らせ行動不能にすると、残ったのは領主とその傍にいた研究員の二人となっていた。


「くっ! おのれ!」


 領主が踵を返して逃亡すると、研究者もその後を追う。


「お、お待ちください領主様!」


「俺達も追うぞ!」


「はいっ!」


 ここで領主を逃したらせっかくの苦労がパァになってしまいかねない。

 これまでの全ての元凶を捕まえて、罪を償わせてやる!


5月25日(土)書籍版2巻発売とコミカライズを記念して連続更新中!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ