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51 地底門

「これで最後ーっと!」


 最後の一台分のアダマンタイトの増産を終えた俺達は、店へと馬車を走らせると、既に店にはガストン達が待機して待っていた。


「おう、待っていたぞ」


「お待たせしました。これが最後のアダマンタイトインゴッドです」


「まさか本当に集まっちまうとはな……」


 ガストンが額をかきながら呆れたように呟く。


「ともあれ助かった。この短期間でこれ程大量のアダマンタイトが集まるとは思っても居なかったからな」


 とバリアンが強面に笑みを浮かべる。


「まったくだ。ここに来るまでは本当に大柱が折れる前に必要な量のアダマンタイトを集める事なんて出来るのかと心配でたまらなかったからな」


 まぁ普通に考えれば馬車50台を超える量のアダマンタイトを用意するとかムリゲーだよな。

 地球で言うならいきなり金塊をトラック数十台分集めろって言われた様なもんだろう。


「いやー、たまたま複数の取引先がアダマンタイトのインゴッドを大量に所有していてたすかりましたよ」


「……どんな大金持ちだよそいつ等」


「余計な詮索は止めておけ」


 俺の取引相手は一体何者なのかと呟くガストンをバリアンが制する。


「ああ分かってる分かってる。ただまぁあまりにも正直外れな取り引きだったんでな。つい口に出ちまった」


 あっはっはっ、聞かれても絶対に教えんけどな。


「さてそうなると後は代金なんだが……ちょっとそこんとこややこしくてな」


「ややこしいですか?」


 おいおい、ここに来てまさかの国が支払い拒否とか言う気か?


「実はアダマンタイトを集める為に外に出たのは俺達だけじゃないんだ。そしてアダマンタイトを集める為の予算も俺達だけに渡された分じゃない」


 ああ成る程、つまり予算は他のドワーフにも預けられていて、ドワーフの国の王都にはあまり金が無いって訳ですな。


「何しろ文字通り国を支える柱を補強するだけの量のアダマンタイトだからな。金額も相当な額になる」


 なんかさ、嫌な感じしねぇ?

 お金が払える様になるまで待ってとか、分割払いでよろ! とか言われてなんやかんやで割り引ぎ要求されたりしない!? 大丈夫なの!?


 ちょっと地球に居た時の取引先とのトラブルとか思い出しちゃったりしてブルーな気分なんですけどー!


「それでだな、契約魔法を使って正式に支払いを約束し、足りない金額はマジックアイテムやウチの国の特産物を代金として支払うと言うのはどうだ?」


「マジックアイテム!?」


 ちょっとサシャさん、興奮するのは良いんですけど今取引中ですから。


「現金が足りないから不足分は現物で。更に契約魔法で代金の代わりとして差し出す物品は正しい相場に照らし合わせた価値で計算する為ですね」


「そういう事だ」


 ふむ、この世界の契約魔法は一度結んだら逆らえないという実行力を伴っている。

 その辺は以前高利貸しのゴルデッドに操られ無理やり戦わされていたウチの従業員が証明してくれた。


 だから契約魔法を使えば、金の代わりに支払われる物品の価値は保証されるって訳か。

 そう考えると物々交換も悪くないな。

 栽培スキルを使えば新らしい商品を増やす事も出来る訳だし。


「分かりました。金額の不足分は物資で代用という提案、お受けしましょう」


 よく考えると、マジックアイテムを提供してくれるのはドワーフの国だ。

 そう考えると結構貴重なマジックアイテムと交換する事が出来るかもしれない。


 もしくはミスリルやアダマンタイトみたいに貴重な鉱石と交換するのも良いだろう。

 複数の宝石や鉱石を数揃えれば、栽培スキルで増やせる素材の幅も広がるってもんだ。


 こうなるとモードに荷物を収納する為の倉庫を作ってもらおうかな。

 できればメーネに栽培を手伝って貰える様に移動して設置が出来る持ち運び可能な倉庫を。


「それと、今回の件で偉いさんがえらく喜んでいてな。国賓待遇で歓迎するからあんたに是非来て欲しいって伝えてくれとも言われてたんだ」


「いや、そう言うのは別に良いです」 


 支払いが安全そうなのとモードの頼みだから受けただけで、貴族と仲良くなるために受けた訳じゃないからな。

 商売以上の関係で付き合う気はないんだ。


「むぅ、そりゃあ残念だ。王都の連中も大量のアダマンタイトを運び込まれるのを見て相当喜んでいたからな。もしアンタが受けてくれたらきっと派手なお祭り騒ぎになると思ったんだが」


 いやいや、誰かを神輿にして祭りを楽しむならともかく、自分が話題の中心になるのはちょっと。

 たとえそれが感謝の気持ちだったとしても、必要以上に目立つのはゴメンだよ。

 何しろ俺は人間の国でやっかいな連中に目を付けられたかもしれないんだからな。


「まぁ安心しろ。我等ドワーフの王は人間の貴族のように恩義を受けた相手を強引に利用したりなんてしないからな。お前が望むのなら、よけいな騒ぎにはしないさ」


 とモードが俺の心配を無用だと宥めてくれた。

 もしかしてこの人、自分の国の王様とも知り合いだったりするの?

 も

しそうならちょっと顔広過ぎない?


「とはいえ、支払いに関しての契約をしてもらう為にも一応王都には来て欲しい」


 あー、そっちは仕方がないかなぁ。

 大口の取引の場で部下を送るのもちょっと憚られる。

 俺が大企業の社長とかなら専務クラスの幹部を代理として送る事も出来るが、今の俺は零細企業の社長だからな。


 国賓待遇は断固拒否するが、支払い契約に関しては俺がしないとだめだろう。


「分かりました。それでは俺達が直接出向きますよ」


「ああ、そう言って貰えると助かる」


 こうして俺達はドワーフの国に行く事となるのだった。


「うーん、ドワーフの所有するマジックアイテム、気になるわねぇ!」


 いやいや、遊びじゃないですよサシャさん。

 ちょっとは護衛のメーネ君を見習ってくださいな。


「ドワーフの国かぁ。きっと凄い武器が一杯あるんでしょうねぇ……もしかしたら、私の力でも壊れない武器があるかも……」


 あかん、こっちも遊び気分だ。

 まぁ商品を納入したら暇になるし、代金の契約をしたら観光するのもアリかもね。

 もちろんドワーフの国でも新商品の仕入れをするけどさ。


 ◆


 エルフの国を国境に向けて俺達は進んでいく。

 途中以前寄ったロードレッグ鉱山の近くを通り抜ける。

 たまたまここが廃鉱山になった事を知らずに来たお陰で俺達はアダマンタイトを入手でき、それが縁でドワーフの国の問題を解決できるっていうんだから、縁って奴は不思議だね。


 途中エルフの国とドワーフの間にある国境で出国手続きを取る。


 本来国境を出入りする時は色々と手続きやらが必要らしいんだが、俺達の素性はドライ男爵が保証してくれていて、戸籍に相当する許可証も貰っている。

 それのお陰なのか、出国手続きは非常に簡単に終わった。


 だた、なんか俺の許可証を見たとたん、驚いた顔の兵士が慌てて敬礼をしてきたんだよな。

 多分俺達の身元を保証してくれたのはドライ男爵が影響してるんだと思うんだが……男爵ってそんなに高い爵位じゃなかったよな?


 それともドライ男爵は爵位では測れないなんらかの強みを持っているのだろうか?

 ううむ、なんか最近やり手の権力者と縁を結ぶ機会が多い気がする。

 ドワーフの国でも貴族と商売したりする事になるのかなぁ。

 ああいや、ある意味今がもうそうか。


「もうすぐ地下に入るぞ」


 と、馬車を走らせていたモードが声をかけて来る。

 そう言えばドワーフの国の王都は地下にあるんだっけ。


「なぁ、ドワーフの国は地下って話だけど、何で地下にあるんだ?」


 普通に生活するだけなら、地上で良い筈だよな。

 今回の件だってわざわざ地下に暮らしていたから起きた事件な訳だし。


「元々は俺達も地上に住んでいたらしい。だが坑道を掘り進めていくうちに、いつの間にか地下で暮らす様になったって話だ。俺達が住んでいる王都も、元々は鉱山の一部だったんだが、坑道を掘り進めている間に巨大な空洞を発見したらしい。そして時のドワーフ王がその大空洞を俺達ドワーフが暮らす国として最初の町を作ったそうだ」


「へぇー、そりゃ壮大な話だな」


 なんと言うか、いかにも神話かなんかにありそうな話である。


「そら見えて来た。アレが地底門だ」


「地底門?」


 モードの言葉に前を見ると、道の先に建造物が見えてきた。


 それは4本の大きな柱の上に屋根がついた家の骨組みみたいな形状だ。


「っていうかアレ……なんか、大きさがおかしくないか?」


「でっかいですねー」


「あらホント」


 そう、ここから見える家の骨組みの柱の位置が、俺達が走っている街道の両端よりも外側に建っているのだから。

 それはつまりあの家の骨組みの大きさは、この街道よりも大きいって事になる。


「あれは地底門の屋根だな」


「屋根?」


「見ろ、屋根の下を」


 モードに促された俺達は、屋根と呼ばれた建造物の下を見る。


「なんだありゃ!?」


 俺はそこにあった不可思議な建築物に思わず声を上げてしまう。

 そう、そこにあったのは、山の斜面に合わせて斜めに建造された門だったのだ。


「あれがドワーフ王国名物、地底門だ」


「あれが!?」


 っていうかなんで斜めなんだよ!?

 普通に縦に建てればいいだろ!?

 何でわざわざななめ何だ!?


 しかもここからでも分かるほど大きな門だ。

 門と道の幅から察するに、おそらくは三〇メートル近くありそうな巨大な門だ。


「地底門というのは、元は坑道の入り口でな。それにあの門を後から追加したのさ」


「面白いのは門だけじゃあないぞ」


 と、前を走る馬車の御者台から顔を覗かせたガストンが、人の悪い笑みを隠さずに告げてくる。


「まだ何かあるのかよ」


「それじゃあお客様を俺達ドワーフの国にご案内だ」


 そんなガストンの言葉を聞きながら、俺達は地底へ続く門の中へと入っていくのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 誤字多いけど、無料だし、そんなもんか。
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