30 収穫調整
「やれやれ参ったなぁ」
想定よりも早く始まった大暴走の報告に、俺は更なるマジックアイテムの収穫を要求されていた。
とはいえ、栽培スキルにはどうしても時間が必要だ。
植えた直後にすぐ収穫できる訳じゃない。
「となると、収穫時間を調整するしかないな」
そこで俺はいつも収穫する時間よりも早く収穫してみる事にした。
とはいえ、さすがに全部一気に引っこ抜くわけには行かない。
そんな事をして全部駄目だったら大損だからな。
という事で、1個ずつ時間をずらして収穫する事にする。
「まずは端っこのコレからっと」
俺は種イモならぬ種杖から生えた蔓の一番端っこを掴んで引っこ抜く。
「……杖の先端部の飾りだけか」
成る程、こうやって端っこから生えて来るのか。
じゃあもう少し時間を置いてみよう。
とはいえ、この世界だと細かな時間を計るのは無理だから、地面に棒を突き刺して日時計で大雑把な時間を計るか。
そして棒から放射線状に12本の線を引く。
この世界が地球と同じ24時間かは分からないが、目安にはなるだろう。
そして更に一時間が経過したので俺は次の杖を引き抜く。
「……これはまた」
今度の杖はさっきよりは成長していた。
ただし、杖の杖たる棒の部分が無かったが。
「持つ部分が無くても杖って言えるのかなぁ……?」
けどこれ、一応 スイッチまで出来てるんだよなぁ。
「これでも動くかな?」
試しに押してみようかと思った俺だったが、もしコイツが不完全だった場合、何が起こるか分からない。
それこそ映画や漫画よろしく、失敗作が大爆発なんて事にもなりかねない。
「一応対策はしておくか」
俺は杖? を木の棒に括り付け、それを畑から離れた森に近いギリギリの場所に突き立てる。
そして栽培スキルで栽培した槍を束ねて即席の長尺棒を制作する。
更に畑を作る時に休憩用の椅子変わりとして残しておいた岩の陰に身を隠し、そこから長尺棒で杖のスイッチを押して即座に頭を下げる。
1秒、2秒、3秒……
「……あれ?」
だがスイッチを押したにも関わらず何も起きない。
もしかして中身が不完全な品だったから、スイッチを押しても機能しないのか?
「なーんだ……」
失敗作かとがっかりした俺が岩陰から出ようとしたその時だった。
突然魔法の杖が眩く輝きだし、次の瞬間大爆発を起こした。
「おわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
盾代わりに隠れていた岩からガギン、ボゴォなどと凄い音が聞こえて来る。
そしてようやく爆風が収まり、俺は岩陰から頭を出す。
「うっわぁ……」
見れば杖を刺していた辺りはクレーターみたいになっている。
更に言うと森と畑を隔離していた柵どころか、森の木々までなぎ倒していた。
「これ、長尺棒作って良かったなぁ……」
あと椅子代わりに残しておいた岩もな。
「あっ」
見ればその岩も爆風で飛んできた石がぶつかってボロボロになっていた。
ほんと隠れて実験して良かったわー。
「ショウジさん大丈夫ですかっっ!」
と、その時血相を変えたメーネが両手に剣を構えた姿で畑の中に飛び込んで来た。
「勝手に入ってすみません! ですが今の爆発は何ですか!? 敵ですか!?」
先日のデモンベアーの件もあってか、爆発から10秒と立たずにメーネが畑へ飛び込んで来た。
本来なら畑には絶対入ってはいけないと言い含めてあったのだが、まぁ突然大爆発が起こったらそれどころじゃないわな。
「いや、すまない。これは俺の実験が原因なんだ」
「?」
どういう事? とメーネがこちらを見て来る。
「いや、仕入れたマジックアイテムを試しに使ってみたのが原因なんだ。敵が襲ってきた訳じゃない」
「……そ、そう……なんですか?」
半信半疑といった様子だったが、実際に敵の姿が無いのでメーネも不承不承納得する。
「っていうかこんな大爆発するなんてそのマジックアイテムは大丈夫なんですか!? というか、ショウジさんのお体は大丈夫なんですか!?」
メーネは俺の周りをくるくると回りながら怪我が無いかと見て回る。
「そこの岩陰に隠れていたから大丈夫だよ。それよりも悪いんだが、あそこの柵を作り直してくれないかな」
「わ、分かりました。……けど、ショウジさんにお怪我がなくて何よりです」
メーネは安堵の溜息を吐くと、俺に指示された通りに柵を作り直すべく木材を取りに向かった。
そして俺は、かつてマジックアイテムがあったクレーター跡を見つめる。
うーん、実験していた辺りに埋めていた食料品が全滅だな。
栽培途中の杖の近くでなかっただけましだが。
もし杖の近くで実験してたら、連鎖爆発で更に巨大なクレーターが出来てたところだ。
「けど、こりゃあ駄目だなぁ……」
まさか爆発するとはなぁ。しかも大爆発だ。
威力は凄いんだが、持ち主ごと大爆発するんじゃあ意味がない。
これじゃあ自爆アイテムだよ。
「うーん自爆アイテムじゃどんなに強くてもなぁ……いや、まてよ?」
その時、俺の脳裏にある考えが浮かんだ。
「もしかして、これ使えるんじゃないか?」
そのアイデアが思いついた俺は、即座に残っていたマジックアイテムを掘り起こすのだった。




