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10 高利貸しのゴルデッド

「ここが高利貸しのゴルデッドの事務所ですか」


 メーネの借金を立て替える為、俺達はメーネが金を借りているという高利貸しのゴルデッドの事務所へとやって来た。


「ほ、本当に大丈夫なんですかアキナさん? 金貨1000枚なんですよ?」


 いざ借金を返す段となって、メーネが不安そうな顔で俺に聞いてくる。

 金貨1000枚を本当に用意できたのか、そしてその金を本当に俺が支払ってくれるのかが心配なんだろう。

 相当な大金だもんなぁ。途中で心変わりされたっておかしくない額だ。


「心配しなくても大丈夫ですよ。満額支払って貴方を自由の身にしてあげますから」


 まぁその後は俺の手で雁字搦めになる訳だけどな。

 とはいえ、それでも今までの様な不安な生活はさせないから安心してくれ。


「ア、アキナさん……」


 何故かメーネが恍惚とした顔で俺を見つめている。

 そんなに借金がなくなるのが嬉しいのか? いや普通は嬉しいか。

 地球だったら数千万の借金がいきなり無くなる様なものなんだからな。


「さぁ、入りましょう。いざという時は私の護衛は任せましたよ」


「はい、はい! 命に代えてもアキナさんの身は私が守って見せます!」


 うんうん、頼もしいね。


 ◆


「すみませーん」


 俺達が事務所の中に入ると、建物の中に居た男達がこちらに目を向けてくる。

 全員が物騒な目をしている。

 間違いなくヤのつく職業系の人達だな。


「何だぁお前ぇ等? ウチに何の用だ」


 何って高利貸しの事務所に来たんだから、金を借りるか返すかに決まってるだろ。

 コイツ等、借金の取り立てのし過ぎで客商売とはいかなるものかを忘れているみたいだな。


「ん? 良く見たらお前メーネじゃなねぇか。ついに借金が返せなくなってボスの奴隷になりに来たのか?」


 そう言って男達が下卑た目でメーネを舐める様な目つきで見回す。


「ひっ……」


 さんざん借金の取り立てをされてきた所為で、借金取り達に苦手意識が出来てしまったらしく、メーネが怯えて後ずさる。


「大丈夫ですよ、メーネさん」


 俺はそんなメーネの手を握ると、彼女に笑顔を見せる。

 そして俺は男達に向き直る。


「我々はメーネさんの借金を全額返済に来たんです」


「「「なんだと!?」」」


 借金を全額返済に来たと言われ、男達が驚きの声を上げる。 


「おいおいマジかよ。金貨1000枚だぞ!?」


「もしかしてアレか? どっかの貴族の愛人でもなったのか!?」


「おいどうするよ、これじゃあボスがめちゃくちゃ怒るぞ」


 なんか失礼な事を言っているヤツが居るなぁ。

 けどそれよりも気になるのは、ボスが滅茶苦茶怒るって所だな。


 借金を返済すると言っているのにも拘わらず、怒るとはどういう事だ?

 まぁ借金ってのは、返済の最中に発生する利息こそ貸す側の利益な訳で、そういう意味では一括で返されるのは儲けが減るので避けたいところだろう。


 だが、メーネにはまともな返済能力がない。

 働こうにも、商売道具を壊してしまうのだから。

 にも拘わらずゴルデッドはメーネに金を貸した。

 それも金貨1000枚という大金をだ。


 返済能力の無い人間に金を貸すなんて、それは普通に考えれば金をドブに捨てる行為だ。

 メーネの武器殺しという二つ名を知っていればなおさらの事である。

 そもそもそんな大金では、メーネを奴隷にしたところでどれだけ返済に充てることが出来るやら。

 

 だが、そうした返済能力の無い人間に金を貸す理由もない事は無い。

 それは最初から貸した金が返ってくる事を期待していない、別の目的の為に金を貸していたからだ。

 そしてその理由は間違いなく……。


「お前等、何を騒いでいる?」


 と、その時、事務所の奥から不機嫌そうな声が聞こえてきた。


「っ!? ボ、ボス!?」


 どうやら親分の登場らしい。


「ん? メーネじゃねぇか、ようやく観念して俺のモノになる事にしたのか?」


 男達のボス、つまりはこの男がゴルデッド本人で間違いないだろう。


「はっはっはっ、安心しろメーネ。俺は優しい男だ、お前がいう事を聞く限りは優しく使ってやるからよ」


 ゴルデッドは勘違いしたまま馴れ馴れしい口調でメーネに語り掛ける。


「う、ああ……」


 やはり借金を続けてきた事でこの男にも苦手意識が出来てしまったのだろう。

 メーネは近づいてくるゴルデッドを前に後ずさる。


 だがこれ以上メーネを怖がらせる気は無い。

 メーネは俺の従業員なのだから。


 俺はメーネを守る為に彼女とゴルデッドの間に割って入る。


「ああ? 何だお前は?」


 案の定、ゴルデッドはメーネとの間に割り込んだ俺を鬱陶しげに睨む。

 うわめっちゃ怖いわ、さすが高利貸しの親分。

 だがここでビビる訳にはいかない。

 この場面で俺は、メーネの頼もしい雇い主として振る舞わないといけないからだ。

 大丈夫だ、いざとなればメーネが俺を守ってくれる。

 なにせこの中で一番戦闘能力が高いのはメーネだからな。

 だから俺はメーネが守りたいと思う立派な男を演じる必要があった。

 うん、我ながら色々と矛盾してるな。


「私はメーネさんの雇い主です。彼女が貴方から借金をしている事で生活に難儀していると聞きまして、それで借金の返済に力を貸すべく同行させていただきました」


「ほう、そりゃあ優しい雇い主様だ。だが無意味だな。何しろこいつの借金は金貨1000枚だ。貴族だって気軽に出せる金額じゃねぇぞ」


 ゴルデッドがそいつは無理だと笑い声を上げる。


「それがボス、こいつメーネの借金を全額支払うっていってるんでさぁ」


「なんだと?」


 ゴルデッドに借金を返すつもりでやって来たと説明するつもりだったのだが、借金取りの一人が勝手に説明してくれた。


「てめぇ本気で言ってるのか?」


 ゴルデッドは先程までのこちらを舐めた目つきから、こちらを威嚇する様な目つきで睨みつけて来る。

 警戒半分、困惑半分といったところか。


「ええ、本気ですよ。メーネさんの借金、金貨1000枚を満額返済しに来ました」


 さぁ、メーネを自由にしてやるぞ。


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