幼女は語る
米4ー2
「ふう、、、」
服を着た俺は幼女に質問を投げかけた。
「ところでさ、ここどこでしょう?」
「あー。急いでいたので説明なにもしていませんね。ここはあなたのいた世界から見れば異世界、ということになります。」
ふむう。なるほど。いやわからん。
「うーん。異世界はまあ置いといて。最初から説明してもらえるかい?」
今のところ俺が知ってるのは死んで天国に行ってここに連れてこられたってことだけだ。説明はよぅ!
「駄目です。」
「なんでだよ!天使のくせに意地悪いな!!」
幼女の額に青筋が浮かぶ。何かをグッとこらえながら幼女は言った。
「はい。これ。この鎌を見てください。これは死神の鎌と言います。」
まんまだね、、、
「これは死神にしか持てないし扱えません。この鎌を振るうと、あなたを殺せます。」
「怖いわ!!つーか1回俺を殺したんだよね?こら目をそらすんじゃない。」
幼女は空を見上げ、そして、こう言った。
「運命って、あるんですね。」
「作為的な香りが充満する運命なんてなくていいが?」
「いや、本当に運命だと思います。」
真面目な顔で幼女は俺の顔をまっすぐに見据える。
「あの時急いでいたので、私はあなたの姿を確認してすぐにあなたにこの鎌を振り下ろしました。」
「で、俺は死ぬ運命になったと?」
幼女は申し訳なさそうに振りかぶり、遠くを見る目で語りだした。
「鎌を振り下ろそうとした時、私には迷いがありました。なんの説明もなく、魂に死を刻むのは死神の規範に外れるので、よほどの事がなければしたくはありません。」
死神の規範。当たり前だけどそんなのはじめて聞いたわ。
「でも、あの時は緊急の事態でしたので、ええいままよ!と鎌を振り下ろしました。」
「なんか雑な、、、」
幼女は目を伏せ、震える声で俺に語る。
「雑。そうですね。雑と言われても仕方ありません。実際私は力みすぎて目をつぶってしまったのですから。」
「マジで雑だったわ!!」
「力み、目をつぶり、そして、振り下ろした鎌は空を切り」
「言わんこっちゃない!!、、、ん?空を切り?」
俺鎌で殺されたのと違うのん?
「そして鎌は、、、」
「鎌は、、、?」
ゴクリと唾を飲む。どうなったんだ。
「手からすっぽぬけちゃいました。エヘ。」
「あっぶねえぇぇぇ!!」
マジで何してんのこの子は!!
「で、鎌でやられたわけでもないのになんで俺死んだの?」
「それがですね。すっぽぬけた鎌が飛んでいった先に偶然車が走ってまして。フロントガラスにドーンでバリーンでキュルキュルであなたにドカーンです。」
「説明も雑になったな!!でもなんとなく状況はわかったわ!!」
「エヘヘ」
笑うとこじゃねえ!あと死神の鎌って質量あるのな!要らん知識だわ!
「でも心配は無用ですよ。車の運転手さんは死んではいませんので。」
「まあそれは、、、」
死んで「は」?
「その巻き添え食らった運転手さんは今どうしているのかな?」
「死んではいません」
「死んだ目で答えるんじゃない!!聞くの怖いわ!」
「ところで。」
話を逸らす気だな!聞きたくないから乗っかるけど。
「なんだよ?」
幼女は俺の顔を見上げ、、、俺の、後ろを見ている、、、?
振り返ると、いつの間にか俺の後ろに人がいた。もとい。
俺の身長の倍はありそうな、ばかでかい鈍器を俺めがけて今、まさに振り下ろそうとしている豚の顔をした巨人がいた。