8.旅立ちと初めての遭遇
市場を出て10分くらい経っただろうか。
服装選びに悩んだため、遅れたのだ。
少し先にある、あの木製の家が美月の家だ。
集合場所の家の前に美月らしき人影が見える。
俺は、小走りでその人物に駆け寄っていく。
「も~っ!おっそいよぉ!何してたのさ~。集合時間から10分も遅刻だよ!」
俺の幼なじみは怒り眉にして、付けている腕時計を見せ、遅刻について叱責してきた。
「ごめんっ!少し服選びに迷っててさ…。」
遅れてきた理由を正直に話す。
俺は黒のシャツに革製の胸当てを付け、同じく革製のグローブをつけている。
「ふ~ん?まぁ…似合ってるけどさ…」
美月は頬を赤らめ、
最後の方は消え入りそうぐらい小さい声だったが、なんとか聞き取った。
「お、おうっ…!ありがと…。美月もほら…!その服、似合ってるぞ…」
いかん、少しドキッとしてしまったではないか…!
美月の方を見ると、美月も服装を変えたみたいで、ありのままの感想を伝えた。
紺のローブに白いシャツで、膝丈の灰色のプリーツスカートを履いており、いかにもRPGらしい服装になっていた。
「ふぇ?ふぇぇぇ!?そっ!そう!?えへへっ…うーーっ…!」
赤らめていた頬がさらに赤くなり、モジモジし始める。
「そっ!そそそんなことより!もう行かなきゃ!ね?早く行かないと、時間かかるし!」
目の前の幼なじみに見とれていたが、美月が本題を促して来たのでふと、我に帰った。
「そうだな。今日はルーブ川を超えたいからな」
マップを確認したところ、ギルドがある大きな街『アストラル』まで、『ルーブ川』を越えて、『フォート平原』を歩いていけば着くようだ。
「よし、出発しようか!」
「うん!」
気を取り直し、俺たち二人はアストラルに向けて歩き出した。
マップを見て確認すると、俺達がいる所は『セルベ村』という所らしく、そこを丁度出たところだ。
ちなみにマップは以前の日本地図の面影は微塵もなく、隣の街がどこへ何に変わったのかすら分からない。
セルベ村を出てすぐに林があり、そこへと入っていく。
林はうっすらと暗く、所々木漏れ日がさしている。
15分くらい歩いただろうか。
美月が唐突に口を開き、話しかけてきた--
「そう言えば、高校の受験どうだった?」
え?いや、今それ!?
突然昨日受けてきた受験のことについて聞いてきた。
確かに昨日俺と同じで同じ高校の試験受けたんだし、気になるっていえば当然か…。いや、でもこの状況で??
「えっ…!いや、普通だったけど……てかっ!もうこんなになっちゃったから、高校なんて行けないでしょ!」
学校なんて概念残ってるのか…?この世界…。
「うーん…そだねぇ…ふふっ。でも世界が変わらなかったら、もしかしたら、万が一で!合格出来てたかもね~っ!」
美月が舌をペロッと出してきた。
全く、こいつはいつも人を小馬鹿にしてきて…。
ガサガサッ!!
そんな他愛もない話をしていると、突然近くの草むらから何かが動く音がした。
これは……魔物か……!
「悠!なんかいるっ!」
「わかってるっ!」
俺は腰に携えていた短剣を抜き取り、構える。
美月も小さな折りたたみ型のダガーをポケットから取り出し、構える。
………!!!!!
現れた!!!!
草むらから、出てきたのは……
---青い液状の何かが現れた。
ニュルっ
いや、待てよ。これは………
スライムじゃないか…?
よくその液体状の何かを見ると、〇の形をしたポインターの横に名前とレベルが表示される。
『Lv.1・ブルースライム』
……………って
「「そのまんまじゃん!!!」」
美月と同じタイミングに同じツッコミをする。
いや、だってね…もうちょっと何か良い名前なかったの…?