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RPGな現実世界  作者: こなた
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7.旅立の準備

俺は準備をするために、一度家へと戻ってきた。

ドアを開けて、家の中へと入った。

「ただいま。」

唯が落ち着きなく、あっちこっちへと歩き回っていた。

母さんはソファーに座っている。

よかった、目が覚めたみたいだ。

二人は俺が帰ってきたことに気づいたようだ。

「お兄ちゃん!!遅いよ~!!」

唯がプリプリ怒って俺の方に歩き迫ってきた。

「ごめんっ!ちょっと美月に会ってて…」

妹に手を合わせて謝る。

「あら、美月ちゃん大丈夫だったのね!良かったわ。」

美月は家にも何度か遊びに来たことがあるので、母さんも知っている。

「ああ!そうだ、母さん目が覚めたんだね。身体はもう大丈夫?」

「ふふっ、ありがとう。大丈夫よ。悠に心配されるなんて、変な気分ね。」

どういう事だよ…。


俺は母さんと唯にアイテムイベントリーの事や、外に出て分かったこと、また美月とこれからギルドへ向かうことなどを伝えた。

その後、唯はソファーに座り、自分でアイテムイベントリーから取り出した冒険者の心得を母さんと一緒に読み始めた。


「ってことで、ギルドに行かなきゃならないんだ。」

「そんな!お兄ちゃんがどっか行っちゃったら、私達はどうなるの……!?」

唯が本を見るのを中断して、涙を浮かべてこっちを見てくる。

やめろ…今にも泣きそうな目で俺を見ないでくれ。

「ギルドに行かなきゃ、職を手にすることも出来ない。

それに、この世界の情報収集のためにもすぐでも行かなきゃならない。ほんとごめん…。」

俺は向いのソファーに座る唯に向かって手を合わせ、謝罪した。


パタンッ



母さんが本を閉じて、こっちをじーっと見てくる。




「はぁーっ、仕方が無いわね。私が唯の面倒見てるから、行ってきなさい。」

「うん、帰ってくる時にはちゃんと職業に就いて戻ってくるよ。」

「わっ!私は別に…!」

唯が顔を赤らめて、目を横にそらす。

「無職は家に入れさせないわよ?」

「もちろん!」

まだ高校にすら通ってないのに、就職か…ははっ。

母さんとそんな冗談を言い合っていると、唯が小さな声で抗議していた。

「そもそも、美月ちゃんと二人きりで泊まりがけの旅なんてするのがダメよ。うん。ダメ。……ずるいもんっ。」

ん?上手く聞き取れなかったが、唯が怒っているのは確かだ。

これは旅に出てから、お土産でもどこかで見繕って、帰ってきたら渡そう。

そもそも、お土産買うところなんてあるのだろうか。



よし!

俺は荷物をまとめようと意気込み、ソファーから勢いよく立ち上がった。

アイテムインベントリは最大で収納数5がいっぱいだ。冒険者の心得によると、バッグなどにインベントリ追加枠が付いているので、荷物の量が多い場合それを持てばいいらしい。

近くの棚から革製のバッグを取り出し、その中に必要そうなものを入れていく。

缶詰、ライト、昔キャンプで使った寝袋、水、スマホ、etc…。

粗方、必要そうな物は入れ込んだ。よし…!

ちなみに、通信系は全て使えなくなっている。

通話やネットを見ることは出来ないし、テレビも映らない。

スマホで出来るのは、電話番号を登録していた者の大体の場所の把握と、生存確認ぐらいだ。


丁度お昼を過ぎたぐらいだろうか、約束の時間まであと一時間ある。

さっきはあまり周辺を見れなかったから、少し外に出て周りを見てくるか。

行きたいところもあったし。



「じゃあ、行ってきます。母さん、唯、気をつけて。」

「あんたも気をつけないさいね。」

「………ばかっ。」


二人にもう旅に出ることを告げて、家を出た。

唯は最後まで俺に悪態をついていた。

ごめん!


外へ出る少し歩くと、さっきは気づかなかったが、現代では見慣れない服装に、異国の顔つきの人達が路を歩いていたり、畑を耕していたりする。

これがNPCか……

などと思っていながら歩いていると、小さな市場にたどり着いた。

もちろん、つい昨日までこんな所は無かったのだ。

武器商店は………っとここか。

市場に入って、少し歩いた所に武器屋があった。


「はーい、いらっしゃい!!いらっしゃい!!

新入荷した『トールゴブリンナイフ』はどうだい~?」

店員がびっくりするほど大きな声で客引きをしている。

店前にはそこそこ人が来ていて、中には現代風の格好をしているものもいることから、変遷後の世界に覚悟を決めた者も少なからず既にいることが分かった。

「おっさん、これくれよ。」

「あいよ!ミリタリーダガーだな、4200円だ。」

一人武器を購入したらしい。

なるほど、どうやら通貨はそのままでいいようだ。

一応、お金は持ってきている。先日、ゲームソフトを大量に買ったため手持ちは少ないが、先ほど母さんから少しばかりのお小遣いを貰ってきた。

数ある武器を眺めていたら、店員のおっさんが話しかけてくる。

「お前さん、職業はなんだ?見たところフリーな感じがするが…」

「ああ、俺はまだ無職なんだ。」

従来の社会なら完全なる負け犬発言だ。

「やっぱりなぁ!ってなると、お前さんが使える武器はうちの店だとこの三つになるぞ。」

つまり、職によって使える武器と使えない武器があるってことか。


………って

「木の棒か、斧か、短剣……だとっ!!」


---衝撃が走った!!!


「ああ、そうさ!フリーが使える武器なんて限られてら。」

くっ!確かに、おっさんの言うとおりか。

しかし、ここはノーマルに短剣にしておくべきか…。

そもそも木の棒100円ってそこら辺で拾ってきた疑惑が浮上する。



「じゃあ…短剣で…」


「2800円な!まいどあり~!」

店員の顔が溢れんばかりの笑顔へと変わった。



そんな調子で、雑貨、防具、服装を必要最低限買い揃えた。

そろそろ約束の時間なので、俺は集合場所へと向かった。

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