第1章 ①
北に進みながら木の棒やら手頃な石などを拾っていると目の前に犬が現れた。しかしただの犬では無いようだ。
「グルルルルル......」と低い唸り声を発している。
「…元気のいいワンちゃんだこと」
後ろ姿は小型犬のそれなのだが、正面から見ると完全にバ○オハザードに出てくるあれである。
「ま、まぁ最初の方に出てくる敵としては妥当だな。とりあえず木の棒で殴ってみるか」
全能力が上昇していたため普段ニート生活して運動していなくても動けた。というか思ったことができた。
犬もどきを左右に揺さぶりながら隙を突いて脳天に木の棒をフルスイングで振りおろす。犬もどきはキュゥンという鳴き声と共に倒れた。
「っと、まぁこんなもんだよな。…ん、死ぬと消えるのか。そうやぁレベル制とか言ってたけどどうしたらレベル分かんだろ?シャロに電話かけてみるか」
プルルルル......
「はいはい、私よ」
「もしもし俺だけど質問良い?」
「ええ、何でも聞いてちょうだい」
「じゃあ、自分レベルってどう分かるの?」
「あぁ言ってなかったわね。自分のレベルは拠点に着くと貰えるステータスカードで分かるわ」
「ほぅ、分かったそれだけだ。それじゃ」
電話を切ると裕也は道を阻む敵(主に犬もどき)を残さず倒していく。
またしばらく進むと今度はベトベトなよくRPGで序盤にでてくるモンスターが出てきた。ただ緑だ。青じゃない。
「おぉ、スライムか、RPGといえばお前だよな。近寄ると溶かされそうだし石でも投げるか」
そう言うと裕也は拾った石を投げた。筋力強化された裕也の腕から放たれたただの石は音速を軽く超える勢いでスライムのコアを貫いた。
「スライムはコアをぶち抜くと蒸発するのな。覚えとこう。......ん、なんか落ちてんな」
スライムが蒸発した後には緑色の石が落ちていた。太陽の光が当たってとても綺麗な色を放っている。
「ドロップアイテム的なものかな、まぁ貰っておこう」
裕也は木の棒の先端を尖らせて木の槍のようなものを作った。武器としては弱いが強化された能力があればこの程度の武器でまだ十分だろう。
適当に敵を倒しながらさらに北に進むと薄暗い森に入った。あちこちで魔王の声が聞こえる。外からの光があまり差し込んでこず、なんとも言えない不気味な感覚を覚える。
「まだ昼過ぎなのにこの暗さか、暗いところだし、少し強い敵出てくるのが森ってもんだろ」
プルルルル......
突然の電話だった。向こうからもかけてこれるんだなと思い電話に出る。
「俺だ、どうした?」
「言い忘れたことがあって、今大丈夫?」
「あぁ大丈夫だ。それで言い忘れたこととは?」
「敵を倒すとその敵が持ってる固有スキルが使えるようになるわ」
「まじか。それはいいこと聞いたな。スライムと犬もどきみたいなのを倒したけど固有スキルはどう確認するんだ?」
「携帯よ。固有スキルは消えないから初めて会った敵はどんどん倒していいわよ」
「なるほど、携帯だな。固有スキルで飛べるようになったりするのか?」
「ええ、空を飛ぶような敵を倒したらね」
「そりゃ楽しみだ。それじゃ」
電話を切って薄暗い森の中を進みながら携帯で固有スキルの確認をする。
「今の固有スキルはっと、噛み付く、溶解液。うん、あんま使えないね」
裕也が少しがっかりしていると、明らかに自分に向かってくる足音が聞こえてきた。森の中のためゲリラ戦は避けられない。裕也は少し楽しげに呟いた。
「…さて、次はどんなやつが来るんだ?」
読んでくださいありがとうこざいます。アドバイス等ございましたらよろしくお願いします。