プロローグ
アンドロイドと呼ばれる魔法の国があった。そこを支配するのは美少女ユリエッタだった。背が低く恐ろしい美貌を持っていた。
「あなたたちの全てを私は愛します。自由と平等は誰の手にも降り注いでくるわけではありません。際限ない努力と苦悩の果てに手にするのです」
ユリエッタの演説は国民二千万人の元にラジオで届けられた。際限ない戦争の果てに生き残った国だった。
様々な権力闘争の果てに天才と呼ばれた少女によってアンドロイドは統治された。国民は日々偶像化されたユリエッタの姿を舞台やラジオで見聞きしていた。
とある都市部の舞台でユリエッタと王子の演劇が行われた。
「王子様、私にどうか従ってください。もう戦争はしないとこの血に約束してください」
女優がナイフで手を切る。血が滴り落ちる。
「やめてください王女様。あなたが血を流すことはありません!」
「命に代えても国を守りたいの……」
突如女優の顔が豹変し王子にナイフを向ける。
王子はおびえながら女優の顔を見つめる。
「あなたのことが好きだった。それでも戦争を止めることはできない」
そう言い残して王子はその場から去る。
観客は騒然としながら舞台を眺める。
ユリエッタ扮する女優は涙を流す。
「いやよ! 私達のせいで国民が死ぬなんて」
観客はいつものようにユリエッタ扮する女優に感動する。
舞台が終わると、観客たちの中で様々な噂話が繰り広げられた。
あれほど人を引き付けるユリエッタは何か特殊な魔法を持っているに違いないというのが彼らの主張だった。