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麦畑

「フェル…聞いとるのか?」


「え…あ…ごめん聞いてなかった。」


「もう、せっかく説明してやっとるのに…」


と言われて、マウレにこれからの生活について説明を受けていることを思い出した。


「ごめん…ごめん、それでなんだっけ?」


ここに来てから2週間が経った。神世語や敬語で話すと堅苦しいと言われたため、この世界で言う標準語を教えてもらい話している。フェルという名はマウレにつけてもらった仮の名前だ。


「本来であれば…人狼には獣人族の里の長か防人になってもらうんだが…今はどの職にも空きがない…それに、フェルの出自がハッキリせん。匂いでウチらに近しい眷属だとはわかるんやが、眷化(獣化)出来んし、確かめられん。ひょっとしたら人狼じゃないかもしれん。」


我(俺)は眷属として上級3種、

下級3種の計6種の眷属を作った。知能的には大差はないが、能力が大きく異なる。


上級眷属は神に近い存在として生み出した。それぞれに限界は設けているが、低位の神であれば殺せる力を持つ。神なき今は各眷属からは神史と呼ばれ崇拝される存在らしい。


ただし、傲慢で神から直接命令を受けなければ自由気ままに行動するという扱いにくい眷属でもあり、生み出せる数にも制限がある。


下級眷属は上級眷属から派生した眷属である。見た目は人族やエルフ、獣人と様々であるが、眷化と呼ばれる能力を持つところが共通している。眷化後の姿は種によって異なる。人狼種であれば半獣半人の姿になる。吸血鬼は見た目に変化はないが、犬歯が伸び、目が赤くなる。


「そこでや…フェルにはウチの補佐をしてもらうことになった。」


「それって…今までと変わらないんじゃ?」


「む…今までは働いちょらんだろ!これからは働くんや。だから違う!」


まぁ、言われてみれば確かに働いてないな


「わかった…でも具体的に何をすればいいんだ?」


「うーん、それは決めてない。まぁ、これから仕事に行くから…まずは見学だな。」


無計画だな…大丈夫か?アホそうだからなマウレ…


とはいえ、マウレは結構偉かった。マウレは大長として30〜60人程の村を10個ほど管轄下に置いており、約500人の獣人と10人の人狼種を束ねている。


この地域にいる獣人は合わせても3000人ほどしかおらず、人狼種は60人ほどらしいので、6分の1がマウレの部下なのだ。事実、マウレはその60人の人狼種では5本の指に入る実力者らしい。


(あんまり、舐めた口は聞かないようにしよう。)


「ん?どうした?フェル…神妙な顔して」


「補佐するならやっぱり敬語の方がいいんじゃないか?」


「…そんなこったない。堅苦しいわな…人狼種同士やったら基本はタメ口やし…フェルはもっと上位の眷属やもしれんしな。そうなったら逆にコッチが敬語か神世語で話さなならん。」


「そんなもんかね。」(まぁ、郷に入っては郷に従えかぁ。)


「そんなもんや!まぁ、上位の眷属やったらってのはウチの希望やけどね。まぁ、フェルじゃ弱そうやし望み薄やな。」


そう言うとマウレはいたずらぽく笑う。


「なんで上位の眷属だったらいいんだ?」


上位の眷属が現れたら間違いなく自分の順位が下がるのだから、むしろ逆じゃないか?


「あ、それは人族がウチらに対する討伐を本格化する気らしいから…ウチら人狼種だけじゃ心許ないねん。」


「あーなるほど…」

つまり用心棒が欲しいのね。俺は神様と混じっているとはいえ、力の使い方がよくわからない。身体の方はだいぶ慣れて来たが、かなり華奢だ。


こっちに来て一番驚いたのは、鏡を見た瞬間だった。髪の色こそ真っ黒で同じだったが、顔や体型が死ぬ前と全く違うのだ。


死ぬ前はがっちりした体型で…顔は普通だと思いたい…だったのが、鏡に映っているのは十代前半の美少女…と言っても良い中性的な美少年だった。念のため股間を確かめると、息子がついていたので男であることは間違いない。


「まぁ、弱そうなところは異論ないから期待されても困るけどね。」


神様と混じったとはいえ、今のところ使えるのが知識だけなので、おそらく弱い。


「そうやね。期待してないから安心しーや。おっ!見えて来たで、麦畑や。」


そこには、森の中を切り開いたとは思えない見事な麦畑が広がっていた。


「おーすごいな。」


「そうやろ、ウチらと獣人が何世代もかけて作り上げてきた自慢の畑なんや。」


「マウレ様〜!」


少し幼い舌足らずな声が聞こえたのでそちらを見ると、10代前半くらいの小柄な獣人の少女がマウレに手を振りながら駆け寄ってきた。


「おー、ソフィか…しばらく見んうちに大きいなったね。どうしたんや?手伝いかなんかか?」


「はい、そうなんです。お父さんが腰を痛めちゃって人手が足りなくて。」


「あーマウリアのおっちゃんまーた腰を痛めたんかいな。難儀やな。」


世間話に興じるマウレ達を尻目に、ある考えに耽る。マウレもだが、ソフィと呼ばれた獣人の少女も相当な美形である。この世界では皆こうなのだろうか?


「おい!フェル聞いとるのか?」


「え…あ?何だっけ?」


「ソフィーの家で昼食をご馳走なることになったから、麦畑を軽く見たら行くで」


そう言うとマウレは僕に麦畑の説明をし始める。その後、ソフィーの畑仕事を手伝ってから集落の方向に向かうことになった。



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