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旅立ち

手紙のとおり、見送りにマウレは姿はなかった。残りたい気持ちもあるが…戦いになれば足手まといになるのが目に見えているし、結局は旅立つことにした。


マウレは千人程度なら撃退できると言っていたし、人の街にいれば戦いの状況も入ってくるだろう。終わったと聞いたらすぐにでも帰って来よう。


歩きながらそう思い、横を歩く獣人…ソフィを見る。ブラウンの髪に犬のような耳がゆっくりと揺れている。琥珀色の大きな目は愛らしいく、どこから見ても美少女と言っていい。


俺の視線に気づいたのか、こちらを見ると微笑んで話しかけてくる。


「村を出るのは初めてなので緊張しますね。」


「そうなんだ…ああ…そういえばごめんな。奴隷なんかにしちゃって。」


ソフィには悪いが、人の街に行くために奴隷契約を結んでもらっている。人の街で、獣人が奴隷以外でいることが不自然だからだ。


奴隷は魔法で義務を負わされる。主人の命令に逆らうと耐えがたい苦痛に襲われたり、主人を殺すと奴隷自身も死ぬようにされるのだ。


もちろん、ソフィにかけられた奴隷契約は少し痛む程度の罰則しかない軽いものだ。ただ、こちらの都合で少女を奴隷とするのは、現代人の感覚では相当に居た堪れない。


「?…何がですか?獣人は元々が眷属様にお仕えするのが役割です。なので奴隷でも村人でもそれほどは変わりません。それに、外の世界を見ることができるのもありがたいです。」


「…そうか、でも俺は眷属と言っても何の力もないからね。友人として扱ってくれると助かる。」


「そう仰られるなら、人の街に着くまではそうしましょう。フェル様…そろそろ野営の準備をしませんと。」


奴隷にされたことなど些細なことのように、テキパキと野営の準備をし始めるソフィ…何かしようかとオロオロしているうちに野営の準備は終り、食事の準備を手伝うだけになってしまう。


ソフィの作る料理は相変わらず格別に美味かった。夜はどちらかが起きて見張りをすることになった。


「時間がくれば起こしますので、先にお休み下さい。」


女の子より先に寝るのは気が引けたが、慣れない森歩きで疲労も限界だったのと、ソフィに先に休むことを固辞されたので俺が先に休む。


2、3時間が経ったころ、大きな物音で目が覚める。


ガッキィィィイイイン!


飛び起きて周りを見れば、人間と思われる男数名とソフィが戦っていた。


ソフィに斬りかかる男たち …


え?何この状況…ソフィ…逃げろ!


俺の心配をよそに、短剣を持ったソフィは豹のような身軽さで次々と人間の急所を切り裂いていく。


「クソ…引け!引け!」


3人がやられた所で髭面の男がそう言うと、森の中で逃げていった。


短剣の血を拭いながら、こちらを向くソフィ


「あら、起こしてしまいましたか?」


いやいや…え?ナニコレ


「え?どうしたのこれ?」


「人族の野盗です。しばらく前からつけられているのは気がついていたのですが、数名だったのでフェル様の気を煩わせるまでもないと思い寝ている間に処分させていただきました。」


「…大丈夫なのか?怪我してない?」


「大丈夫です。まだ、交代まで時間がありますからお休み下さい。」


「いや…目が冴えちゃったよ。でも、何人か逃げたけど仕返しとか大丈夫かな。」


野盗の死体の横で寝る気にはなれない。


「問題ありません。短剣に毒が塗ってあります。かすり傷程度ですが全員に斬りつけました。数分でしゃべれなくなり、長くても30分もすれば全員死んでいます。」


毒?そんなヤバイものがあるのか?と言うかソフィ…強すぎね?獣人って弱いイメージだったんだけど。


「…強いんだね。ソフィは」


「いえ、まだまだです。でも、獣人は生まれながらの戦士です。人族の野盗ごときに負けはしません。」


やや幼さを残す声であるが、たしかな自信を感じさせる声だ。認識を改めなければならない。俺が守らなきゃいけないとか思ってたけど、俺はいつまでたっても守られる側なのね。

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