上級眷属
…
…
…
…?
一向に攻撃がこないことを怪訝に思い、薄っすらと目を開けると、吸血鬼の爪が俺の目の前で近づいたり、離れたりしている。何だ?殺す前におちょくっているのか?
「何?なんなのコレは…いったい何をした!」
困惑した声を吸血鬼があげる。いや、何もしてないが、むしろアンタが何してんだ?
「あれ…どういうことや?」
「…もしやとは思っていましたけど」
「ん?ベルテ…なんか知っとんのかいな?」
「いえ、知っているというか。もしかして程度やけど…フェルはんは上級眷属ちゃいますのん?」
いや、神さまなんだけどね。たぶん。
「はっ…何言うとんねん。フェルはウチらより弱いんやぞ。それどころか獣人にも負けるほど…まさか、力を隠しとったんか?」
いやいや、そんなことはありません。常に全力ですよ。今もね…ええ、悲しいほどね。
「それはよくわかりまへんけど、ウェルベックが攻撃出来ん理由がそれしか思いつきまへんのや。」
おお、そうなのか?なら、俺には隠された力が…でも使えないから意味ないな。神さまなのにな!
ドン!
「うぉ!」
そんなどうでもいいこと考えていると、吸血鬼に突き飛ばされた。
「ふん、馬鹿な。こんなひ弱な存在が上級眷属などと…食べるのはもういい…死ね!」
思い通りにいかなくてムカついたのか…今までの数倍の魔力を圧縮していく吸血鬼。おいおい!明らかにオーバーキルだろ!落ち着け!
俺の心の声を無視し、閃光が辺りを包んだ。
俺の光と熱がジリジリと皮膚を焼く…ただ、それは俺を傷つけることはなかった。それどころか、光が治るとそこには腕が吹き飛んだ吸血鬼がいた。しかも、今までと違い、すぐには修復しない。
ん?…どういうこと?
「…何をした?私の魔法を弾き返すなど…ありえない…まさか本当に上級眷属なのか?」
今までの余裕が嘘のように怯えた表情で俺を見る吸血鬼…俺にもよくわからんが、これで退いてくれれば助かるな。
「これはもう間違いないどすね。フェルはん…いえ、フェル様は上級眷属どすな。」
「なんでや?何がや…分かるように説明せいや。」
俺も分からん。どう言う事だ?
「私も詳しくは分かりまへんけど、私達は同じ神に属する上位の存在に攻撃できないようになっとると…聞いたことがありんす。そう考えれば、フェル様は上級眷属ということどす。」
「でも、ウチは何度か殴っとるで…」
「殺すつもりで殴った訳じゃないでしゃろ?子供を叱る程度やったら戯れついとるだけと判断されたか…フェル様が吸血鬼の真祖で直系じゃないから強制力が弱かったのか…まぁ、おそらく前者やと思うけど。」
「嘘やろ…ウチ…フェルに仕事をほとんど押し付けて遊んどったんやけど、どうしよう。」
そんなこと言ってる場合じゃないだろ…って!おい!マウレ…テメェ遊んでたのか!別に仕事があるって言ってただろう。ちくしょう
「それは知りまへん!とりあえず、吸血鬼をどうするんどす?お決めくださいまし。フェル様」
ここで、俺に話を振るのかよ。…えーっと