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シトフィリア

PSO2にはまってしまい遅くなりました。

 窓の外から鳥のさえずる音が聞こえる、どうやらもう朝のようだ。俺は朝日に目を慣らすためにゆっくりと目を開いたが、外はまだ暗い。


 「……今何時だ?」


 寝ぼけた目のまま近くに飾ってある時計を睨み付けた。どうやらまだ4時半らしい、早朝からこの街を出るのだからまぁ良い時間帯か。突然お腹が鳴り響く、そう言えば昨日の昼と晩のご飯を食べずにすぐさま疲労に身を任せて寝てしまったんだった。しかし……一旦空腹を感じるともう我慢が出来なくなってくるな。

 「飯、食うか」



 「困ったな、非常に困ったな」


 なにかを作ろうとしても家の中には食材はなく、食材を買おうにも市場はやってない。空腹をまぎらわす為に外に出てみたが、全く空腹は紛れなかった。


 (こんな時間帯にやってる飲食店なんかあるわけ……ん?) 


 めし屋と書かれたのれんが掛かった一軒の店があった。店の中は明るくやっている様だが、外見は木造で所々ぼろぼろになっている。


 「外見はどうでもいいのだがな」


 俺は早速店に入ってみた。中は狭くカウンターの前に椅子が五脚しかなかった。装飾品の様な物は何もなく、綺麗に並べられた品書きと壊れたところを補強した様な跡しか見当たらない。そして五脚しかない椅子の内一脚は既に誰かが座っていた。


 (こんな朝から来る奴なんて他にもいたのか。後ろの壁に剣と盾を置いているな)


 「いらっしゃい、好きな席に座っておくれ」


 少しだけ小柄で何処雰囲気を醸し出すお婆ちゃんは話しかけてきた。俺は先に座っている人の後ろを通って空いている席に移動した後、ゆっくりと座った。


 「何にするんだい?」


 さて、何を食べるか……昨日何も食べてないしがっつりしたのが食べたいから肉とかでもいいな、だが野菜も取りたい所だ……そうだな、これにしよう。


 「カレーライス一つ下さい」

 「カレーライスだねぇ、分かったよ」


 お婆ちゃんはすぐにカレーを作るための調理に取りかかった。さて、待つのは良いんだが流石に暇だな……俺は先に来ていた人に気づかれないように目線だけを向けた。目は琥珀色で、顔は爽やかさ全開の整った顔立ちをしていて。男の俺でも少しはときめいてしまいそうな程だった。服装はよく見るオシャレ系の着ている服なのだが、何故か上品さを醸し出していた。


 (着ている人のせいか? 服も良い素材で作られてるな)


 茶髪で髪型はアシンメトリー。こう言う髪型は何回か見たことがあるがこの人が今までで一番似合っている。


 (しかしこのイケメン、旨そうに食うな) 


 イケメンは周りの目線など気にもせずにひたすらに目の前のラーメンに食いついていた。服に汁がつくのなんかお構いなしにひたすらに食べている。ラーメンか……個人的にはそういう手も確かにありだ。朝からラーメンは凄く眼が覚めるし何より食べてて楽しいからな。だがしかし、俺がいま食べたいのは。


 「お待たせしました、カレーライスが出来たよぉ」


 他でもない、自分で頼んだカレーだ。おばちゃんは俺の前にカレーライスをゆっくり置いた。


 「ありがとうございます、それでは……いただきます」


 俺は箱の中に入っているスプーンを取り、そのスプーンでカレーを掬い上げ口のなかにいれた。その瞬間、俺の中の食欲に抑えが効かなくなった。


 (辛い、だが旨い! 舌を破壊する辛さではなくて、食べる人の食欲を燃え上がらせる良い辛さだ。すごいぞこのカレー、具材の良いところだけが混ざりあい共存しあっている、米もルーに合うようにちゃんと炊かれていて手が止まらない。)


 「お代わりするかねぇ?」

 「お代わり!」

 


 「三皿も食べてしまった……おばちゃん、ごちそうさま」


 俺はおばちゃんに代金を支払い店を出た。するとラーメンを食べていたあのイケメンも店から出てきた。


 (カレーに夢中で周りの事気にしてなかったな、あのイケメンに変なこと思われてないだろうか)


 そんなことを考えながら家に帰ろうとしたとき、遠くから風を切る音がした。俺はそっちの方を見てみると、すぐ目の前に矢が迫っていた。


 (おいおいおい! ここで死ぬのかよ! 嫌だぞ俺は死ぬときはベットの上で静かに死ぬっていう未来図があるんだからな!?) 

 だがそんなことどうでもいいかのように矢は飛んできている。俺は目は閉じて、せめてもの足掻きに身構えた。だがいつまでたっても何も起こらないので目をゆっくりと開けてみると、目の前には先程のイケメンが細身の剣を持って立っていた。


 「やぁ、大丈夫かい君」

 「だ、大丈夫です」


 イケメンはこちらに話しかけている間にも矢が二本、三本と飛んできたが全て盾で防いだ。 


 「なら早くここから逃げよう、ここは敵にとっては有利な場所のようだしね、人のいる場所に逃げ込むよ」


 イケメンは俺に手を差し出してきたので、俺はそれを掴んで立ち上がり脇道の方に進んでいくイケメンの後ろを走ってついていった。


 「逃げ出したぞ! 追え! 追え!」


 後ろの方からは野太い声が聞こえてきた、先程矢を射ってきた奴の声だろう。徐々に足音も大きくなってきた所を考えると二人や三人ではないだろうな。


 「そういえば自己紹介がまだだったね、私の名前はシド・フレイアと言うんだ、よろしく」


 シドは自己紹介をしながら後ろから俺めがけて放たれる矢を防いだ。このタイミングで自己紹介するものではないだろう普通は、だが自己紹介されたからにはちゃんとしなくてはいけないだろう。


 「俺の名前は佐藤といいます、以後よろしく!?」 


 自己紹介をしている最中に矢が首の横を通りすぎていった。驚きでちびるかと思ったが大丈夫なようだ。


 「すまないね、今のは防ぎきれなかった」

 「だ、大丈夫ですよ、それよりシドさんそっちじゃなくてこっちに来てもらってもいいですか」

 「そっちは行き止まりだったはずだが」

 「問題ありません」


 俺は昨日の泥棒を追っていたときにたどり着いた行き止まりにたどり着いた。普通の人が追われてるときにこんなところにきたら、もうだめだ、おしまいだぁ、となるが俺は違う。俺の何でも作れる力は何でもと言うわりには魔法のように地面を隆起させたりは出来ない。だがこの地面が魔法で隆起させられた瞬間を再現、つまり「作り直す」ことはできる。


 「盛り上がれ!」


 俺とシドが立っている地面が昨日の再現のように盛り上がり始めた。だが後ろにいたはずの兵士が一人だけ物凄い早さで走ってきて隆起している最中の地面に飛び込んできた。


 「逃げれたと思っただろう、だがこの俊足のハヤブサ様から逃げられるとでも思ったか!」

 「お、おいそこから離れた方が」


 俺は兵士に危険を知らせようとしたが時既に遅し。兵士は昨日の俺のように尻に鋭く隆起した地面が刺さっていた。兵士は刺さった衝撃で白目を向いてしまいそのまま下に落ちてしまった。


 「し、死んではいないよな?」

 「まぁ、この高さならまだ大丈夫だと思うけどね、それよりも早く逃げよう」

 「あ、あぁ」 


 俺とシドはまだ来るであろう追手を振り払うためにまた走り出した。



 「で、そのあとは大したことなくここにつけたって訳だな」

 「あぁ、そうだ」 


 何とか家に着くことができた俺とシドは、クール達を起こして現状を説明した。


 「確かに早く逃げなきゃ危険そうだね」

 「そうだな、よし支度してさっさとこの街からおさらばしよう」

 「あぁ、そうさせてもらおう」

 「ここからはなんとかなりそうだね、それじゃあ私はおさらばさせてもらうよ」


 踵を返して家のなかから出ていこうとしていた。


 「あ、待ってください、聞きたいことがあるのですが」

 「なんだい? 答えられることならちゃんと答えるよ」

 「なら聞きますけど、何で俺を助けてくれたんですか、正直助けられるような事は全くしてないと思うんですよ、それに今さらですが俺は指名手配犯なんですよ」


 指名手配犯を助けると言うことは自分もその犯人と同じ扱いを受けることになる。その危険性を考えれば一般的には即兵士達に通報かつきだすものだろう。


 「何だそんなことか、助けた理由なんてひとつしかないよ」

 「ひとつしかないんですか」

 「あぁ、君がご飯を美味しそうに食べてたからだよ」


 ……ん? それだけ? 


 「ご飯を美味しく食べていただけで助けたんですか!?」

 「その通りだよ、私にとっては食事がこの世の全てだからね、自分で食べるのも好きだし他人が美味しそうに食べているところも大好きさ」 


 俺はシドに対しての印象がかなり変わった。まさかそれだけで助けるとは……この人もかなり変わってるみたいようだ。


 「それじゃあ佐藤君、また会ったら一緒に食事をしよう」

 「まぁ、今度会えたらですけどね」

 「会えるさ、今日あった時のように運命的にね」

 

 シドはギザっぽい台詞を言った後、今度こそ家から出ていった。


 「何だあいつ、変わった奴だな」

 「本当にね、ナルシストかって言いたいね」

 「お前ら酷いな」

 

 この後俺達は早々に準備をした後、すぐに街を逃げ出したのであった。

シド・フレイア

性別 男

性癖 食事

種族 人間


食事をするのがとても好き、だがちゃんと痩せているしイケメンである。よく自炊もするので料理は得意、最近のブームはおでん。

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