クレプトフィリア
就職の事を考えながら書いてたので集中力が散漫してましたね。
ここは深い森に囲われた街、ラドロ。
ここは魔物が多く出るため衛兵も寄り付かない。そのためよく犯罪者が逃げ込んでくるので無法地帯となっている。
「前々からひどい街と思ってたが、今はこれ程有難い街はない」
逃げて来る犯罪者にも色々いる。例えばちょっとした盗みをした者や性犯罪を犯した者、殺人を起こしたものまでいる。
「堂々と肉の解体をしていても、誰も何もしてこないしな」
中に世間を揺るがす大犯罪を起こした者もいる。例えで出すならば……
「そうだよね~、私の場合は息を荒くしながら殺されにきてくれしね」
王様を殺した者とかだろう。
「お腹空いたね」
エリは突然そう言った。言われてみれば俺もお腹が空いてきたな、何処かで肉でも食べた方が良さそうだ。
「なら行きたいとこがあるんだが、そこでいいか?」
「佐藤さんのお勧めか…ならそこに行ってみようよ」
俺個人の感想を言えば佐藤のお勧めより人肉の方がいいが、まぁたまには他の物でも食った方が良いだろうと思い、俺は頷いた。
「十日間金を稼ぐために滞在していたが明日出発するのだ、今日ぐらいは少し奮発しても良いだろう」
佐藤はニコニコしながら財布を取り出した。すると突然、ターバンで顔を隠し、ボロボロのフードとよく盗賊が着てそうな黒い服に最低限の防具として胸当てを着けた誰かが前から走ってきて佐藤の財布を盗り、走っていった。
「お、俺の財布!」
「なにやってるんだ間抜け! 追いかけるぞ!」
「今、クールさん余裕で目で捉えてましたよね」
「捉えてても体が動かなきゃ意味がないけどな」
あそこには俺達のこれからの活動資金が入っている、盗まれる訳にはいかない。俺達は急いで盗賊を追いかけた。
「あいつ早いな!」
盗賊はとても素早く、路地裏に進んでは腰に着けていた投げナイフを投げつけたりゴミ箱を倒したりして俺達の妨害をしていた。しかし盗賊は道を間違えたのか、行き止まりに自分から進んでしまった。
「や、やっと、追いついた……」
「ま、全くだな……」
エリは佐藤は息をゼーゼーと切らしていた。
「さっさと財布を渡せ、そうすれば片腕で済ましてやるよ」
俺がそういうと、盗賊は左右にある壁を蹴って家の屋根に登って行った。
「そ、そんなのってあり!?」
「あーりゃりゃ、こりゃまた十日間金稼ぎか?」
「それは困る、これ以上は流石に兵士に居場所が勘づかれる」
確かにそうだ、ここにいる間にも何回か兵士がこの場所に来て俺たちの事を探していた。そろそろ居場所を特定されてもおかしくないだろう。
「なら私が魔法でどうにかしてみるね、大丈夫、いつもの鋭くしてるのを平らにして……」
エリがそう言うと、突然地面が盛り上がり俺たちを屋根まで持ち上げた。
「な、何とかできたぁ!」
「こういうことが出来るのなら早めにやって、ぐぉ!」
佐藤が何かを言い終わる前に、突然大きな声を出して倒れた。佐藤の方を見てみると、ズボンの尻の部分から血が出てきていた。そして先程まで佐藤がいた場所では地面が鋭く隆起していて先端が赤くなっていた。
「何してんだよエリ、一人の男がお前のせいで痔になったぞ」
「ご、ごめん佐藤さん、でもいい感じの出血で魅力的だね」
エリは反省はしているようだが、血液好きの定めなのか佐藤の尻から出る血の方に興奮しているようだ。少しは反省しろよ、これきっと切れ痔だぞ。
「いいからさっさと財布を取り返せ……」
そういえばそうだった。盗賊はこちらが登ってきたことに驚いてるのか魔法に驚いてるのか分からないが、その場で呆然としていた。
「さてと、そろそろ鬼ごっこも終わりとするか」
俺は近くに投げられそうな手頃な物がないかと見渡した。そして近くにあった手頃な者、エリを掴み持ち上げローブ男に投げつけた。
「て、何でなのぉぉぉぉ!!」
投げつけられたエリは綺麗な放物線をえがきながらローブ男に飛んでいった。ローブ男は飛んできたエリを見て意識を取り戻したが時すでに遅し、ローブ男は飛んできたエリとお互いに頭をぶつけ合いどちらも気を失った。
「さてと、財布を取り戻した後はこいつを解体して食べるとしますか」
俺は盗賊から財布を取り返すために体に触った、だがすぐにそれをやめて隣でのびているエリを叩き起こした。
「おい、起きろエリ、ほら起きろ」
中々エリは起きないので、俺は更に力を込めて叩いた。
「い、痛いよ! もう少し優しく起こしてよ!」
エリは目から涙をボロボロと流しながらこちらに怒ってきた。
「悪かったよ、投げれるものが無かったから仕方なかっただろ、それよりこいつから財布を取ってくれないか」
俺は倒れている盗人に指をさしながらエリにそう言った。
「そんなこと頼むために起こしたの!? 自分でやればいいでしょそんなこと!」
「そりゃ無理な話だ、そんなことしたら俺は痴漢になるからな」
「へ? どういうこと」
こいつ以外とまぬけだな、もしくは頭を打って知能が一時的に低下してるか。
「こいつ、女だ」
既に触った時点で俺がもう痴漢なのでは。とかいう意見は受け付けません。
俺達は一度自分達の拠点に女を連れて戻り、顔を隠していたターバンをとった後両手両足を縛った後椅子に座らせ、佐藤が事情を聞いてから殺すか殺さないかを決めることにした。正直女の肉にはあまり興味がないから殺すときはエリに任せようと思う。
「何故俺たちの金を盗んだ?」
佐藤は目が覚めた女に向かって金を盗んだ理由を聞くが、女は何の反応も示さずに沈黙を貫いていた。女は褐色の肌色で髪は白く肩ほどの長さだが、ちゃんとセットしてないのかボサボサとしているためもっと長いかもしれない。身長は170近くはありスレンダーな体型だ。
「ふぅ……何も喋らないな、どうしたものか」
佐藤は椅子に座り込み、深くため息をついた。
「ねぇ、何も喋らないんだし私のためにもさっさと殺しちゃおうよ」
エリがニヤニヤしながら女の方を見る。女はその視線に気づき恐怖したのか、突然泣き出した。
「エリ、泣かれたら余計何でこんなことしたか分かんなくなるだろ」
「いいじゃん別に、どうせ泣いてなくても話さないんだし」
「俺の尻の件忘れてる訳じゃないよな」
「……ヒューヒュヒュー」
「口笛吹けてないぞ」
何故か不機嫌なエリと涙を流す女の対応に頭を悩ませている佐藤を他所に、俺は女に何か違和感を感じた。俺はそれを確かめる為に女に近づき、喉に手を伸ばした。
「おい、何をやってるんだクール!?」
「そうだよ! 殺すのは私の役目なんだからね!」
「ん~? いや、ちょっとな……」
俺は余りにも突然の出来事に涙が止まった女性の事など気にせずに喉を遠慮せずにさわり続ける。
「なぁクール、殺す気がないのは何となく雰囲気で分かったけど、本当に何やってんだ」
「そうだね、端から見たら凄く変態チックだよこの光景」
佐藤達から何か冷たい目で見られてるけど気にせずに喉を触り続けた。そして俺はあることが分かったので喉を触るのを止めた。
「お、終わったのかクール……さん」
「何で他人扱いすんだよ傷つくぞ。まぁいいか、それよりエリに聞きたいことがある」
多分これさえ分かればこの女の処罰も決まる。
「何?」
「魔法のなかには声を封じる、もしくは声を奪う系統の魔法はあるのか?」
女がこちらを驚いた様な目で見た。
「どっちもあるよ、私たち魔族も良く人間とかの魔術師とかにかけてたりするしね」
「それがどうかしたのか?」
佐藤とエリが不思議そうな目でこちらを見ている。いや、あれは変な人でも見るような目をしてやがるなこいつら……
「エリがこの女を泣かしたときに分かったんだけどよ、泣いてるときに喉がちゃんと動いてんだよ」
「お前そんなところも見ているのか? 関心だな」
「これぐらいは当たり前だ。それで喉が動いてるのに喋れないのはもしかしたら喉に何か異常があるんじゃないかと思って触ってみたんだが、特にこれといったしこりもなかった。まぁ医学何て勉強したこと無いからあんまし分かんないけどな」
だが俺は何百という人を解体してきたおかげで人の体の事はそこそこ詳しい。だからある程度なら体の変化も分かる。
「だから触ってたのか、ちゃんと意味があったんだな」
「あぁそうだ、だから俺の事を変な目で見るのは止めろ。後そう言う魔法に掛かったときは筆記も駄目なのか」
もし筆記が出来るのなら紙でも用意して書いてもらえるのだが……
「基本は駄目かな。ただ戦力を潰すだけならともかくこの人の場合は情報を洩らさない為の魔法だろうし、筆記させようとした暁には二度と両手が使えなくなると思うよ」
「だよなぁ……頷く位は出来るか?」
「う~ん、実際に試してみたら? 何も黙りたくて黙ってる訳じゃないだろうし」
確かにそれもそうだな。俺は女の方をまた見ると、女はすぐさま頭を縦に振りだした。
「頷くアピールをしたいのは分かるけど、そんなに勢いよくやらなくてもいいんじゃないかなぁ」
「何もしないよりはマシだ。さてと話を聞こうか、あんたは声を奪われてしまったで間違いないか?」
女は頷く。
「誰に奪われたかは流石に頷くだけじゃ分からないな」
奪われた相手が分かればいいんだけどな、それはまぁ良いか。それより聞きたいことは他にもある。
「俺たちの金を奪ったのは自分のためか?」
女は先程とは違い、弱々しく頷いた。
「それはあれか? 金がないからやってるのか?」
女は首をかしげた後、また弱々しく頷いた。
「その反応から見ると、他にも何かありそうだね」
「まさか、盗む事に楽しみを覚えてるじゃ無いだろうな」
佐藤の発言に女は頷いた。
「生きるためだけならともかく趣味で盗むのは駄目だろ。どうするエリ?」
佐藤の言葉にまたも泣き出しそうになった女。うん、やっぱり喉は正常に動いてるな。
「趣味なら仕方ないね、放してあげよう」
俺にとっては予想通りの反応に対して佐藤は驚いていた。
「いやだが盗みだぞ、一応は犯罪だからな」
「たかが盗みより俺達の方がでかい犯罪してるぞ」
佐藤は言葉を詰まらし、「もういい」と言った後大人しくなった。
「ま、そう言うことだし殺されはしないらしいぞ、良かったな。後、お前の声を失わせた奴分かったらついでに元に戻させた後殺しといてやるよ」
俺は女のロープをほどいた後、泣き疲れて立ち上がれない女の手を取り立ち上がらせた。
「まってクールさん。その人きっとお風呂とかろくに入ってないよね、何か体も臭いしさ。お風呂に入れてあげようよ、何で盗むことに快感を覚えたのか聞いてみたいし」
風呂か、そういえばもう夕方になるな、昼飯食いそびれたな。
「なら先入っててくれ、俺は自分の飯でも食べに行くよ」
「行ってらっしゃい、俺は何か疲れたから寝るよ」
さてと、今日はいつもより疲れたし沢山食べたいな、何処か人の集まってる場所はないかなっと……お、あそこは人が集まってるな、それじゃあ。
い・た・だ・き・ま・す
こうして、ラドロに永遠に語り継がれる事件。大量の血痕と歯と皮だけが残されて死体が何処にもないという「50人連続猟奇殺人事件」が生まれたのであった。
ハオルシア
性別 女
種族 エルフ
性癖 窃盗
肌の色は褐色で、髪は透き通るような白色をしている。身長は170㎝程でスレンダーな体型をしている。そこそこのビビりでよく泣く。
小さい頃に声を無くした事で魔法が使えなくなり追放されたエルフ。また、エルフのしきたりで追放されるエルフは特徴の一つである耳を人間と同じ長さまで切り落とした後耳の形を魔法で変化させるため見た目は人間と変わらなくなる。