ヘマトフィリア
クールを召喚し、勇者を倒すために仲間を探す旅に出て二日後……
「はぁ、もう一回山賊来ないかなぁ……」
「確かに武器と食料の確保は出来るが……そんなに来られても困る」
今度はちゃんと火で焼いた人肉を食べながら物騒な事を言う呟くクールに突っ込みをいれる俺、というのも、旅立って一日目に運悪く山賊の襲撃にあったのだが……その山賊共は今はクールのお腹とタッパーの中にいる。
「このタッパーもさ、もう少し容量あってもいいよね、何でこんだけしか入らないの?」
クールが俺の作ったタッパーの容量の少なさに不満を呟く。
「それ以上の容量はタッパーって言わない」
それとクールについて分かった事なのだがこいつは腹が減ると途端にアホになる、というより自分のことしか考えなくなる。山賊が来る前に人肉が無くなったクールに俺を食べられそうになった……今でも恐ろしい、タッパーではないが何か大きな入れ物は作った方が良いだろう、人肉もそろそろきれてきたし何処かで補充を……
「何で俺が人を殺すことなんて考えなきゃいけないんだよ……」
山賊の時と言い自分のためとはいえこの二日間で少し殺人に抵抗がなくなってきたんじゃないか、ヤバイぞ俺。
自分の将来が不安になってきたところで村が見えてきた、二日しかないのに久しぶりに感じるな……
「さてと、旨そうな人間はいるかな?」
「やめろ、騒ぎをおこすな」
こいつといたら村で休むことは出来ないんじゃないか?
「大丈夫、騒ぎはおこさないさ、上手く殺る」
「……せめてくずみたいな人間を選べよ」
そんな物騒な会話をしていると町に着いた、この大陸は全体的に治安がとても良いため人も心に余裕があるのかとても優しく、商人も安心して集まるので大陸の中で最も賑わっている……のだが。
「人が……いない……」
俺は余りの静けさに驚愕した。
「何か建物もしょぼいな……これじゃあ食料の確保は無理そうかな……」
おかしい、この場所は静かになりたくても静かになれない毎日がカーニバルな場所だったはず、何故こんなに静かに……
突然、遠くから男達の野太い悲鳴が響いた。俺とクールはすぐさま悲鳴の聞こえた場所まで走っていった。
「うぇ……なんじゃこりゃ」
一瞬嘔吐物が口まで這い上がってきたがそれを呑み込み何とか吐かずにすんだ、抵抗が出来てきたとしても流石にこれは無理だった。
「今日の晩御飯は贅沢が出来そうだな」
たどり着いた場所は広場だった。その広場の真ん中には、赤血球と思われる装飾がついたカチューシャと、暗い朱色のレトロワンピース……多分血が酸化したものだろう……を着た髪の短めの小さな女の子がこちらに背を向けて立っており、その回りには、沢山の男の死体の山が出来上がっていた。そして真ん中にいる少女はこちらの存在に気づいたのか、こちらに体を向けた。
「おじさん達だ~れ?」
「お、おじ……まぁいいか、俺は佐藤です」
「クール・ハンニバルだ、ここの肉全部食べてもいいか?」
辺りに散らばる死体に指を差しながらそう言うクール。流石だ、腹が減ってるせいで空気すら読めなくなってる……見ろよ、あの女の子も唖然としているよ。
「へ? た、食べるの? この人達……」
「あぁ、勿論な、お前も食うか?」
「やめろ、そんなもの食わせるな」
俺がクールの発言を突っ込むと、少女はクスクスと笑いだした。
「変なの~、こんな死体がある場所で血みどろになった私がいるのに私を倒そうとすらしないんだ」
「まぁ……俺たちはまだ君に襲われてないからな」
「あぁ、どちらかと言うと食料確保の協力に感謝するぐらいだぜ」
俺とクールがそう言うと、少女はまだクスクスと笑いながらこちらに近づいてくる。
「ふふっ、私エリ・フィアマット! 他人の血液が大好きな魔王と吸血鬼のハーフなの!」
「よろしくお願いします……ん? 魔王と吸血鬼のハーフ?」
「血液か……ちなみに俺は人肉が大好きないたって普通の人間だ」
何か今凄い事が聞こえた気が……
「ま、待て……魔王に娘がいたのか? しかもハーフの?」
「うんそうだよ、そして今からお父様を殺した勇者を倒しに行こうと思ってたんだ」
更に凄いことが聞こえた。
「お、本当か! 俺たちも勇者を倒そうとしてるんだ、一緒にいかないか?」
「え!? おい待てクール、勝手に話進め……」
「うん良いよ! これからよろしくね! クールさん、佐藤さん」
いやけど、もう良いよ。
こうして俺達の仲間に、魔王と吸血鬼の娘、エリ・フィアマットが加わることになった……俺は、今更になって勇者の専属にでもなっといた方が良かったんじゃないかと思い始めているのであった。
エリ・フィアマット
性別 女
種族 魔王と吸血鬼のハーフ
性癖 血液
見た目 血がこびりついたせいで暗い朱色のレトロワンピース(元は明るい赤)に、赤血球が沢山ついたカチューシャ、小学生位の身長
魔王の娘、勇者が来ているときには別の部屋に避難させられていたが、丁度勇者が魔王の胴体を袈裟斬りしたときを見てしまい、勇者に対しての恐怖心から来るドキドキを魔王から流れ出る血にドキドキしていると誤解してしまい、晴れて血液愛好家になった。魔法は全般得意だが、最近は風と土等の相手の皮膚を裂く技を中心で練習している。