ノーマフィリア
処女作ですので、至らない点がありましたらご了承ください。
佐藤を描いて貰いました、望月さんありがとうございます。
ここは五つの大陸でできている世界、フィリア。
大陸ごとには王様がいて、誰もが幸せに暮らしていました。ですがある時、大陸の真ん中にある大きな湖の中から、六つ目の大陸と共に魔王が現れて、皆の幸せを奪っていきました。
王様達は魔王の存在に困り果ててしまいました。そこで、王様達が自分の大陸から五人の英雄を選び、魔王を倒す旅に出させることにしました。
そして五人の英雄達は、出会いと別れを繰り返しながら各々で魔王の城に向かい、合流し、皆の力で魔王を倒し、世界に平和を取り戻しました。めでたしめでたし……これが今までの話だ、ここで本当に終わってくれれば良かったんだけどなぁ……
ん? あぁ、自己紹介がまだだったな。
俺の名前は佐藤、何かが原因で名前が思い出せず、神が俺に佐藤とつけたのでそのまま佐藤にした。
俺は神様同士のいざこざに巻き込まれて現実世界にいられなくなった珍しい少数派だ。ちなみに大多数のやつらはちゃんと死んだ奴等らしい。そんなわけで気づいたときには何だかよくわからない施設で座っていて、その時に偶然お一人様異世界居住権抽選に当たった為、この異世界へ移転したきたんだ。
こっちに来る前に良くある展開で、神様が能力を授けようとか言ってきたりもしたが……おっと、話がずれるところだった。今大事なのはそこじゃないんだ、そう、今大事なのは……
「国を寄越せ」
目の前の勇者についてだ。
別に国ぐらい良んじゃないかな? と思っただろ。だがこの世界の一つのルールとして前にも後にも王は国に一人という制度がある。最初、俺は何言ってんのか分からなかった。だがこの世界の勉強をしているうちにちゃんと理解した、ようは王様が新しく変わる時には、前の王様は死んでなくてはいけないらしい。まぁつまりあの勇者が王様に言っていることは。
「王様死んでくれない? 俺が代わりやるからさ」
こう言うことである。いくら魔王を倒した英雄とは言え、これには流石の王様も怒り狂うだろうな。
「何をいっておる! このばかたれが!」
案の定怒ってるいるな、五月蝿くてとても居られたものではないな……自作のタッパーにおかずを詰めてさっさと帰るとするか。
タッパーの中に好きなおかずを詰め込んでいると、今度は会場全体が五月蝿くなった。
今度は何だ。
流石に興味が湧いたので王様の方を向くと、王様の腹には勇者が背負っていた剣が突き刺さっていた。そして勇者が突き刺した剣を王様の腹から引き抜くと、王様の腹から大量の血が溢れ、床を赤色に染めていった。
おいおい、こいつ本当に勇者か? やってることがキチガイやDQNと同じじゃないか。
俺はめんどうごとはごめんなのですぐさま逃げようとするが、突然足元にナイフをこちらに投げつけられてしまい怯んで進めなかった。後ろを向くと、勇者が一直線にこちらに向かってきていた。先程のナイフもこの男だろう。
「おい、お前たしか俺の剣を作った奴だよな? そうだろ?」
「人違いではないでしょうか?」
「初めてあったときと同じこと言ってるから、お前だな」
やってしまった、村人Aの様に台詞の使い回しをするんじゃなかった。
話は変わるが、俺は神様からこちらに来る前に力を貰った。その力は全てのものを一瞬の内に作れるというものだ。まぁ材料は必要なんだがな。
そしてその能力の第一実験者が彼、勇者なのだ。ちなみに俺のこの世界での肩書きは伝説の鍛冶屋の孫だそうだ。嫌な肩書きを貰ってしまったな。
「お前の剣はあの魔王にも効くほど強い、そして果てしないほどの長旅に耐えるほどの耐久性、更に敵の落とす素材を入れれば強くなるこの独自の機能、お前は良くやってくれたよ」
「そうですか、作った者としては喜んでもらえたのなら見返りは不要ですので、それではこの辺で」
「だからお前を俺専属の鍛冶屋にしてやる、ありがたく思えよな」
俺は走って逃げだした。普通なら多分追い付かれるが、勇者は魔王との戦いで疲弊してるのと、俺の靴、鳥系の魔物の素材を使った足が早くなる靴のおかげで余裕で逃げ出すことができた。
~数分後~
「はぁ、はぁ、はぁ」
あんなに走ったのは久しぶりだ、流石に足がぷるぷるしている。しかしこれからどうするか。
残念なことに、俺は鉄のインゴットさえあれば一瞬の内に剣を作れるが、俺自身は剣を使うことが出来ないため戦うのは無理だろう。しかしこのままではすぐに勇者が力で脅した国の兵士達が追っ手で来るだろうし……
いや待てよ、確か神様が俺の戦闘力が微塵も無いことを知って、もし戦わなくてはいけない時が来てしまった場合はここに来いとか言ってた場所があったな。確か今いる大陸……勇の大陸の結構端の方にあったはず。かなり距離はあるがいくしかないだろう。
~数時間後~
「ゼーハーゼーハーゼーハ」
肺や足、というよりかは体全体が悲鳴をあげている。しかし苦労のかいあってか、夕日が出ている内に目的地にたどり着いた。 だか着いたはいいが特に何もない、本当にこの場所なのか?
(佐藤、あってるよ佐藤、聞こえるか?)
(いたのか)
「ちなみに俺のような移転者は担当になった神と会話出来るのだが、その時は心の声で喋ることになっている。だからこちらの音での声は聞こえないらしい」
(何喋ってんだ。だかまぁなんだ、お前もつくづく運がないな~ 運がさ。移転した異世界の勇者がまさかあんなイカれた奴とはな。俺からしたら面白いだけだがな)
(こいつぶちのめしてもらうかな、勇者に従う条件として)
(ははっ、冗談だよ。それよりここにきたってことは力欲しいんだろ)
(そうじゃなきゃこんな何もないところに来ない、いいからさっさと力を貸せ)
(結論から言わせてもらうと無理です。元々貸す予定の力は光の力だから、勇者に使ってもほぼ無意味なんだよね)
(いま思うと短い人生だった、これからは奴隷生活か)
(まぁまてよ、そんな慌てんなって。いつもの移転者ならまだしもお前はお一人様の抽選に当たったんだからな、貸せる力の種類もちゃんと選べるのよ)
(何だあるんじゃないか、まどろっこしい神め)
(ただ、な。俺が言うのも何だけど、光以外の力はかなりヤバいんだよな。前にお前と同じ抽選者に貸したことあるんだけどな、少し、いやかなりかな? 酷い目にあってたよ)
(もう今すでに酷い目にあってるんだ、これ以上何があるというんだ)
(あっそう? ならいいんだけどさ。それじゃあまずは、召喚すると同時に説明文を読ませてもらう)
(説明文?)
突然、何もない空間に禍々しい魔方陣が現れた。
(一、力は貸した後は全て自己負担です、当社は責任を負いません)
そして、魔方陣から出てきた六本の手が、近くにいたリスや鳥、森の中に潜んでいた熊やモンスター等を掴み、魔方陣の中に引きずり込んでいった。
(二、この召喚術はどちらかというと違法な召喚術に属しています)
こちらに手の一本が向かって来るが、偶然近くにいた大型の虫を投げつけるとそちらを掴み虫を魔方陣に取り込んだ。
(三、召喚術とは言いましたが、言うことを確実には聞いてくれません。あなたのトークスキルで目的を遂行させるように促して下さい。まぁこれで終わりだ、それじゃあな佐藤、死んだときはまたあちらで会おう)
そう言い残すして神は一目散に、まるで責任を放棄するかの様にその場からいなくなった。
全ての手が何かを掴んで戻ってきたと同時に、辺りが黒い光で包まれた。
「く、暗すぎて何も見えない……」
徐々に黒い光が収まり、いつもの光が辺りを包んでいくのに安堵の気持ちを感じたと同時に、魔方陣の真ん中辺りにいる人をみて、冷や汗が止まらなくなった。
「あ~、ここどこだ??」
見た目は肥満体系の185㎝位の男がいた。眼と髪が黒いが、髪は切っていないのか肩の所まで伸びていて、とてもボサボサしているため清潔が無い感じがする。
「ん、おぉ、お前」
服は暗褐色をベースに青色がランダムについていて、上と下が別々に別れている作業服を着ている。
いや、現実逃避は止めよう。多分だかあれば元々青色の服と思われる、ならあの暗褐色は何だと思う? あの色は子供の時によく鼻血を出していた為見覚えがある。多分あれは……
「こんなに不味そうな人間は初めてみたな」
酸化した血……だろうな。
これは、俺がこの世界でいつもの生活を取り戻すべく、渋々勇者とその仲間達をぶちのめしにいく話。先に言っておくがこの冒険は……
「俺はクール・ハンニバル、突然だか俺は腹が減っていてな。この辺に旨そうな人はいれば教えてくれるか?」
終わったとしても少しもめでたくはない。
佐藤
性別 男
種族 人間
性癖 普通
見た目 赤い髪をしているがそれ以外は何処にでもいそうな感じで、あえて言うなら疲労感と幸が薄い顔をしている。ダサTを愛用している。
異世界に移転させられた男、名前はわすれてしまったので佐藤と神に名付けられた。残念なことに正義感は余りなく自分の日常を守るためなら他人を見捨てることが出来る……というわけでもなく、何だかんだで少しは助けると言う中途半端な性格の持ち主。一応伝説の鍛冶屋の孫と言う設定で移転させられた。
クール・ハンニバル
性別 男
種族 人間
性癖 人食
見た目 身長は185㎝で肥満型の体型をしている。眼は黒く髪も黒い、服は作業服で元は青だか帰り血で暗褐色になっている。
佐藤が勇者を倒すために召喚した人食家、空腹が嫌いで腹が減ると大体自分の事しか考えられなくなり、自分の周りにいる旨そうな奴を食べようとする。腹さえ満たせば意外と話が通じる良い奴になる。