破、病院
「やってしまった」
「道に飛び出して猫を助けるのは百歩譲っていいとしましょう」
「おぉ」
「車の前に飛び出してケガをするなんてどうかしてる!」
「やってしまったモノはしょうがない」
「それで足をケガして花火大会に行けないなんて……」
「すまない」
「もう私は知らないからねっ!」
行ってしまった。
顔を青ざめてきた、明日お祭りに行く予定の友人が怒った。
怒られてもしょうがないか。
窓の外を見る。
あぁ、空が青い。
明日の花火大会は大成功するだろうな。
「すみません、ここにお姉さんはいますか?」
窓の外に艶やかな黒い髪が見える。
小さな子供の声が聞こえた。
窓枠に小さな手がかかる。
「あ、お姉さんっ!」
開いた窓から少年が入っていた。
「お姉さんっ!会いたかったっ!」
「君、誰?」
「お姉さんっ!お姉さんっ!」
ベッドに腰掛けていた私の身体に少年は飛びついてきた。
「落ち着こう、君はきっと人を間違えている」
「間違えないよっ! お姉さんみたいな人間違えるわけがないっ!」
うん、私みたいな変人はあまりいないだろう。
「お姉さん、お姉さんっ!」
「なんだい?」
「お姉さんは花火大会に行きたいの?」
「行きたいね、今さっき行く人いなくなっちゃったけど」
「あ、じゃあ、僕と一緒に行こうよっ!」
「足がこれじゃあちょっとムリだね」
さすがに事故に遭った直後は安静にしないといけない。
「……ダメ?」
「安静にしないと歩けなくなっちゃうかな」
「足が良くなれば僕と一緒に行ってくれるの?」
「足が治る頃には花火大会は終わってるよ」
「花火大会が始まる前に治れば?」
「行ってあげてもいいよ」
「本当に!?」
「行ってあげてもいいよ」
「わかったっ! 朝まで待って!」
「?」
「朝になったら迎えにくるからっ!」
「期待しないで待っているよ」