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序、事故
雨上がり、土の匂いが立ちのぼる。
ミミズが土から顔を出し、ムクドリがそれを追いかける。
土が剥き出しなあまり車が通らない道。
小さな黒猫が生け垣の下でムクドリを見つめていた。
のどかな光景……?
あのチビクロはムクドリを襲おうとしているのだろうか。
たぶんムクドリはチビクロに捕まることはないだろう。
位置どりが悪い。
私は軒先から水溜まりを見つめていた。
雨粒が落ちて出来る波紋は見えない。
もう雨は完全に上がったみたい。
私は長くつをはいて外に出た。
買い物をしないと。
明日の花火大会の準備まだ終わってない。
ミミズをくわえたムクドリに向かってチビクロは飛び出した。
カーブミラーに車の姿が映る。
チビクロはムクドリに夢中で気づいていないみたい。
体が思わず動いた。動きにくい長くつ。
ダメ、車を避けきれない。
私は走り込んだ勢いでチビクロのお腹の下に腕を入れる。
チビクロを庇いながら車に対して受け身をとった。
「がはっ!」
女の子らしくない声を出しながら、私は意識を飛ばした。
「花火大会に……行……き……たかっ……た……」