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 そんなオレたちの警戒態勢に驚いたユーリさんは、


「変なことをしたわけじゃないので安心してください。こうでもしないと今の状況では落着けないので寝かしつけただけですよ。寝て起きればすっかり忘れていますから、大丈夫です」


 と慌てた様子で寝かしつけた理由をオレたちへと話す。

 その方法はまるで今までもそうやって寝かしつけたことがあり、それが状況によっては最善の手であることが伝わってきた。そのため、オレたちはお互いに顔を見合わせた後、誰からともなく警戒態勢を解く。

 やっぱり聞かないことにはいけないか……。

 本来は聞いてはいけないことだったが、状況的にやはり聞いておくことが一番だと判断したオレは、


「ミリーニャ……さんの過去に何かあったんですか? やっぱりここまで敏感になるってことは何かあると思いますけど……」


 そのことを尋ねることにした。

 するとルクスとロベルトから睨み付けられる。

 それは先ほど話していたように、その質問はなるべくはしないという方向で決めていたのに、早速破ってしまったからだ。

 が、二人も本音としてはそのことを尋ねてたかったらしく、睨み付けるだけで文句を言ってくることはなかった。

 オレの質問に対し、ユーリさんはミリーニャをソファーの背もたれにもたれさせ、無理のない体勢にすると、右手を顎に置く。そして、質問されたことに答えてもいいのかどうかと表情からでも分かるように悩み始めてしまう。


「気になりますよね……」 


 そして、悩んだ末に発した言葉は確認の言葉だった。

 なんか、上手く返されたような気がする……。

 ここで意地を張れば、もしかしたら答えてくれたのかもしれない。そんな気はした。けれど、わざわざそれを確認してきたということは、『それをあまり言いたくない』ということ。つまり、拒否の気持ちが強いと言っているようなものだった。


「いえ、無理に言わなくても大丈夫です。元より聞いたらいけないプライベートなことだとは分かっていますから」


 最初から決めていた通り、言わなくていいことを伝える。

 その回答にユーリさんはホッとした様子でため息を溢し、ルクスとロベルトは軽蔑の視線をオレへ送ってくる。

 が、すぐにオレを裏切り、


「すみません、カイルのバカが失礼のことを聞いてしまって」


 とルクスが謝罪の言葉を入れる。まるで、最初から聞きたくなかったような雰囲気を出しながら。


「もっと空気を読んでよね。想像でミリーニャさんの過去に何かあったことぐらい分かるでしょ?」


 ロベルトもそれに乗っかり、オレへ対して注意を入れた。


「お気になさらないでください。きっと森の中でも似たような状況になり、それで気になったことぐらい察しが付きますから」


 オレがした質問やオレたちの様子から、そのことは筒抜けだったらしく、困ったように苦笑するユーリさん。それは仕方ないと言わんばかりのフォローだった。

 ユーリさんまでもがそんな反応をしてきたため、


「なんかすみません。これからは気を付けます」


 とオレは素直に謝ることにした。そうでもしなければ、なんとなく味気が悪いような気がしたからだ。

 そして、これでこの話題を終わらせようとユーリさんは手を一回叩く。そして、ゆっくりと立ち上がった。


「これ以上、お互いのことを詮索するのはやめておきましょう。それはきっと一緒の部屋にいるだけで気になってしまう。だから、みなさんが使う部屋に案内することにします。いいですね?」


 そう言って、オレたちとは距離を置くことを宣言した。

 オレたちもまたその通りだと思い、三人ともそれぞれに頷く。そして、ルクスが立ち上がったのを合図に、オレとロベルトも立ち上がった。


「それでは案内しますね。ミリーニャは……すぐに戻って来るからこのままでいいでしょう」


 オレたちが立ち上がったのを確認し、一度頷いた後、ミリーニャを見る。が、長話をするつもりもないため、このままリビングに放置しておくことを決め、ゆっくりと歩き始める。

 オレたちはその後を無言で付いて歩いた。

 話しかけたら、きっとユーリさんは答えてくれただろう。けれど、先ほどの発言で言われた通り、話しかけることはやめておいた。なぜなら、今日一泊したら関わり合いがなくなる。改めて、そのことを自覚したからだった。


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