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洗礼の儀、後編です。

赤い絨毯が祭壇まで続き、そこをサウス司祭の先導で歩く。

病弱だった面影は肌の白さに残るものの、筋力は力の神の恩恵か回復するのが早かった。

背すじを伸ばし周りを意識して歩くだけで、招待客から感嘆の声が聞こえる。前世でもなぜか生徒会長とかさせられたし、人前に出ることに慣れてるせいか緊張はない。

祭壇に着くとサウス司祭はゆっくり振り向き、俺を見ると満足そうに頷く。どうやら合格点もらえたらしい。

一番前の列に座る王族…家族達は、なぜか皆号泣してる。なぜ?落ち着こうよ、特に父様…。


「それでは【世界の神々より受けし祝福を、これに写し明らかにせんと願う】クラウス・ドライ・エルトーデに神々の祝福を」


歌うように神聖魔法を唱えるサウス司祭の心地よいテノールが響き渡り、記録紙に光が集まると細長くなり文字が打ち込まれていく。タイプライターみたいだな。

打ち込まれるステータスは、隠していない俺本来のものだ。

記録紙を見つめるサウス司祭の顔がどんどん青ざめていくのが分かる。俺だけは分かってしまう。


……うん。たぶん俺の加護の多さに引いてるんだろうな。マジすんません!


顔色は変わったものの、何事もなかったように記録紙を持ち、朗々と読み上げる。さすがプロだ。

俺は片膝をついて目を閉じ、ついでにステータス確認をしてみる。

おい。ちょっと待て。なんか加護増えてない?

美の神なんて、無かったよね?おかしいよね?


「クラウス・ドライ・エルトーデは、知識の神の加護の元、全ての属性魔法を会得し、『強き魂を持つ者』として王国随一の魔法使いになれる資質を持っております」


サウス司祭は読み終わると、王と王妃に確認させるため記録紙を渡す。

泣きながら読む二人。

嬉しいのは分かったから泣き止んでー。

嬉しいけどちょっと恥ずかしいんですけどー。


全属性の魔法を使えるというところで招待客…とくに貴族達はざわついていたけど、王族は比較的強い魔力を持つ者が多いため「王族だから」ということで、騒ぎになる事なく落ち着いた。

やはり全属性はレアだったか…。

儀式が終わって、再びサウス司祭に先導され控え室に戻る途中、記録紙を見せてもらった。

記録紙には、魔法・加護・適性職業が一つずつ記載されている。ほっとした。

この人には頭が上がらないな…。


「クラウス王子、ひとつ聞いて良いですか?」


「どうぞ」


「……貴方は神々から何を、何をしろと?」


ずっと穏やかな話し方だった彼にしては、珍しく性急な問い方だと思った。

まぁ、それくらい俺のステータスが衝撃的だったんだろう。普通じゃないもんな。

俺は少し迷ったが、正直に答えることにした。


「ただ『勇者の助けになれ』と」


それに対して面倒だと言い返したとは、決して言わない。言えない。


「勇者?おとぎ話のですか?」


そう。

この世界では子供に聞かせる昔話みたいなやつで、『銀髪の勇者』という物語がある。

魔王が出てきて勇者が倒す〜みたいなアレだ。


「その勇者かは分からない。まだ生まれてないようだったけど…」


「そう、ですか」


しばらく無言のサウス司祭。柔和な顔がピンと張りつめた厳しい表情になっている。

どうやら俺が神から言われたことは、かなり重要だったようだ。

不安そうな顔をする俺に、サウス司祭はニコリと笑顔を向ける。


「洗礼の儀を前に、実は国王様と宰相様と話し合ったことがあるのです」


「え?父様と?」


「エルトーデ王立学園に通ってみませんか?今ならセシリアも付けますし」


なんだか九州方面の社長のセールストークみたいな事を言われたぞ。

ん?学園?……学校!?



「はぁ!?」







お読みいただき、ありがとうございます!

次回は成長&学園編に突入予定です!

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