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洗礼の儀、前編です。

『洗礼の儀』当日。


俺は儀礼用の服を着させられ、その窮屈さにグッタリしていた。

病弱な三男とはいえ王族。権威を表すためには服装も重要なのだ…と、前世の浅い知識で思った。


鏡の前に立つ。

騎士服のような礼服は濃紺の詰襟で金糸で縁取りされている。ふんだんにあしらったダイヤの飾りが胸元で光っている。エルトーデ王国の象徴である獅子のモチーフのブローチだ。白いズボンに黒いブーツ、これに儀礼用の剣を携えれば完成形だ。

それに加え、明るいオレンジの髪に黄金色の瞳、前世の面影残る整った顔。

むむむ。将来有望…に見えるかな?

王家の『洗礼の儀』には身内だけではなく、国の有力者、伯爵以上の貴族、軍関係者、著名人等が参加するそうだ。

これに招待されるということは名誉であると考える人も多く、洗礼後にステータス公開があるが、結果次第で王家にどう取り入ろうかと画策する輩が増える。……たぶん。

俺の場合、病弱アピール半端なかったから、今回の儀式の後に城で行われる舞踏会を本命とする人の方が多いだろう。




城から馬車で、王都の大聖堂へ行く。

エルトーデ王国の中で一番大きな教会で、観光名所になるほどに有名な建物だ。

そんな中、控え室に俺は緊張のひと時を過ごしている。


「はぁ…ステータス公開したら大騒ぎになるよなぁ…」


ノンストップため息だ。俺は今、騒ぎになってる場合じゃないんだよな。

俺は勇者の補佐とやらをしなきゃいけないわけで、勇者っつったら魔王と戦うわけで、死亡フラグ回避のためには知恵と力をつけないといけないんだよね。


────コンコン


「ん?はい、どうぞ」


「失礼いたします。本日の儀式を仕切らせていただきます、サウス・ウィンスターにございます」


「サウス司祭!」


以前見た時と変わらぬ慈愛に満ちた空色の瞳を細めて、サウス司祭は俺に向かって丁寧にお辞儀をした。

仕切るって……ってことは、この人が俺のステータスを見るのか……。

ぎこちなく笑顔を浮かべる俺を見ると、サウス司祭はボソボソと何かを呟く。室内に何か圧力みたいなものを感じる……空気の流れが止まった?


「ご安心くださいクラウス王子、音を神力で遮断しております。ここは教会ですから、多少の神力ならば使用しても周りにバレません」


サウス司祭から嫌な感じはしないから、たぶん大丈夫な気がする。たぶんというか絶対かもしれない。

彼の神力から慈愛の神の気配がしたからだ。


「……で、こうまでして何を話すつもりで?」


意識してサウス司祭の目を見る。そんな俺を見てクスッと笑うと、神官服の袖から一枚の紙を取り出した。


「これが本日クラウス王子のステータスを写す記録紙です。特別製の」


「特別製?王族用ということ?」


「いいえ『貴方のため』ですよ」


俺はサウス司祭をじっと見ると、自然と視線に魔力が纏うのを感じる。鑑定魔法────自分にとって味方であるかの是非を問う魔法を発動させる。サウス司祭の周りが白く光る。

これは本に書いてあった「人のオーラで感情を見分ける」からヒントを得た、俺のオリジナル魔法だ。ちなみに悪意を持っていると黒い色が出る。


「分かっていただけましたか?」


魔法を使ったのが分かったらしい。かなり少ない魔力の動きを読めるって、この人かなりすごい人なんじゃ……。


「疑ってすみません」


「構いません。むしろそれくらい慎重であるべきですよ」


微笑むサウス司祭。なんかこの人が味方で良かったかも。敵にしたらヤバい気がする。


「では、この紙について説明しますね。これに写すステータスは『一項目一つだけ表示』します」


「!!」


それって…俺のステータスが『一部』だけ公開されるってことか!?

一気に気持ちが明るくなる俺に気付いたのか、サウス司祭はいたずらする子供のように笑う。


「その代わりと言っては何ですが、私には本当のステータスが見られてしまいますけど…もちろん周りには言いませんよ」


「それで充分です。ありがとうございます」


「あとこの指輪を。これは一見普通の指輪ですが、身につけてこの宝石の部分を回すと『髪と目の色が変わる』古代の魔法が込められてるアイテムです」


「えぇ!?そんな貴重な…」


「これはとある方から貴方へ、有効活用できる者が持つべきだと」


「……」


確かにこれは必要だ。

これがあれば、かなり行動範囲が広くなる。なんかあれだけ悩んでたのに、あっという間に解決するとか……ちょっと腑に落ちない。まぁ結果オーライっつーことで、良しとしよう。



「さて、そろそろ時間ですね。クラウス第三王子殿下、ご案内しますよ」








お読みいただき、ありがとうございます!

次回は王子無双…?

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