新学期です。
不定期ですみません!
新学期、邪竜を討伐したオルは、国から表彰される事となった。
男爵の位を貰い、オルフェウス・ガードナーとして、正式に俺の護衛となったのだ。
そこに父様と母様の息子可愛さな何かがあった事は、想像に難くない。
「貴族なんて面倒くせぇ」
「しょうがないでしょ、これなら僕と一緒にいる理由がつけやすくなる」
冒険者ランクも国内初のSSランクとなり、普通の冒険者のように依頼をこなす必要がなくなった為、国の有事でしか動かない存在となったオルは、教室でウダウダ俺に愚痴を言っている。
ちなみに今の国の有事は、俺の護衛をする事だ。過保護だ。
「冒険者として動けねーなら、お前の護衛が終わったら傭兵にでもなろうかな」
「とりあえず、騎士団の兵力を底上げしてからにしてよ」
「お前のその病弱キャラっていつまでやるの?」
「王位継承権を破棄するまでかな」
「……大変だな、お前」
ちなみに、今までの会話は空間魔法で音を漏らさないようにしている。周りからは机でウダウダするオルと、隣で苦笑いしている俺しか見えないだろう。
「クラウス様、北の竜の長が王都に来るそうです。国王様と謁見する際に、クラウス様とオル様も登城するようにと。謁見は一週間後です」
「うが、面倒くせぇ!」
「オルフェウス殿には、私から貴族の何たるかを叩き込みましょう。貴殿の恥はクラウス様の恥となる事をお忘れなく」
「うぐ…しょうがねぇ、頼むわ」
短い黒髪をガシガシかきながらも素直なオルに、俺はびっくりして見つめる。
「なんだよ、俺だってクラウスの事を考えてんだよ。……仲間だろが」
少し赤くなって語尾が小さくなっていくオルに、俺は嬉しくなってにやけてしまう。ヤバい、こういうのって嬉しい。
「ありがとう、オル、ギュンター」
にやけながらも礼を言うと、二人とも顔を真っ赤にしている。
俺の影で栗色が「これが沙耶ちゃんの言ってた『尊い』なのね……」と呟いてるが、マジなんなの、怖いよ。
一週間後、俺たちは王城に来ていた。
父様と母様は、夏休みに帰って来なかった俺に、いたくご立腹だった。
だけど、城に戻らなかったのは理由がある。二姉様がいたからだ。
二姉様は俺を敵視していて、それは年々強くなっているようだ。学校は別だし休みに俺は帰らないから小康状態ではあるが、ギュンター曰く「逸脱した嫌がらせ」を計画していたりしてるらしい。内容は聞いていないけど、地味に怖い。
俺は勇者と魔王を倒すためにこの世界にいるし、何より今はマイコがいるから絶対に生き残らないとダメだ。
そんな二姉様と今日は会わざるを得ない。
(大丈夫、今の俺には皆がいる)
気合を入れた俺は謁見の間に向かった。
「父様、母様、兄様達、姉様、お久しぶりです」
「久しぶりだなクラウス、少し顔色が良くなってきたな」
「学校を楽しんでいるようで何よりだ」
金髪金眼の一兄様ミヒャエルと、青髪金眼の二兄様クリストハルトだ。
「……」
一姉様は他国に嫁いだからここには居ないが、橙髪碧眼の二姉様シャルロッテは無言で俺を睨みつけている。いかにも我儘お嬢様という外見の為、俺を睨む姿も堂に行ったものだ。やれやれ。
「おかえりクラウス、そして護衛の任務ご苦労だオルフェウス」
「ただいま戻りました」
「恐縮です」
オルは無難に返答していた。偉いぞ。
父様と正妃の母様、第二妃も玉座に並んで座っている。
母様は涙目だ。うん。なかなか帰れなくてごめん。
「では子達よ、それぞれの母の元に。北の竜の長を謁見の間に迎える」
俺たちは両側に分かれて座る。二姉様は相変わらず無言だ。ここまで嫌われてしまうものなのだろうか。俺はひっそりため息をつく。
呼び出しとともにフードをかぶった三人の男性が玉座近くまで進む。
真ん中の男性は立ったまま、両脇の男性は片膝をついた。
三人は一斉にフードを外す。赤、白、青で、真ん中の白が長っぽい。
青い竜人が朗々と口上を行う。
「この度、我ら竜族は、そちらの第三王子クラウス様にお会いしたく参った次第」
…………へ!?
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