改めて自己紹介です。
「は、初めまして、吟遊詩人サンダルフォンの弟子、マイコと申します」
基本人見知りであろうマイコは、少し顔を赤らめながらも自己紹介をして優雅にお辞儀をした。吟遊詩人として礼儀を叩き込まれたのかもしれない。この世界に来てからの彼女の苦労を思うと、胸がぎゅっと掴まれるような気持ちになった。
落ち着いた所で、俺たちはサウス司祭の執務室で話し合うことになった。
泣いたり公開チューしたりと思い出すだに恥ずかしい……まぁマイコと会えたから、結果オーライで良いよね。オルのニヤニヤ笑いがムカつくけどね。
「マイコさんですか。失礼ですがクラウス様とは……」
ギュンターは片眼鏡をくいっと上げながら問う。
マイコは俺を見る。うん。今は同じくらいの身長だけど、すぐ抜くからな……じゃなくて、これは俺から説明しようかな。
「ええと、とりあえず僕のスキルを見てもらうよ。サウス司祭、頼むよ」
「かしこまりました」
一瞬こちらを見たサウス司祭は、俺の目を見て何かを悟ってくれたのか快く了承してくれた。
神言を唱え一枚の紙に俺のステータスを印字する。
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名前:クラウス・ドライ・エルトーデ
年齢:10
レベル:35 冒険者ランクC、エルトーデ王国第三王子
HP:5,230
MP:25,460
魔法:属性魔法(光、闇、風、土、水、火、氷、雷)、空間魔法、鑑定魔法
加護:知恵の神、生命の神、渡りの神、ガイアの神、豊穣の神、勇気の神、力の神、美の神、楽の神、慈愛の神、
称号:強き魂を持つ者、理を持つ者、万能の使い手
適正職業:魔法使い、魔道具技師、賢者
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「加護すげーな」
「こ、ここまでとは…」
「……」
「天使様…」
オルは素直に感心してたけど、お前も武と力と生命と技巧とかの神がついてるぞ。
ってゆか技巧の神ってなんだよ。俺も欲しいよ。
セシリアは後でギュンターからお仕置きだな。
「こんな状態になっているのは理由がある。俺には使命がある」
「使命……ですか?」
「俺は違う世界から来た魂を持っている。そしてその世界にマイコも居た」
「「ええ!?」」
ギュンターとセシリアは声を上げて驚いた。オルは黙ったままだ。
さすがのサウス司祭も驚いている。
「私は元の世界で宮…クラウス様に命を救っていただきました。その時クラウス様は命を失い……私は神様からクラウス様の使命を聞き、助けになりたいと世界を渡ってここにいます」
「マイコ…やっぱりそうだったんだね。僕は君が生きてればそれで良かったのに…」
「いえ、どちらにせよ、私も強い魂を持っていましたから、ここに来るようになっていたと思います」
そうだったのか。ちくしょう魂の仕分けしてる神の奴、かなりイラつくな。
「あの、クラウス様の使命って…」
「僕の使命はね、魔王と戦うことだよ」
「マジか」
「なるほど、それでマイコさんは魔族を調べていたと」
さすがに顔色を失うオル。ギュンターは事態を冷静に見て、マイコの事を分析している。
「お、お父様は知っていたのですか!?」
「ああ、少しだけね」
セシリアはなぜか悔しそうだ。お父さんとは仲良くしなきゃダメだぞ。
「魔族の動きは分かりませんでしたが、凶暴化する魔獣が少しずつ増えているようです。半年ですが三つほど国を巡り、今は王都で情報を集めるべきだと戻ってきました。
私はこちらの世界の知識を深めるために、師匠の助言で学園に通う事にしたのです……クラウス様を見守るというのもありましたし……」
「マイコちゃん、頑張ったんだね!」
「ありがとうセシリアちゃん、嬉しい」
涙ながらに抱き合う美少女二人。うん。目の保養だ。
「クラウス、目がエロいぞ」
「うるさいよオル」
揶揄するオルを一蹴し、俺はサウス司祭に目を向ける。
「そういう訳だから、オルとマイコも協力者として加える。今はとにかく力をつけて備えなければならない。サウス司祭も協力してくれると助かるかな」
サウス司祭は空色の瞳を鋭く光らせて、俺を射抜くように見た。もちろん俺も負けない。マイコだっている。死ぬわけにはいかないんだ。
ふと視線が緩む。
柔らかな微笑みを浮かべたサウス司祭は「御心のままに」とゆっくり頭を下げたのだった。
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