長男から三男になりました。
本日二話目の投稿です。
「んー…」
目が覚めると知らない…いや、知っている天井。いや、天蓋付きのベッドだから天井は見えない。
クラウス・ドライ・エルトーデ。
彼は…いや、俺はエルトーデ王国の第三王子だ。
王子…俺が王子様…なんか恥ずかしいな。元の記憶から恥ずかしさが込み上げてくる。うう。
ドライって、ドイツ語で三って意味だよな。まぁいいけど。
クラウスは勤勉な王子だったみたいで、六才にして文字の読み書きも出来る。
元の俺の記憶もあるから、合わせればかなりの秀才っぷりを発揮できるだろうな。
よいしょと起き上がると、ガシャンと食器が落ちる音がした。
「ク、クラウス王子殿下!!起き上がってらっしゃる!!」
五十代くらいの女性…女中のマリエが悲鳴をあげた。
お、おう…なんかすげービックリされてるなぁ。あ、そか。俺って生死の境を彷徨ってたんだったっけ。
原因不明の高熱が続いて、もうダメだって医者も諦めてたような記憶があるな…。
「クラウス!!」
「おお!!クラウスよ!!」
ものすごい美女…橙に近い赤い髪の王妃と、オレンジの髪のフェロモンだだ漏れなイケメン王が駆け込んできた。カラフルな美男美女に、なんか目がチカチカするわー。
でも、愛されてる感半端ない。
二人とも号泣してるし、俺もクラウスの記憶から嬉しい感情が溢れてくる。
「もう大丈夫です。父様、母様。私は強くなります」
「クラウス?」
俺を抱きしめて泣いていた母様は不思議そうな顔をした。
クラウスは体が弱くしょっちゅう寝込んでいたから、その反応はしょうがないかもしれない。それでも安心させたくて、俺は、クラウスは言いたかった。
父様は驚いた顔をしていたが、俺の顔を見て真面目な顔になった。
「クラウス…そうか。加護を受けたのだな」
「まぁ、加護を?」
「死線を乗り越えたものは、神様に会った者が多い。クラウスも何かしら恩恵を受けたのかもしれぬ」
さすが王様。物知りだな。
まぁ、恩恵なのかはよく分からないけど…あとでステータスを確認してみるか。渡りの神がいつでも見れるって言ってたからな。
この世界では、七才になると教会で洗礼を受ける。
そこで個々のステータスを確認する。
普通はそこで適正職業とかを見て学校行くとか、どこぞの職人に弟子入りするとか、武を極める為に道場に入るとかあるけど、王族はそうはいかない。『洗礼の儀』として、国民に公開されるのだ。
クラウスもそこまで記憶してないけど、兄姉達も何かしらの加護を持っていたような気がする。
「クラウスはもしかすると加護が一つではないやもしれぬ」
「すごいわクラウス!一ヶ月後の洗礼の儀が待ち遠しいわ!」
「二神の加護ならば、先王以来の快挙だぞ!クラウス!」
へ…?
ちょ、待て。マジか。
渡りの神は景気良く神の名を羅列していたぞ?
「と、父様、二つ神様の加護があると、すごいんですか?」
「ああ、どこぞの領地で一人多神の加護があったという噂があるが、二神の加護は極めて稀だな」
……おい。早速ピンチじゃねーか。
これで二つどころじゃない神の加護のことが広まったらどうなる?
今までは病弱だってのもあったから、特に問題視されてなかったが、これはマジヤバイだろ。
最悪お家騒動だ。世継ぎに関しての。
王には妃が二人いる。
妃は仲が良く、その子供同士も仲が良い。
ところが順番が問題だ。
第一王女と第二王女は正妃の子、第一王子と第二王子は二妃の子で、俺は正妃の子なのだ。
クラウスが病弱だったから次期国王は第一王子と見なされていたが、これからは元気いっぱいになってしまう俺。さらに多神の加護があると分かってしまったら……。
いやだ。面倒くさい。王になるなんて死んでもごめんだ。一回死んでるけど。
王は一兄様で充分だ。カリスマもあるし、ザ・王子様って感じだし。
それに俺は勇者の補佐をするという、とにかくこれだけはやっとけと言われた使命がある。
ううむ。
どうしてくれようか。
お読みくださいましてありがとうございます。
感想など頂けると嬉しいです。
三作目の小説で、まだまだ勉強中…よろしくお願いします。