冒険者登録は適当です。
エルトーデ王国だけではなく、近隣諸国にも『冒険者ギルド』という組織は存在している。
国の機関では無く、利用客や登録している冒険者や、商人ギルド、薬師ギルド、鍛冶ギルド等々連携し運営費を賄っている……と思う。
ギルド同士で諍いがあると不利益にしかならないから、父様…国王自ら議長としてギルド長会議を月一くらいでやってるそうだ。他の国でも真似してると…そんな感じのギュンター情報だ。
さて、俺が冒険者として動きたいのはレベル上げもあるけど、やっぱり……異世界っつったらこれでしょ!?ってやつだ。
学生だから日帰りしか依頼をこなせないけど、雰囲気を味わうなら充分だろう。
ギュンターに頼んで買ってきてもらった服装一式と、サウス司祭からもらった指輪をはめてダイヤルを回し茶色の髪と瞳にする。他の色にも出来るけど、これが一番目立たない色だ。
土曜日の今日、休みを利用して王都の冒険者ギルドに行き、いよいよ冒険者登録をする予定だ。
セシリアは教会の手伝いとかで泣きながら出かけ、今回は男三人のお出かけになってしまった。
「そういえば、ギュンターは風魔法が得意みたいだけど、髪色から水とかも使えるんじゃない?」
「はい。よくお分かりになりましたね」
「属性が髪色に反映することもあるって、本に書いてあったからね。水は冒険には必須だからパーティに一人は欲しいよね」
「クラウス様は全属性使われるんですよね?」
「全属性!?」
「あれ?言ってなかったかな?知恵の神の加護があるからか、魔法は得意なんだよ」
「加護とかそういう問題じゃねぇだろ…」
なぜか呆れた顔のオルフェウス。そんなお前だって加護あり過ぎだろ?まだ見てないけど…一応そこは弁えているからね。
そんなやり取りをしながら歩いていると、冒険者ギルドに到着した。意外と学園から近い。これは午後抜け出して依頼… …とかも出来るかもな。
石造りの建物だけど、中は壁も床も木でできている。石よりは温かみがあって良い感じだ。
「登録は時間かかるのかな?」
「カードの情報は名前と年齢と特技くらいなんですけど、本人にしか使えないように術式を組むのが時間がかかるみたいです。三時間くらいですかね」
「そんなに!?面倒だな…しょうがないか。
登録には偽名は使わず、クラウス、平民12歳、特技は火と土の魔法にしよう」
適当に登録用紙に記入して、受付箱に入れて三時間待つ…待つ…長いな…
カードをすぐ作れる魔道具とかないのかな…自分の強化が終わったら魔道具を勉強しようかな。
「よし、待ってる間に訓練場で約束の手合わせしよう。お前の力を見せてくれるんだろ?」
ニヤリと笑うオルフェウス。
そう。友人…仲間になってもらう返事は、俺の力量を確かめてからだと言われた。
対人戦なんて近所の道場に通って以来だから、三年はブランクあるなぁ。クラウスになってからだと初めてだ。
「クラウス様、やはり私が…」
「大丈夫だよギュンター、さすがに本気は出さないでしょ?」
「当り前だろ。護衛対象怪我させてどーすんだよ」
「ま、独学で訓練してきたつもりだから頑張るさ。胸を借りるよオルフェウス」
ギルドの受付を抜けた裏手に、テニスコート二つ分の空き地があり、横にあるテントに訓練用の武器が置いてあった。
幸いにも人が居ない。よし、色々出来るな。
オルフェウスは剣と盾を取り、俺は持ってた杖を装備する。魔法使いといえば杖でしょ。
場内の真ん中で向かい合う。
「では私が審判をします。魔法は身体強化のみ。急所への寸止めで勝負を決めます」
「お願いします!」
ペコリとお辞儀して顔をあげると、オルフェウスがびっくりした顔をしていた。
「おい、俺は平民だぞ?王族が頭を下げるとか…」
「ん?手合わせするんだから、お願いしなきゃでしょ?」
あれ、こっちはそういうの無いの?道場のノリだったけど駄目だった?
ギュンターを見ると、目がキラキラしてる。うん。駄目だった。
「…………分かった。俺からもお願いする」
なんか分からないけど納得したみたいで良かった。こっちの事をもっと学ばないとな…
オルフェウスもお辞儀をすると、左身を前に出して構えた。
俺も息を吐くと、両腕をだらりと下げて杖を軽く握る。
「始め!!」
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