部下と友達は違うのです。
騒つく教室は、教師の登場で即静かになった。
綺麗な藍色の髪をきつく結んだ、真面目そうな女性教師が教卓につく。凄く一部が強調されてるスタイルだ。学園は天国だったのかもしれない。
「初めまして諸君。初日から騒がしい奴がいて申し訳ない。あの者は然るべき処罰を与え、二度とここに来れないようにしたから安心してくれ」
おおう、まさかの軍隊口調。もしや…
「私は近衛隊所属、上級騎士のリアージュ・オクトマンだ。気軽にリア先生と呼んでくれ」
担任は俺の護衛も兼ねてそうだな…これはあまり好き勝手出来ないか?
クラスメイトの自己紹介も終わり、授業が始まる。うん。暇。座学はほとんどマスターしちゃったからなぁ。
俺の席は一番後ろの窓側で、オルフェウスは俺の前、ギュンターは俺の右、セシリアはギュンターの前に座っている。
この布陣……もしや……ま、いっか。
昼になって食堂に行く。基本皆同じになっているけど、衝立があって別スペースのようになっている席があり、兄様たちも在学中はここで食べてたという所を陣取る。情報提供元は勿論ギュンターだ。
食事は基本ビュッフェスタイル、いわゆる食べ放題だ。
成長期の生徒には非常に嬉しいシステムだよな。俺は密かに食料を亜空間収納し後から食べるようにして、この場は少食を装う。面倒だがしょうがない。
オルフェウスはガツガツ食べている。
セシリアは女子生徒に混ざって食べている。友人がいるようで何よりだ。
ギュンターはいつの間にか食べ終わっていて、俺にお茶を入れている。一緒に食べ始めたのを見たような気がするんだけど…幻覚?
「なぁ、お前」
「クラウスだよ」
「クラウス、お前本当は何歳だ?」
不意に風が吹き抜け、オルフェウスの前髪を数本切った。
全く動かない彼をじっと見るギュンター。っつか、お前それかなり危険だったぞ?オルフェウスだから良かったけど…
「なぜ避けなかったのです?」
「殺気がなかったからな。なぜ攻撃魔法を飛ばしたかは知らねぇが」
「粗雑な口調は友人ですから見逃しますが、クラウス様の敵とあらば容赦致しません」
「大丈夫だよギュンター。確かに十歳にしてはおかしな行動をしていると思うよ。そして彼はたぶんギルドの依頼で来ている私の護衛だろうから」
「……なぜそう思った?」
「君の性格から見ると、確実に私と関わりたくないと思うタイプだ。でも『得るものがある』んだろう?
交換条件が何かは知らないけれど、君にとって有益な物なのだろうね。
さらに教室で前の席に座りつつ、微弱な警戒を放っていたね。さすがに分かってしまうよ。
まぁ、それを知った上で君を側に置くのは、お願いを聞いて欲しいんだ。友人として……ね」
「お願い?」
「そう。冒険者登録をしたいんだ」
「はぁ!?」
「クラウス様!?」
「私にとって必要なんだ。あと武術も教えて欲しい。その代わり魔力操作を教えよう」
「俺は攻撃魔法を使えねぇ。魔力は強えぇけど肉体強化だけだ」
「それがさらに研鑽出来るとしたら?君にとっても有益すぎると思うよ?もちろんギルドには君が『王子の護衛依頼中』だということを知らない事にしておく」
「……」
「ま、返事は明日で良いよ。さ、午後の授業に行こうか」
これだけ好条件を出したんだ、たぶんオルフェウスは受けてくれるだろう。
あとは……ギュンターの説得かな……。
午後の授業も終わり部屋に戻ると、セシリアは早速お茶を淹れてくれる。うん。美味い。
ちなみにオルフェウスは隣の部屋だった。これなら連絡とりやすいな。
お茶を飲むと、脇で控えてたギュンターがため息をついた。
「仕方ないですね。こんな事もあろうかと冒険者登録しておいて良かったです。まだランクDですが」
「ええっ!?」
「ふぇっ!ギュンターさんが冒険者!?」
「市井や他国の情報を集めるには、冒険者か商人かと思いまして。風魔法の訓練がてら魔物を倒し、冒険者として情報を集めつつ、クラウス様に仕える準備をしておりました」
「お前…すごいな…」
「すごいです…セシリアは受験勉強だけで手一杯でした…」
「恐れ入ります」
しょんぼりするセシリアの頭を撫でつつ、明日オルフェウスはどう答えるか楽しみだと考える。
とにかく俺は強くならなきゃいけない。勇者と魔王の戦いで生き残るために。
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