友達が出来ました。
ギュンターのナビによって、セシリアと共に教室に向かう。
その間もボンヤリとは歩けない。気品溢れる王族の行動をとるべく姿勢正しく歩く。声をかけられれば微笑み返すし、色々なお誘いは感じ良く躱しつつ病弱アピールする。俺でこんな人気だから、一兄様も二兄様も大変だったろうな…と思う。
二人とも学校は卒業してて、授業参観は絶対行くと豪語してた。兄様達には可愛がられている俺。
ちなみに一姉様は隣国に嫁に行ってしまったが小さい頃には可愛がってもらってた記憶がある。そして二姉様からは敵視されている。一つ違いの姉なんだけど、両親の愛が病弱だった俺に行き過ぎてたせいで、すっかりワガママかまってちゃんに育ってしまった。
学校は違うから離れていれば大丈夫だろうと思う。真っ直ぐ育って欲しいものだ。
「忘れてた。アンニュイ顔をするのを」
「あんにゅい?ですか?」
セシリアが首をちょこんと傾げる。安定の可愛さだな…俺はロリコンじゃないから何も感じないけど。
するとそこに都合よく、数人のご令嬢が集まってきた。これで説明の手間が省けるね。
「あの…クラウス王子殿下、本日のお昼ご飯をご一緒させていただいてもよろしいですか?」
なんと、薄紫の髪に縦ロールの子がいた。初の縦ロールだ。
「すまない…今日は…」
儚げに微笑む俺。
君の誘いを断るなんて男として不甲斐ない的な。
それでも君を……いや、何でもない的な。
美の神に仕事をしてもらって「こんな自分を受け入れて見守って欲しい王子」を演出する。
うん。訳が分からないぞ。
「ああ!申し訳ございません!クラウス王子殿下の御心を乱すような…わたくし達を許してくださいませ!」
効いた。びっくりだ。
使えるぞアンニュイ王子スマイル。
「ああ、分かってくれてありがとう。私の事はクラウスと呼んで欲しい」
「クラウス様ぁ…」
ご令嬢達がメロメロになっている隙に、ギュンターが誘導し何とか教室に到着した。
これから毎朝だとキツイな……。
「本日確認できましたので、明日からは人目の少ない最短ルートでご案内します。セシリアも覚えるように」
「ふぁ、ふぁい!」
セシリア…俺に見惚れてたな…。
それよりもギュンターの能力高いな。加護をフル活用出来てる……俺も頑張ろう。
教室に入ると、席は決まっているようで皆静かに座っている。
普通クラス、上級クラス、特級クラスと分かれていて、俺たち三人はもちろん特級クラスだ。
特級クラスは貴族が多いけど、もちろん平民もいる。俺がいるから平民を差別するような奴はいない……と思いたかったが、どこにでもアホはいるもんだ。
「おい、お前何でここに居るんだよ。ここは貴族のクラスだ」
「……」
「しかもお前、何歳だよ。ぷぷっ」
「……」
黒髪の彼は、確かに他の生徒よりも年齢が高く見えた。だけどそれは関係ない。ここは何歳でも入れる学校だし、年齢で差別する者もいない。このアホを除いて。
「ギュンター」
「はい。彼はオルフェウス。平民ですがS級ランクの冒険者として名を馳せています。十八歳です」
「よし。彼を仲間にする」
「かしこまりました」
「……理由を聞かないのか?」
「クラウス様の崇高なるお考えに辿り着くのは不可能かと、私の考えと致しましては、彼はとても強い加護を受けているようですね」
「あの方も、クラウス様と同じ何かを感じます!もしや天使様…」
「それは彼に言うなよ、セシリア」
「はい、我慢です」
うん、やっぱり二人ともすごいな。
鑑定で見たところ、かなりの加護がある。俺ほどじゃないけど、武とか戦とかそこいらの神がわらわらいる。
アホはずっと喋っているが、そろそろ本気でウザくなってきたので近寄る。
オルフェウスを見ると、無表情で前を向いている。
「君、そろそろ授業が始まるから、席に……ん?君は普通クラスじゃないか。なぜここにいるのかな?」
「うるさい!俺は貴族なんだから特別クラスなんだよ!」
は?何だこいつ……アホ以下か?何でこんな奴が入学できたんだ?
「こいつクラウス王子殿下に…」
「アホだ…アホがいる…」
「それにしても、微動だにしない彼もすごい」
「あの筋肉…イイ…」
おい、最後の男子は大丈夫なのか?
それはともかくとして、これは本気を出すしかないな。
アホ男子の側に行き、コイツにしか見えないように顔を向ける。
「君、ちょっといい?」
秘儀、全開・王子スマイル・改!!!!
「ブォッハーーーー!!!!」
「おい!あいつ突然鼻血噴いたぞ!?」
「危ないんじゃないか!?殿下を見て興奮したとか!?」
「やだ…鼻血なんて…ヤラシイ…」
「……仲間か?」
おい、だから最後の奴は大丈夫なのかって話なんですけど…。
アホ男子は退場となった。……学園から。
さすがに不敬罪は免れないよね。人目も多かったし。あと裏口入学の疑いもあるそうだ。アホはアホだった。
無表情のままオルフェウスがこっちを向いた。
「おい」
「ん?何だい?」
「礼は言わない」
「いいよ。でも友達になってね。強制だ」
「はぁ?」
「私は王族だからね。ここで私に見つかったのが運の尽きだと思って、諦めるといい」
「や、別に。お前からは何か得られそうだ。だから別にいいぜ」
こうして俺は年上の友人を(強制的に)ゲットした。
お読みいただき、ありがとうございます!
王子スマイルの攻撃力たるや。




