優香と美優の学力
翌日、マネージャー二人と海生、幸隆の四人は昼休みにテストの問題を受け取るために学校の図書室に来ていた。
結局優香からも受け取ることにした海生。いくつかテストの問題を持ってきてくれた優香と美優にお礼を言う。
「優香先輩と美優先輩、わざわざ持って来てくれてありがとうございます」
幸隆もつられてお礼を言う。
「ありがとうございます」
「良い良い苦しゅうないおもてをあげい」
調子に乗って妙な言葉使いになる優香。
「昨日頭触らせてもらったから全然良い」
「くっ」
昨日のことを思い出し悦に浸る美優と、羞恥の顔に染まる幸隆。
それでも幸隆のテストのことを考えると素直に感謝の言葉が出る海生。
「はい。本当にありがとうございます優香先輩」
笑顔で返す海生に優香は少したじろいでしまう。
「お、おうそんな素直に言わないでよ照れるじゃんか……」
挨拶が済んだところでさっそくテストの問題を見てみる幸隆と海生。一つ目は理系のテストなのか、一問目にはこんな問題が書いてあった。
問一、次の図の器具の名称を答えなさい。
見てみると液体の体積を量るために用いられる縦に細長い円筒形の容器の図が書いてあった。
「あっ確かこれメスシリンダーってヤツですよね」
答えながら美優が出していた用紙の解答欄を見てみると、『ミセスリンダ』と書いてあった。誰だよ。
「あの…… 美優先輩これ……」
「あーいやそれね、何か響きは思い出せたんだけどなんだったかなーて考えてたらそんなん書いちゃってたんだ」
まぁ良いかと思い、同じ問題の優香の解答欄を見てみる。『メスシヌンダ』と書いてあった。女性全滅するの?
「あの…… 優香先輩これ……」
「あーそれね! 何か響きは思い出せたんだけどちゃんとした言葉にならなくてさーそしたら何か良いこと思いついちゃってさ! メスが滅んだ世界って素敵だなって思って」
それあんたも死んじゃうけど良いのか。
他のテストと一緒にいくつか回答を見てみると、めちゃくちゃな答えばかり。点数も30点前後のものばかりだった。ちなみに通天高校は35点から赤点らしいので、ほぼ赤点である。
「うん! じゃあ問題お借りします! 後は自分達で勉強するので大丈夫です! ありがとうございました!」
「えっ? 私達が勉強教えてあげるよ?」
美優が不思議そうな顔でこちらを眺める。
「いえ、これ以上先輩達のお手を煩わせるわけにもいかないんで、自分達のテスト勉強に励んでくださいまじで」
「え? う? そうわかった」
優香もしぶしぶといった感じに引き下がるがもともと後輩に勉強を教えるつもりだったのか、少し不服そうだ。
「じゃあ幸隆行こうか」
「あ、あぁ」
海生はあのバカ二人の影響で、これ以上幸隆の勉強を遅らせてはいけないと危機感を感じていた。