テストの前に
大会が終わった次の週の練習日、ミーティングの終わりに上地から部員にしばらく部活が休みだということが告げられた。理由は中間テストが始まるからだ。
「わかってると思うけど、赤点取った人は補習があるからその分さらに練習できなくなるからね?」
あの、人を殺してしまいそうなヤクザスマイルを見せる上地。部員達の顔が強張こわばる。
隣に座ってミーティングを聞いていた幸隆ががたがたと震えだす。テストがそんなに自信がないのだろうか。
「か、海生お前って勉強出来るか?」
「出来ない方ではないと思うけどどうして?」
「俺通天高校ギリギリで受かったんだけど、それから授業中殆んど寝ててだな」
「ギリギリだったのに殆んど寝てたとか凄いね」
逆サイドにいた紀之が聞いてもいないのに自信ありげに話に入ってくる。
「俺は中学の時の通信簿、三が二つもあったもんね。」
「あれ? 確か成績の評価って五段階評価じゃなかったっけ?」
どうやら紀之は成績の評価が三段階で一番高い評価が三だと勘違いしていたようだった。つまり三以上の評価を取ったことがなかったのだ。
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ミーティングが終わり、着替え終わるとテストをどう乗り切るかという話になった。
ちなみに三年生の三人は全員動じておらず余裕がありそうだった。さすが最上級生。
二年生の四人は匠と康太が勉強が出来るようだ。彰と康則は頭を抱えていた。
「海生頼む。勉強教えてくれ」
幸隆が懇願するように頼み込む。
「良いけど俺もすごく勉強出来るってわけじゃないし、高校入っての初めてのテストだから勝手がわからないかな。去年のテスト問題とかがあったりすればなぁ」
するとマネージャーが着替える更衣室から優香がひょこっと頭を出し、満足そうな笑みを浮かべてこちらを一瞥して話し出した。
「ふふ…… こんな事もあろうかと、私達は去年のテストを取ってあるのだよ」
その後からもう一人のマネージャーの美優もひょこっと頭を出した。
「勉強が苦手そうな幸隆君。私に頭を撫でさせてくれれば、明日テスト問題を持ってきてあげよう」
幸隆は嫌な顔をして躊躇いながらも、背に腹は代えられないとしぶしぶOKを出した。
「あっ髪短くて頭のさわり心地良い」
「くっ……」
唇を噛みしめて羞恥の表情を浮かべる幸隆。なでなでと頭を撫でて満足そうな顔を浮かべる美優。その姿を見て優香が海生の方を向きこちらにも何か要求しようとしてくる。
「あっ俺は自分でなんとか出来そうなんで優香先輩のは良いです」
「なんでー!?」
翌日から通天高校はの部活はテスト休みに入る。