勝利の余韻
海生が勝利した試合が終わると、海生の試合を観戦していた幸隆が走りよってきた。
「すごいじゃないか海生。デビュー戦でフォール勝ちなんて」
海生は照れながら幸隆に返答を返す。
「そんなこと無いよ。幸隆の方が凄いじゃんか」
「んーん海生は凄いと思うよ?」
美優も海生の試合を見ていたらしく、すぐ近くまで来ていた。
「普通はじめての試合で、はじめて一ヶ月であそこまで完璧に技を決められないよ。幸隆の方は実質二ヶ月多く練習してることもあるし、さすがだったけど」
照れ臭さが頂点に達した海生は、その場から急いで離脱しようとする。
「あ、あんまり調子にのせないでください。それで失敗するたちなんですからっ……トイレ行ってきます」
トイレへ向かった海生を見送りながら美優が呟いた。
「海生可愛いな」
それに対して幸隆は、
「俺男だけどそう思います」
と答えた。
幸隆は気づいていない。その言葉は必要以上に美優を喜ばせることを。
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「ふぅ」
幸隆と美優の誉め殺しから逃げた海生はトイレで一息着いていた。
「俺、勝ったんだ」
口に出してみて実感が沸く。そして思い出す。
試合に勝った瞬間を。
嬉しかった。今まで味わったどんな瞬間よりも。
自分の力で掴みとった。自分だけの力で掴みとった。
「くうっ!辞められないよこんな嬉しさ味わったらもう」
今胸を張って言える。レスリングが好きだと。バレーボール部で味わえなかった感動を、今海生は味わっている。
まだ個人戦は終わらない。次の試合に向けて、気持ちを新たにした海生だった。




