因縁
「康太先輩はね…… 一年生の時に学ぶさんにコテンパンにやられてるの」
試合の最中優香が話はじめた。
「だから今年の練習は学さんを意識しての練習が多かったみたい。ずっと学さんを倒すための練習をしてきたの」
そう呟く優香はいつになく真剣で、普段の少しふざけた感じはまるで感じない。
「勝ってほしいな」
一緒に練習してきた後輩としても同じ気持ちだ。康太の練習はいつだって、自分を追い込みそれでも負けたくないという気持ちを失わないだけの覚悟があるように感じた。
「言ってくれるじゃねぇか康太。いつまでも大口叩けると思うな? 」
そう言う学に康太は答える。
「あなたにだけは言われたくないですよ」
そう言った直後、康太は組まれていた腕を離し学の片足、右足に飛びつき上に持ち上げた。片足だけで立っている状態になりバランスが悪くなった学。そこに足払いをし、完全にグラウンドに持ち込んだ。
「まず1ポイント」
グラウンドに持ちこみ、バックについたことで1ポイント先取。そしてまだ攻撃は終わらない。ローリングを行おうとする康太。
しかし、それは反対に踏ん張ることで阻まれてしまう。
ただ、それを予想していたかのように康太は踏ん張った時に生じた学の右腕の隙間に腕をかけた。
脇から頭に腕をかけ、テコの原理で無理やり仰向けに持っていく。
そうすることで、上から覆いかぶさるようにしてフォールを取る体勢に持っていった。
「よし! いけそう! 」
優香が勝利を確信し言い放つ。だが試合はそこで終わらなかった。
「あっぶねぇ」
仰向けになると同時に勢い良くブリッジをし、そこからぬけ出す学。
そして立ち上がり向きなおる。以前ポイントでは康太が勝っている。
そこから攻防が続いたものの、防ぎきることができ、康太は1ラウンドを勝利した。




