仲間
一年生とは一緒に練習をしないつもりでいた。他の者より二ヶ月早く入部した分、その差を埋められるような者が現れるとは思えなかったから。
どうせ周りは自分に着いてこれなくなる。技術も気持ちも。
そう思いながら迎えた入学式から数週間たった。
予想に反して、もしかすると着いてこれる奴かもしれないと思った一年生がいた。
練習初日から、時間外まで練習をし続けようとした海生。
しばらく練習を見ていたが、練習に打ち込む姿勢が他の者と違う。
今はまだ実力がついていなくても、いずれ必ず追い付いてくる。そんな予感がした。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
学校が終わり、部活に行くため体育館の横を通りすぎようとした際、海生を見つけた。なにやら他の学生に絡まれているように見える。
「お前レスリング部に入ったんだって? まぁレギュラー入れなかったしなあんなに長くやってて」
「バレーボールはもう続けられないよなぁ。お前はさぁ」
少し様子を見ていると、どうやらバレーボール部の部員らしい。二人の学生が海生と話している。
「うんそうだね。だからレスリング部で頑張ることにしたよ」
そういう海生に、なおも続けようとするバレーボール部員に、幸隆が止めに入った。
「少なくてもお前らより実績とか作れると思うぜ海生は」
いきなり出てきた幸隆に、バレーボール部員と海生は驚く。
「幸隆……」
何も言えずにいる海生に、バレーボール部員が返答を返す。
「これでもうちのバレーボール部強いんだぜ? 実績で勝つなんて言っていいのかよ」
確かに通天高校のバレーボール部は強いと聞く。だが幸隆はそれでも引き下がらない。
「あんた一年生みたいだけどスタメン入ってんの?」
うぐっという声が小さく漏れる。どうやら入ってはいないようだ。
「まぁ入ってたとしても海生の方が実績残せると思うけど、試してみるか?」
強気の姿勢を崩さない幸隆に、バレーボール部員の一年生二人はたじろぐ。
「幸隆もういいよ」
バツが悪くなったらしいバレーボール部員二人は、海生の言葉と共にその場から退散していった。
「言っておくけど海生。俺は本気でそう思ってるからな」
「ありがとう頑張るよ」
照れ臭そうに笑いながら答える海生に、幸隆も笑いながら返す。
「良いねお二人さん」
「いやぁー良いもん見せて貰ったわーへっへっへ」
飲み水を入れるキーパーに氷を入れるため、体育館にある製氷機のところまで来ていた美優と優香の二人。影に隠れて一部始終を見ていたらしい。
「特に幸隆は偉いぞ」
頭を撫でようとする美優の手を幸隆はガードし、
「なんでもかんでも頭を撫でようとするのやめてください」
と言い、ぷいっと横を向いた。
むぅ……と不服そうな美優を横目に、
「ツンデレかい? ツンデレなのかい? それはそれで萌えるから良いよ!」
と優香がニヤニヤしながら幸隆を覗き混んでいた。
海生は笑いながら、練習をこれまで以上に頑張る決意を固めていた。