相撲ゲーム
浜辺の練習のルールは簡単。ちょうどいい大きさの円を砂浜で描き、一対一で戦いそこから出されるか、手を着くかすれば負け。
制限時間は無しで、負け残り戦。負ければ勝つまで戦わないといけなくなり、正直一年生は不利だ。
最後に残った一人が罰ゲームを受けることになる。罰ゲームの内容は敗者が明らかになった後で発表される。
ただ、何故か人一人分入れそうな穴が先輩方の手によって既に掘られていた。
「これは一年生が一番不利だな……罰ゲーム受けるの俺か紀之になりそう」
「は、入った時期は一緒なんだから負けないぜ」
去勢を張る紀之に絶対負けないと誓う。
あんな何をされるかわからない罰ゲーム受けてたまるかという気持ちだった。
最初の一組が発表されるなか、どうすれば勝てるか考えを巡らせる。
何も試合ではなく、ただ円から出すか手を着かせれば良いだけだ。
勝つ算段はいくらでも出せる。
そうすると一つ思いついたことがあった。
試してみてもいいかもしれない。
最初の一組目は幸隆と佳祐。小柄な幸隆と背の高い佳祐の大差が凄い。
「俺は罰ゲーム受けたくないんでな幸隆。悪く思うな?」
「俺だってそうです。一年生だからってあまり油断しないでくださいね?」
三年生相手でも一歩も引かない幸隆。それでも勝てる見込みは薄そうに見えるのだが……
審判を務める龍生のはじめの合図と共に幸隆が飛び出す。
最初に足を取ろうと飛びかかるが、佳祐は読んでいたように後ろ足を引き回避した。
と思いきや、足をとりにいっはずの幸隆は体勢を建て直し、佳祐の肩と首をつかみかかりに行っていた。見事なフェイントだ。
後ろに足を引いて不安定な体勢になっている状態の佳祐を、前に倒してしまおうというものだ。
これで佳祐が手を着いてしまえば幸隆の勝ちだ。
と掴みかかった幸隆。掴み返され投げ飛ばされてしまい、円の外に出てしまった。
「階級差と腕力の差。実力の差もだな」
圧倒的な力を誇示する三年生は、そんなに簡単にはやられはしなかった。
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相撲ゲームは進み、ある程度予想していた展開になってきていた。
紀之は順調に負け続け、海生も一度負けてしまった。
「くぅっやはり先輩の方が上手だったか……」
「ごめん上手だったかとかそゆ問題じゃなく、海生がバカなだけだと思うよ?」
答えたのは最初の対戦であたった匠だ。海生が使った手はなんと猫だまし。しかも猫だましを使った後は無策だったらしく、その後普通に負けた。
「いやぁ…あゆ事する人はさすがに今まで見てきた中ではいなかったなぁ」
匠は50㎏級の二年生で、細身で身長の低めの見た目小学生だ。だがしかし、体はきちんと鍛えられておりレスリングの技も多彩だ。
あまり良くない意味で感心されている海生、等の本人は良い案だと思ったんだけどなぁと悔しそうな顔をしている。
ちなみに幸隆はあの後、二年生の彰と当たり、片足を狙うタックルを使い手を着かせて勝っていた。ゲームとはいえ先輩に勝った事は驚きだ。
そして最後の戦いが近づいてきた。海生と紀之との対戦だ。