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あの日とあの場所へ   作者: かけっち
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死の自分

は!ここは…どこだ?俺は…麻里を守ろとして…

死んだ。それは分かる。でもなぜ…俺は…

俺は、自分の葬式にいるの?いや、これは誰の体?

急いでトイレへ駆け込んだ。鏡に写った自分を見た。もちろん敬ではない。斗真でもない。クラスメイトでもない。見覚えのない、自分と同じ年くらいの少年が写っていた。

だ、誰だおまえ…?てか、カッコいいな俺…

ばかやろー今はそんなことはどうでもいい。なにがどうなってる?

そうだ!斗真の知り合いなのかもしれない。斗真を探そう。

そう思い俺はトイレから出た。

しかし、これはどこの制服なんだ?しかもこいつ、携帯も財布もないし。名前はなんなんだよ…。

「あら、あなたは?」

後ろから声をかけられ振り向くと近所の田中さんがいた。

「あ、田中さん…あ…」

「あれ私、あなたと会いましたっけ?」

しまった。つい名前を言ってしまった。

でも、俺(今俺が乗り移っている人物)を知らないということは、この辺に住んでいる人じゃないのか。

「ああ、ごめんなさい。いつも敬から聞いていたんで」

「あら、そうなの。敬ちゃんの友達なの。見かけない制服ねぇ。どこから来たの?」

「ああ、あ、えと…」

俺もコイツ(今乗り移っている体)しらねーよ。

「えと、青森からきました。」

言っちゃったー。つい嘘を…

「随分と遠い所から来たのねぇ。敬ちゃんも…きっと…よろ、こんでいるわよ」

田中さんの目から涙がでてきた。

田中さんには小さい頃からお世話になった。第2のお母さんと言ってもいいぐらいに。田中さんが泣くのは見てるこっちも辛い。泣かないでと心で叫ぶことしかできない。

「あ、ご、ごめんなさい。私ったら…」

田中さんは涙をふき、俺に笑顔を見せた。

「いえ…ちょっと嬉しいです。」

「え?」

田中さんは頭を傾げぽかーんとした。

「いえ…それより、斗真を見ませんでした?」

「斗真ちゃん?あっちの部屋じゃないかしら…」

「ありがとうございます。」

そう言い俺は田中さんから離れた、これ以上見ていられないからだ。


田中さんに教えてもらった部屋から話し声か聞こえた。この声は母さんと姉ちゃん(かよこ)と弟のなおだ。

そっと部屋に近づき、耳を傾けた。

「どうして、どうして、どうして敬まで死んじゃうのよ。どうして、お父さんの所へ行っちゃうの?」

そう、俺には父がいない。4年前に交通事故で死んだ。今は母と大学三年の姉と中学1年の弟と協力して暮らしていたのだ。

「俺ならここにいる」と言いたかった、でも今の俺は俺じゃない。俺は扉を開けずその場から離れた。

ごめん。母さん。姉ちゃん。

俺は涙をこらえ走った。

もしさっき母さん、姉ちゃんの前にでたら、どんな反応したのだろう。

誰だかわからない体で敬と名乗って信じるわけがない。

もし仮に俺が姉ちゃんの立場だったらふざけている、としか思わない。

とにかく一回会場へ出よう。

「ちょっと待って」

出口で誰かに呼ばれ振り向くとそこには斗真がいた。表情は少し疲れてるようにみえる。目が少し赤い。

「これ落としたよ」

小さい本を渡してきた。よく見たら学校の生徒手帳だ。

「あ、ありがとう。」

「トイレに落ちてたよ。ごめん、持ち主を確認するために中身をみてしまった。」

そう言って斗真は軽く頭を下げた。この接し方だと斗真も俺のことを知らないようだ。

生徒手帳の最初のページをめくるとそこには顔写真と『今井晴翔』と書かれていた。

やっとこいつの名前が判明できた。

「君は敬の友達なのか?」

やっぱり斗真も俺を知らないのか。

「あ、うん。幼稚園からの知り合いで」

「そうか、俺は敬と小学からの友人の佐山斗真だ。君と同じ2年だ。」

「俺は…さっき見てるから大丈夫か。まぁ改めて今井晴翔だ。」

簡単な自己紹介をしたが、斗真には笑顔はない。

「あ、そうだ斗真ちょっと急すぎて色々と聞きたい事があるんだがいいか?」

「……」

斗真はなぜか無言で俺をずっと見ている。

「斗真…?」

すると斗真は「は!?」っと我に返ったかのような反応した。

「あ、あ~ごめん。なんか君が一瞬、敬に見えて…」

あちゃ~俺の馬鹿。一応今は初対面なんだぞ~。

「ご、ごめん。馴れ馴れしく。えと…佐山くん」

「いや、斗真でいいよ。でもここじゃあれだし、部屋に戻ろう。敬のクラスメイトも何人かいるから紹介するよ。」

「お!何人か来てるの?里菜や麻里…」

しまったぁ~。

また斗真の表情が固まった。

あーもう、俺の馬鹿!死ね!あ、もう死んでるか!

「あ、え、えーと敬からよく聞いてて…」

「お、おう。そうなのか。じ、じゃあ行こうか。」

そう言いいながら俺は斗真の後をついていった。

そういえばコイツの高校って…。俺はまた生徒手帳を開いた。

「……こいつ、山口県から来てるよ…。」

俺は立ち止まり絶望した。


「敬じゃないよな…?」

そう斗真は呟いたが絶望していた俺には聞こえてなかった。

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