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D-side 02

/D-Side.



 目覚めればそこには荒野。

 もう考えるのも馬鹿らしいので気にしない事にしたが、やはり意識が覚醒した時には、もう既に立っていた。これはもうそう言うものなのだと割り切って、俺はそれについては気にしない事にしている。

 そして、気が付けばやはり俺は『前』に向って歩き出していた。目的地なんて解らない。あるのかどうかすら定かではない。でも、迷い無く、躊躇い無く、俺の足は一歩一歩前方に向けて踏み出されていた。力強く、そして、揺ぎ無く。

「まだ歩くの?」

「またお前か」

 暫く歩いていると、いつもの様に少女の声。俺に付かず離れず後ろを付いてくる足音と声。最早『ここ』ではそれが当たり前になってしまっているので全く驚きを感じないが、本来ならばこの唐突な声に、俺は驚きの声を上げてもおかしくないのだろう。神出鬼没とはまさにこの事だとでも言わんばかりに脈絡無く登場するこの少女の正体を、勿論俺は知らない。実は知りたいとも思わない。理由は解らないが、どうやら俺は知る必要が無いと感じている様だ。

「まだ、歩くの?」

「ああ、まだ歩くぞ?」

「どうして?」

「さぁな?」

 決して俺の前に回り込む事無く、一定の距離を保って後ろを付いて歩く少女。それが俺の彼女に関する認識の全てだ。それ以上もそれ以下もない。俺にとっての彼女はそれで十分だった。

「この先に何があるの?」

「何もないさ。何処までも荒野が続くだけだ」

「そう」

「あんたが言ったんだろ?」

「そう?」

「ああ」

「そう」

 誰もいない、何もない荒野。俺と少女以外、誰もいない荒野。

 ここは何処で、俺は誰で、少女は一体誰なのか?

 俺は何も知らないし、解らないのだけれど、どうしてか不思議な事に、

「何処に行くの?」

「どうやらそれを探すのが、俺の目的らしいんだ」

 そんな風に、確信していた。勿論根拠は無い。でも、そんな気がするんだ。

「そう」

 振り向いた俺に、ほんのちょっぴり驚いて、少女は目を丸くした。

「そうか、あんたはそんな顔をしてたのか」

「………そう」

 その顔に、見覚えは……無い。いや、あるのかどうか解らない。

 でも、その顔には何故か安らぎを感じた。広がる荒野に咲く一輪の花。何て気障ったらしい言葉が思い浮かぶ辺り、どうやら俺は生来気障な奴らしかった。

「まだ歩くの?」

 その質問に答えようとして、声を出そうとした時に、

「え?」

 世界は暗転した。


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