D-side 07
/D-Side.
さて、相変わらず俺は廃墟で目覚めた。
「お、今度は起きてるのな?」
「はい?」
今回俺はやはり立ち尽くしていた様で、目の前にはひよこ、そして、ここは……多分屋上だろう。ひよこの背中の向こうには、本当に見渡す限りの荒野が広がっていた。
「この前は、俺の腕の中でぐっすりだったよな?」
「ぐっすり?」
ひよこは目を見開いて何を言っているのか分からないといった顔をした。そうか、コイツあの時はぐっすりだったから、そもそも覚えている訳もないのだ。
「ただ、折角真面目な顔で決めてる所悪いんだが、凄い寝癖だぞ?」
「はうっ!?」
もの凄く前衛的な寝癖だった。写メって置きたい程に。
もはやこいつの目覚めてすぐのボケボケっぷりは基本ルーティンになりそうだった。
ん? って言うかだ。
「あのさ」
「はい?」
一つの疑問。
「俺の感覚的には、『気が付いたらここに立っていた』的な感じなんだが、俺は変わらずずっとここにいたのか?」
自分で言ってて意味が分からない発言だが、その意図はひよこに伝わるだろうか?
「???」
まぁ、そうなるよな。伝わる訳もない。
「ああ、いやだからな、何て言うか……俺的には今目を覚ました感じなんだが、あんたの目の前の俺はその前もずっと此処にいたのか? って疑問だ」
「……分からない」
「分からない?」
質問の意図がか? それとも、俺の質問への回答か?
「貴方が目を覚ましたのと同時に、恐らく私も目を覚ますから……」
「そうなのか?」
俺の言葉に首を縦に振ることで答えるひよこ。
「私も気が付いたら目の前に貴方がいた」
「……そうなのか」
つまり、コイツも俺と同時位に目覚め、何故か此処に突っ立っていたという事らしい。
「お前は何者なんだ?」
「それは答えられない」
「ですよね」
それを思い出すこと。それが俺に課せられた、この世界での使命らしい。まぁ、『この世界の謎を解いてみろ』とか『この広大な荒野に隠された秘宝を探し出せ』とか無茶苦茶な使命じゃなくて助かったが……
「どうするの?」
恐らく本日の予定を聞かれているのだと思う。
「いや、俺に聞かれてもなぁ」
「貴方以外に誰に聞けばいいの?」
「いや、確かにその通りなんだけどな」
いや、言い分は最もなのだが、俺にもそんなの分からない。そもそも、俺には、この『世界』の仕組みも分からないのだ。全く誰かに教えてもらいたい位だ。俺はどうして此処にいて、どうすればここから出られるのか。何もかも分からないのだ。分からないのである。
今まで分からないからと保留にして来たが、そろそろ明らかにしないとだろう。
此処は何処で、俺は何なのか?
それをだ。
暫定的だが、幾つかわかっている事がある。
「確認だ。俺の目的は『記憶の回復』そうだな?」
「はい」
目的、『記憶の回復』。
「此処は何処だ?」
「答えられません」
「って事は知ってるんだな? お前は」
「答えられません」
この世界、『謎』。だが、コイツはその『謎』を知っている。これは多分間違いない。
「お前は何だ?」
「答えられません」
「そうかい」
こいつ、『謎の人物』。暫定『ひよこ』。そして、多分俺の前に横たわる全ての謎の鍵だ。これには根拠も何もない。完全にひらめきの類だ。でも、そうなんじゃないかって思う。
「こんなもんか……」
「???」
結論。
「俺、此処での目的以外なんも分からないんですけど?」
「そうですね」
肯定された。
「ああ、もう一つ」
「はい?」
「あんたも、この世界には俺が目覚めた時しかいないんだよな?」
「はい、恐らく」
つまり、俺とコイツがいない時、この『世界』がどうなっているのかの確認は不可能だと言う事だ。……物凄くいい加減な世界設定である。小難しい理論は分からないが、この『世界』の観測者が俺とひよこだけだと仮定するとすれば、この『世界』は俺達二人の意識がないとき、本当に存在しているかすら怪しくなってくるではないか。いやまぁ、観測者がいないと世界が存在しない的な事を昔本で読んだだけなので、この理論自体が間違っている可能性がかなり高いのだが……
「全く……これじゃこの『世界』がどんなもんなのか全く分からないじゃないか……」
『馬鹿の考え休むに似たり』と言う嫌な格言を思い出した。『馬鹿が考えてもろくな事を思いつかないので、腕組して休んでいるのと同じだ』とかそう言う意味だったと思う。
「俺が考えるだけ無駄なのかね?」
でも、そうなると誰が考えるのだろう? 俺とひよこしかないないこの『世界』で俺が考えるのを止めてしまえば、そこで全てが停止してしまう気がする。いや、まぁひよこは恐らく全てを知っている筈だから、俺が諦めたら終わりという事はないだろうが……
「あれ?」
唐突に、
「ここ、学校だ」
俺はそんな事を『思い出した』。
「っ!?」
ひよこが目を見開いた。その顔は良く見えなかった。
「あ、もうか……」
何故ならその時視界が暗転したからだ。




