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第8話 高校入学、不登校、中退(7)

 相談室の窓の外から大きなざわめきが聞こえてきた。

 耳を澄まして分かった。

 今日は秋の運動イベントの日で、全校生徒が体育館や校庭でたっぷりとそれぞれの競技に励んでいた。

 その笑い声、応援する声。

 移動するときの複数人の足音。

 盛り上げるBGM。

 

 この時、自分にはもうこの学校に居場所がないという事を理解した。


 寂しかった。

 どうして自分はここに、この相談室にいるのだろうと思った。

 どこで間違えたのか。

 農業高校に進学すればよかったのか。

 ソフトテニス部は負担で苦痛ならさっさと辞めればよかったのか。

 ただの自意識過剰と被害妄想なのは分かっていた。

 全部自分が悪かった。

 もっと上手くやれたらよかったのに。

 しかし涙も出ず、ただ相談室の椅子に座って、生徒たちのざわめきを聞いていた。

 他人が怖くて怖くて仕方なかった。

 自分自身も含めて。


 ある時、かつて私を殴った部長が廊下を歩いてくるのが見えた。

 私はそそくさと階段の裏側に逃げた。

 しかし部長はどんどんと私の方に向かってきた。

 もう観念して姿を現して「お久しぶりです」と言った。

 部長は私の名前を呼んで抱きついてきた。

 驚いた。

 会話をして別れた。

 後で別の先輩に聞いたが、私が不登校になったのはあの時殴ったせいだからだろうか、と少し気にしていたらしい。

 私は全然違うと伝えたかったが、その機会はもうなかった。


 クラスメイトや部活のメンバーとも廊下ですれ違う事もあったが、お互いに無視した。

 私はどう声をかければいいのか分からなかったし、向こうもそうかもしれない。

 とっくに忘れてしまっていたのかもしれない。

 その方がいいと思った。


 そうして出席日数が足りず、留年する事が決まり、親も同伴する場が設けられる事になった。

 今後をどうするか決めろと。

 私はもう逃げ場はない、と思い、もう終わらせようと思った。

 学校に行くべき時間は16時だったが、私は周りが田んぼしかない道の、その脇に立って携帯電話を見つめていた。

 約束の16時を過ぎた。

 携帯の電源を切った。

 カバンの中には果物ナイフがあった。

 どこがいいか。

 私は公園で滝本竜彦「NHKにようこそ」を読んだ。

 美しい物語だった。

 それから海に行こうと、と思った。

 自転車を漕いで海に向かった。

 国道6号線を走った。

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