第7話 高校入学、不登校、中退あるいは不滅の黄金(6)
担任の先生は私にとてもよくしてくれた。
先生は私を学校に来させる為に、立ち直るために尽力してくれた。
短い学校生活の中で、先生の期待に応えられなかった、それだけは本当に心苦しかった。
先生も大変だったのだろう。
ある部活の顧問もやっていたが、ある時、女子生徒に反発されている姿を見た。
非常に感情的な言葉は何を言っているのかは聞こえなかったが、糾弾の響きを帯びていた。
先生が家を訪れてくれると、私たちは会話をした。
彼女はたまに疲れたような表情をし、溜息をついた。
それから笑った。
今のはただの冗談だというように。
しかしきっと本当に疲れていたのだろう。
そしてその疲労の一部は確かに私だったのだ。
私はそれに気づけなかった。
ただ自分の事だけを考えていた。
学校に行く振りをして自転車を漕いであちらこちらを巡った。
高校は隣町にあって、その道中の左右には森と田んぼしかない。
目に付いた道に入り、ペダルを踏んでいると、風が私の顔を撫でていく。
お金が無かったからどこかで遊ぶ事もできず、他に行くところもできることもなく、ただ自転車を走らせ、疲れたら座り込んだ。
隣町まで行って川沿いを走ったり、神社の境内をうろついたり、更に山の方に向かったりした。
夕暮れになるまでそうした。
家に帰れば私が学校に行ってない事を知った親が待ってるし、そもそも携帯電話には先生からの着信がある。
しかし、どうしても私は学校に行きたくなかった。
ある日、それでもなお行くべきだと思って学校に向かい、途中でコンビニに寄ってスポーツドリンクを買ったら、いきなり凄まじい眩暈のようなものに襲われた。
立っている事すら難しくなり、駐車場で座り込んだ。
スポーツドリンクを少しずつ飲んでいると回復してきた。
この突発的な体調不良はなんだったのか。
たまには相談室じゃなくて教室に行ってみようと突然言われて、登校するたくさんの生徒たちのいるほうへと歩くように促された。
私は嫌だった。
しかし拒否できず、近寄っていくと、全ての生徒が私を見て、私を馬鹿にしているように見えた。
足が震えた。
人間は本当に足が震えるのか、と思った。
本当に、どうしても行きたくない場所に向かおうとすると、身体が震えるのだ。
私はもう教室へも行けなくなった。
毎日死ぬ事ばかり考えていた。
しかし死ぬ事はできなかった。
どうしても学校に行かなければならない日、制服を着て、果物ナイフを喉に向けた。
ちくりと先端が喉の皮膚に触れている。
押し込めばそれで終わるはずだった。
できなかった。
血の一滴も流せないまま「どうして…」と呟いていた。




