表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

第7話 高校入学、不登校、中退あるいは不滅の黄金(6)

 担任の先生は私にとてもよくしてくれた。

 先生は私を学校に来させる為に、立ち直るために尽力してくれた。

 短い学校生活の中で、先生の期待に応えられなかった、それだけは本当に心苦しかった。

 先生も大変だったのだろう。

 ある部活の顧問もやっていたが、ある時、女子生徒に反発されている姿を見た。

 非常に感情的な言葉は何を言っているのかは聞こえなかったが、糾弾の響きを帯びていた。

 先生が家を訪れてくれると、私たちは会話をした。

 彼女はたまに疲れたような表情をし、溜息をついた。

 それから笑った。

 今のはただの冗談だというように。

 しかしきっと本当に疲れていたのだろう。

 そしてその疲労の一部は確かに私だったのだ。

 私はそれに気づけなかった。

 ただ自分の事だけを考えていた。


 学校に行く振りをして自転車を漕いであちらこちらを巡った。

 高校は隣町にあって、その道中の左右には森と田んぼしかない。

 目に付いた道に入り、ペダルを踏んでいると、風が私の顔を撫でていく。

 お金が無かったからどこかで遊ぶ事もできず、他に行くところもできることもなく、ただ自転車を走らせ、疲れたら座り込んだ。

 隣町まで行って川沿いを走ったり、神社の境内をうろついたり、更に山の方に向かったりした。

 夕暮れになるまでそうした。

 家に帰れば私が学校に行ってない事を知った親が待ってるし、そもそも携帯電話には先生からの着信がある。

 しかし、どうしても私は学校に行きたくなかった。


 ある日、それでもなお行くべきだと思って学校に向かい、途中でコンビニに寄ってスポーツドリンクを買ったら、いきなり凄まじい眩暈のようなものに襲われた。

 立っている事すら難しくなり、駐車場で座り込んだ。

 スポーツドリンクを少しずつ飲んでいると回復してきた。

 この突発的な体調不良はなんだったのか。


 たまには相談室じゃなくて教室に行ってみようと突然言われて、登校するたくさんの生徒たちのいるほうへと歩くように促された。

 私は嫌だった。

 しかし拒否できず、近寄っていくと、全ての生徒が私を見て、私を馬鹿にしているように見えた。

 足が震えた。

 人間は本当に足が震えるのか、と思った。

 本当に、どうしても行きたくない場所に向かおうとすると、身体が震えるのだ。

 私はもう教室へも行けなくなった。


 毎日死ぬ事ばかり考えていた。


 しかし死ぬ事はできなかった。

 どうしても学校に行かなければならない日、制服を着て、果物ナイフを喉に向けた。

 ちくりと先端が喉の皮膚に触れている。

 押し込めばそれで終わるはずだった。

 できなかった。

 血の一滴も流せないまま「どうして…」と呟いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ