第5話 高校入学、不登校、中退あるいは不滅の黄金(4)
夏が過ぎて涼しくなり、私は滅多に学校に行かなくなった。
先生が家にやってきて私を見て言った。
「やつれたね」
「はぁ…そうですか」
鏡で見る自分の顔は醜い。
見たくもない。
私は産まれた時、全然可愛くなくて、母方の祖父が抱くのを嫌がったという、
そんなエピソードを聞かされた覚えがある。
台所の流し台の下には包丁が二本、果物ナイフが一本である。
私は果物ナイフをとると自分の部屋に戻った。
椅子に座ってその刃を見つめた。
それからカバンに仕舞った。
出席日数という現実的な問題が持ち上がり、このままだと留年する、という事になり、私はそれでも学校に行くのが怖くて、それで教室ではなく相談室に登校する事になった。
相談室に登校する生徒がいる、というのは中学生の頃から存在は知っていたが、まさか自分がそうなるとは。
相談室では自学自習をし、たまに先生と学生主任がやってきて面談をした。
自分の悩みを紙に書けと言われてそうして、その一つ一つについて肯定的な助言をもらった。
どのような悩みを書いたのかは覚えていない。
何と言われたのかも。一人で相談室で机に向かっていると、たまに窓から生徒たちのざわめきが聞こえた。
窓から入り込む太陽の光が穏やかになり、秋が近づいてきた。
私は自分の学生生活を振り返った。
まだ学校に通えてた頃、ソフトテニス部で遠征があった。他校との合同練習だったと思う。私は部活動でももはやコミュニケーションがとれなくなっていたから、自分が何故ここにいるのか分からず、やはり怯えていた。いきなり顧問に呼ばれて二人で話をする事になった。会話の内容はよく覚えていないが、私は俯いてろくに返事もできずにいた事、そしてこういわれた事だけは覚えている。
「お前これまでの人生で何も成し遂げたことがないだろ」




