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第4話 高校入学、不登校、中退あるいは不滅の黄金(3)

 学校にろくに行かないまま夏休みになった。

 夏祭りが駅前で開催される夜、私は何故か行ってみる気になった。

 小学校、中学校を通して友人たちと一緒に遊びにいっていたからだ。

 あの頃は親から小遣いをもらい、自転車を漕いで駅前まで行き、屋台を巡った。

 途中、同じように遊びに来ていたクラスメイト達と出会い、笑い合い、夜が更けていった。

 屋台のご飯を食べ、くじを引いた。

 携帯電話を落としたというクラスメイトの為にみんなで探し回った。

 浴衣姿の女子を見た。

 公園から出て暗くて細い道を覗くといかにもな青年たちがたむろしていた。

 夏の暑い夜の思い出。

 月と星と黒い夜空。

 その黒色を下から照らす祭りの赤い光。

 しかしその夜、一人で行った私は知り合いに誰とも会う事もなかったし、何かを買う事も、食べる事もしなかった。

 ただ人の群れの中に混ざって一人で歩いていた。

 これが友達が全くいないという事か、と思った。

 私は生まれてはじめて孤独に触れた。

 家に帰った。

 行くべきではなかった。

 私は何を期待していたのだろうか。


 母親がバイトをしないかと私に言った。

 私がかつて通っていた小学校のプールの夏休みの監視員だという。

 二人を採用し、14万の給与を二人で山分けだという。

 私はお金が欲しかったので受けてみる事にした。

 小学生の頃に見かけた先生が面接をしてくれて、採用となった。

 こんな形で改めて小学校を再訪するのは奇妙な気分だった。

 夏の暑い朝と昼、小学校に向かい、更衣室やプールの掃除をし、集まってきた児童たちの監視をする。

 一番大事なのは誰かが溺れてないか、プールの底に沈んでないかを定期的にチェックする事だった。

 私はプールサイドをふらふら歩きながら児童たちが笑い合うのを眺めていた。

 1時間ほど経ったらプールから出てもらい、休憩をし、それからまた遊んでもらった。

 休憩の間にしっかりとプールを確認した。

 幸いにも私が働いている間には大きなトラブルはなかった。

 小さなトラブルのようなものはあった。

 児童が嘔吐するのである。

 何故か女子ばかりがプールサイドに胃の中身を吐き出して泣くのだった。

 私と同僚は一緒に片づけた。

 一度は下の方を漏らしている女子児童がいて、あれには困り果てた。

 幸いにも同僚がプールに連れてきていた同僚の彼女が対応してくれた。

 彼女を連れてくるっておいおい、と思ったが、何がどう役に立つかは誰にも分からない。

 後に掃除をしている時にボイラー室の摺りガラスをふと見たらその向こうで口付けを交わしている二人がぼんやりと見えた。

 おいおい、と思った。

 私も一緒にプールに飛び込んで児童と遊ぶ時があった。

 プールサイドから児童をプールに放り投げると喜ばれた。

 バイトの担当である小学校の先生に苦言を呈されたが、児童たちは喜んでくれた。

 今思うと大変危ない。

 夏休み終了間際にバイトも終わり、給料を受け取った。


 これが人生で初めての労働であり、その対価となった。


 通販で前から気になっていたエレキギターを買った。

 本体やアンプ込みで数万円の安物である。

 ぺらぺらの教本とネットのサイトを見ながら練習した。

 ディープパープルのスモークオンザウォーターを演奏しようとした。

 全然うまくうかず、嫌になってすぐに放り出した。

 チューニングすら上手くできなかった。

 楽器演奏は自分には無理だと理解し、もっぱら聴く方の趣味にのめりこんだ。

 メロディックスピードメタル、メロディックデスメタル、メタルコアが私のお気に入りになり、たまにプログレッシブメタルを聴いた。

 一番気に入ったのはリンキンパークのメテオラで、その中のNUMBを何度も何度も聴いた。

 私にとってこれほど胸を締め付ける切ない曲は他にない。

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祭りに行っても一人、よくわかる。
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