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エピローグ

 どこまでも広がる青空の下、ラグナス皇国では年に一度の花祭りが催されていた。花が特産でもあるこの国では、一年で一番街が賑わうのだけれど、今年の熱気は、近年稀に見ないほどの盛り上がりを見せている。


 なぜなら今日は、竜帝グランディナスの加護を受け、大聖女となった私アリシア・ブラッドリーの戴冠の儀が行われるから。


 皇都にある皇城に招かれた私は、玉座が鎮座する大広間で、皇帝の前に跪いている。背後には、ユリス、リヒト、ルカ、ジルベールの守護騎士4人が並び、周囲には貴族や重臣、神殿高官たちが私たちを取り囲むように列席している。


 初めて間近で対面する皇帝は、白髪交じりの髪、鼻の下にひげを携えていて、どこか品のある御方だった。


「皆の者、この国には長きにわたり『聖女』の加護によって平穏がもたらされたと伝えられてきた。だが、真実は竜帝グランディナスと聖女は真の友であり、


 皇帝のありがたいお言葉を聞きながら、私はこの数ヶ月で自分の身に起こった出来事を思い返していた。


 突然聖女だと告げられ、クズ親子から離れることができ、聖女の住まいである「ルナハイドの丘」で守護騎士を務める彼らと出会った。


 最初から良い関係を築けた……とは言えないけれど、さまざまな困難を乗り越えて、私たちは少しずつ絆を深めてきた。


 いまではかけがえのない、私の4人の守護騎士たち。竜帝グランディナスの加護を受けた今、私にはこれからもまだきっと、数えきれない困難が待ち受けていることだろう。


 もう無理だ。


 そう思って諦めたくなる瞬間に、自分が課せられた運命を恨みたくなることもあるかもしれない。


 けれど、きっと彼らとなら大丈夫。そんな気持ちが湧いてくるから不思議だ。


「アリシア・ブラッドリーを、大聖女の位に叙する」


 厳かな雰囲気の中、皇帝のそんな言葉が大広間に響き渡り、私は跪いたまま頭を下げる。すると、ほどなくして、私の頭にゆっくりと被せられた冠。国花であるグロリオサの装飾が施されたその銀冠は、歴代聖女に贈られた皇国の秘宝なんだそう。


 今、私は平凡な日々を送っていた以前の私からは想像もできない場所に立っている。


 これからどんな景色が見られるのだろうか、と不安と高揚感が混じる中、私は目を開けてそっと立ち上がった。


 その瞬間、割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こり「大聖女様、万歳!」と高らかな叫び声が大広間に響き渡った。遠くのほうでは、シルヴェストリ大聖堂の鐘が鳴り、この国に聖女が誕生したことを告げている。


「我が主君に未来永劫、我々は忠誠を誓います」


 そう言って私の周りに跪く4人の守護騎士たちに、いま一度、自分の使命を噛みしめる。それから「ありがとう」と呼びかければ、見目麗しい4人の騎士たちは、表情を崩し、私にとびきりの笑顔を向る。こうして私は、ラグナス皇国の大聖女の道を歩み始めることとなったのだ。


「ねえ、リヒト。ちなみにこのパレードっていつまで続くの……?」

「アリシア様、パレードの最中ですよ、サボらないでください」

「だって、ずっと笑顔を浮かべて手を振るのって疲れるもの。帰って、ルカが作るミートパイが食べたい……」

「お望み通り作りますから、今は務めを果たしてください、アリシア様」

「ルカまで、そんなこと言う……。ジルベール、帰ったら収穫した野菜でサラダを作りましょうね」

「今日は新作サラダを試してみるよしよう」

「お前たち!」


 ユリスのキレのあるツッコミに、私はクスクスと笑みを零した。


  大聖女アリシア・ブラッドリーの物語は、まだ始まったばかり。


 竜帝グランディナスが目覚めたことで、今後この国にはさまざまな困難が訪れると言われている。けれど、これから先、私に訪れるいかなる壁も、私は薙ぎ払って歩いていく。かけがえのない仲間となった、この四人の守護騎士たちと共に――。



ラグナス皇国物語 〜大聖女と4人の守護騎士〜【完】

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