クロフォード家 2
「ユリスが戻らないって、どういうこと……?!」
広間に集まった私はリヒトから渡された手紙を読み、思わず声を荒げてしまった。ルカやジルベールも沈鬱な表情で、部屋の中には重々しい空気が広がっている。
「そこに書かれていることが全てでしょう。ユリスが守護騎士の任を降りると言い、クロフォード家での決議により、守護騎士はユリスの兄であるセイランに変更。今後は、彼がクロフォード家の代表としてアリシア様の守護騎士に加わるということです」
「でも、ユリスはそんなこと一度も言ってなかったじゃない!」
「……おそらく、急に決まったことなのでしょう」
リヒトの言葉に「だからって……」と、私はまだ事態を呑み込めずにいた。手紙には「もう屋敷には戻らない」と記されている。つまり、ユリスとはもう会えないということ……?
ここ数日も、特に変わった様子も見受けられなかったので、ただただ驚くばかりである。ユリスはなぜ、守護騎士の任を降りると言ったのだろうか。何や嫌なことがあっただろうか。
「……ねえ、この手紙。ユリスの名前で署名がされているけれど、ユリスの筆跡ではないわ。つまり、これは誰かが代筆したってことよね」
「確かに、そこは僕も引っ掛かりましたけど……。何か事情があって本人が書かなかったのかもしれません」
ルカはそう言って宥めてくれたけど、私はこの手紙に違和感ばかりを感じてしまう。
『私は、貴女の守護騎士を務められることを、とても誇りに思っています』
にこやかな笑みを浮かべて、自分の仕事に誇りを持ってたユリス。そんな彼が、任期途中に守護騎士の役目を降りると言うのだろうか。律儀な性格の彼が、挨拶ひとつもなしに、私の前からいなくなってしまうということも考えにくい。
リヒトによると、ユリスが毎月実家に帰ってきたのは月末だったのに、今回はいつもよりも三日以上帰省するのが早かったことも不可解だった。
「……ジルベール、すぐに馬車の手配をしてちょうだい」
「馬車って、まさか」
強張った顔の三人に向かって、私は「お願い」と彼らを促した。ここで、うじうじと悩んでばかりは性に合わない。だったら、やるべきことは一つ。
「クロフォード家に直接行って確かめに行くわよ」




