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プロローグ
皇都にあるシルヴェストリ大聖堂。その建物の頂上には、皇都中に響き渡る大きな鐘がついている。数百年に一度、国を災いから守る大聖女が誕生したときに鳴ると呼ばれる、大鐘だ。
そんなものは、ただの御伽話に出てくる夢物語だと、誰もがそう思っていた。けれど今、このラグナス皇国に、大聖堂の神聖な鐘の音が響き渡っている。
「我が主君に未来永劫、我々は忠誠を誓います」
聖女の称号を与えられる戴冠の儀で、そう言って私の周りに跪く四人の守護騎士たちに、いま一度、自分の使命を噛みしめる。
出会った頃の私に、彼らとこんなにも絆が深まる未来を想像できただろうか。
耳飾りを揺らしながら彼らに近寄り「ありがとう」と微笑めば、見目麗しい騎士たちは引き締まった表情を崩し、私にとびきりの笑顔を向けてきた。
「大聖女アリシア・ブラッドリー様の誕生だ!」
そうして湧き上がる市民たちの大きな歓声と、祝福の音楽。
これは、大聖女アリシア・ブラッドリーの始まりの物語。私がこのラグナス皇国で、聖女だと公表される前の物語である。




