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晴霞の王  作者: 瀬戸榛名
第3章|王は、ここに在る

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第45話 ひとりで立つ王

「エリ!エリ!無事か?」


 城に戻ったエレニアに、セフィリアが駆け寄る。


「どうしたの、慌てて?」


「いや、ロゼルトの気配がした、と思ったんだが……エリのところだと思ったが、なんともなかったか? 結界はすぐに張り直したが、お前が心配で」


「……ええ、なんともないわ」

 エレニアはそう応える。


「それならいいんだ。何かあったらすぐに言ってくれ」


 セフィリアはエレニアの全身を確認すると、安堵した様子でひとつ息をつく。エレニアが自分に嘘をつくなど、考えてもいなかった。


「ねえセフィ、また寝ずに働いてるんじゃない?」


 エレニアはそんなセフィリアに声をかける。


「少しくらい寝なくても、私なら大丈夫だよ」


「そういう問題じゃないわ。あなたのことが心配だ、って言ってるの」


 しかしセフィリアは意に介さない。


「……ねえ、セフィ」


「どうした?」


「この戦い、いつまで続くのかしら」


 エレニアがこの疑問を口にしたのは、これが初めてだった。国民の誰もが思っていること。セフィリアの顔が曇る。


「どうすれば、戦いは終わるのかしら。ロゼルトを倒したら? それとも、私たちが負けを認めたら?」


「……どう、だろうね」


「ねえ、あなたは何を考えているの? みんな、あなたの考えていることが分からないのよ。だから怖い、不安なの。

私にくらい、相談してくれてもいいでしょう」


「ごめん、エリ——でも心配ないよ、必ず私が何とかする。必ず」


 セフィリアにはそう答えるのが限界だった。もう、日々の戦いから、人々の生活を守るので精一杯だった。


 エリに負担をかけたくはない。いや、そうではない。

 一滴でも、弱音など漏らしたら全てが崩れてしまいそうだった。彼女はそれを自分に許すことはできなかった。


「……そう。分かったわ」


 エレニアはそれ以上は聴かなかった。もう、無駄だと、思った。私が何を言っても、この人には届かない。この人はどこまで行っても、ひとりなんだ。孤高の、王だ。



 彼女は、強すぎたのだ。あまりにも、強い。



 エレニアの心の中で最後の迷いが、消える。自分がこの国を導く。そのためにやるべきことを、考える。まずは国民の支持を集めなければ。


(もし、あの人がもう少しだけでも弱さを見せてくれていたら——それでも、私は同じ決断をしただろうか)


 セフィリアはエレニアのその決意を、知る由もなかった。


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